F1 第8戦 オーストリア

Formula 1 BWT Grosser Preis Der Steiermark 2021
Red Bull Ring 4.318km×71Laps=306.452km
winner:Max Verstappen(Red Bull Racing Honda/Red Bull RB16B-Honda)

 F1初夏の3連戦、ここからオーストリアでの2連戦です。昨年までのパターンだと1戦目が国名称のGP、2戦目に別の名前のGP、というパターンでしたが、今年は日程を当初からいじった結果来週が元々のオーストリアGPの開催日なのでそちらはそのままで、先に開催するこの第8戦がシュタイアーマルクGPという名前になりました。レース前に斉唱されるのもオーストリア国歌ではなくシュタイアーマルク州歌です。

 予選、1周65秒しかないコースなので混雑が多発するのは必然ですが、幸いにして赤旗による混乱は久々に起こらず進行。Q3ではマックス フェルスタッペンが唯一の1分3秒台を2回並べてPP獲得、圧巻の走りでした。
 ルイス ハミルトンはQ2までの走りからフェルスタッペンに届きそうにない上に、タイヤの熱入れを自分のペースで行わないとフロントが入らない様子。最後のアタックでは渋滞を目の前にして紳士協定お構いなしにターン9で前の車を抜きまくってアタックに入ったものの、セクター1から取っ散らかって最後にはターン9で飛び出して終了。予選3位となります。
 2位はバルテリ ボッタスが最後のアタックで逆転しましたが、彼はFP2でピット内でスピンするという大失敗をしてしまい、危険行為で事前に3グリッド降格が決まっていました。こっちはこっちで色々と焦っているのかな^^; ランド ノリス、セルヒオ ペレスが繰り上がりで3位、4位からのスタートとなります。
ピット上を横を向いて滑走したボッタス

 角田 祐毅はピエール ガスリーには及ばないもののきちんとQ3に進み予選8位でしたが、そのボッタスの1回目のアタックの際にターン4で譲らなかったとしてこちらも3グリッド降格、11位からのスタートとなってしまいます。
 予選後の本人の話だと「ボッタスが来ていると気付いた時にはもうブレーキング ゾーンだった」ということなので、どこで譲るべきか事前に教えてあげるべきエンジニアからの情報がじゅうぶんではなかったかもしれません。もし無線で暴言吐きすぎて緊密な仲になれていないことが遠因だとしたらちょっとよろしくないですが、さすがに考えすぎですよね。。。

 降水確率40%、スタート前からニキータ マゼピンのペダルが熱い、という気になる情報もありつつスタート。上位5台は順位通りでしたが、6位のガスリーあたりが争いとなるとターン1の先でシャルル ルクレールのウイング右側がガスリーの左後輪に接触。これでガスリーはタイヤを傷めて失速。
 大集団の前方に遅い車がいるもんだから無事で済むはずもなく、ターン3でガスリーはアントニオ ジョビナッツィーと接触してしまい、さらにこれを避けようとしたニコラス ラティフィーとも接触して踏んだり蹴ったり。ガスリーはサスペンションまで壊れてガレージ送り、リタイアとなりました。ルクレールもウイング交換で緊急ピット、ついでにタイヤはハードへ。
 ジョビナッツィーと言えば、okayplayerさんが先週こんなツイートをしていて笑いました。


 フェルスタッペンはハミルトンとの差を少しずつ着実に広げ、そのハミルトンに対してノリスはついていけないので早くもレースは上位2台とそれ以外に分断。ペレスはノリスを抜くのに非常に苦労しますが、ようやく10周目に3位に浮上します。既にハミルトンとは10秒差。特にトップ2チームと無理して争う気が無いノリスは翌周にボッタスにも抜かれました。

 15周目、ミディアムを履いたフェルスタッペンとハミルトンは3秒差で膠着していましたがここからまた差が広がり始めます。ソフトのペレスはこの2台から離されて4位までがみんな単独走行状態。撮れ高がないので映像はフェルナンド アロンソから後ろ、7位争いの集団を映します。
 8位にはジョージ ラッセル、予選で11位と大健闘してタイヤを選べる最上位で喜んでいたら角田の降格で10位スタートになってさらにラッキー、入賞圏を争っています。ただ、無線で「信頼性のためプランBで行くぞ、ペースを上げろよ」という指示。果たして何のことを言っているのやら。

 20周あたりになるとフェルスタッペンは無線で「運転が難しくなってきた~」と訴えますが、その割に数周後にファステストを更新。ハミルトンも自己ベストを更新していますが、25周目に「振動が少し出て来た」と訴え、さらにターン4で左後輪を砂に乗せてしまい危うく自爆しかけます。これでフェルスタッペンと5秒差になりました。ハミルトン劣勢。

 25周目、大集団からラッセルが先陣を切ってピットに入りますがニューマティック バルブへのエアーの補充で時間を食ってしまいます。しかしこれでも結局問題は解決しなかったようで、翌周に再度ピットに入ったかと思ったら結局はリタイアとなりました。入賞が見えていただけに無念です。
 ニューマティックバルブはエンジンのバルブの部分を金属ばねではなく圧縮空気を使って動作させる仕組みのことで、通常は補充しなくても最後まで走れるものですが何かしら不具合があってレースの最後まで走れる量に満たないと補充も可能です。詳しくはこちらが分かりやすいでしょうか。


車体右側面にホースを差し込んでいるのが
ニューマティックバルブの空気補充作業

 
 翌26周目、上位陣で最初に3位のペレスもピットに入りますが、4.8秒と作業に手間取ってしまいボッタスに逆転されかねないピンチ。27周目、ボッタスが反応してピットに入ると2.6秒の作業でやはりペレスをオーバーカット、逆転しました。雪崩をうって28周目にハミルトン、29周目にフェルスタッペンも入ってサイクルが一巡。フェルスタッペンが当然ながら引き続き1位です。

 後半戦に入ってフェルスタッペンとハミルトンは4.5秒ほどの差で推移。フェルスタッペンはブレーキ バイ ワイヤーの不調を疑っている無線が上がりましたがとりあえず何も起きていない模様です。ボッタスとペレスの3位争いはまだまだ終盤になって動きそうな雰囲気。一方大集団になっていた人たちはピット サイクルを終えても並び順にあまり変化なし。

 42周目、大集団の中でピットを引っ張る戦略に出ていたカルロス サインツとダニエル リキャードがピットへ。サインツは7位でコースに戻り、ピット前には自分の前方にいたアロンソと角田をオーバーカットしました。なおかつタイヤが新しいのでランス ストロールを追い44周目にこれを捉えてあっさり6位を確保。先週はレースで劇遅だったフェラーリ、今日は好調。

 残り20周、フェルスタッペンはハミルトンを7.5秒引き離して快走中ですが、またブレーキ関係に問題を抱えている模様。エンジニアからはターン9、10の縁石に乗るのがよくないと説明します。毎年のようにここのレースで起こる話ですがおそらくセンサー系でしょう。
 一方入賞圏争いでは臨時で2ストップになっていたルクレールが10位となり角田に攻撃を開始。1周目に緊急ピットしましたが、ハードで走ってる第2スティント終盤にはもう大集団の後端に追いついており、実質1回分のピットを帳消しにしてここまで来ました。

 54周目、ボッタスを攻略することを考えていたペレスがピットへ。どうもコース上での攻略は難しそうなのでタイヤ戦略で揺さぶりに行きます。同じころルクレールは角田を抜いてさらにアロンソも翌周に料理。抜くのはいいんですがこのアロンソと、道中に抜いてきたキミ ライコネンはいずれも抜く際に相手の車のウイングの隅っこを軽く触っています。車幅間隔がズレてるのかな^^;
時々ウイングの隅っこを蹴り飛ばして挽回するルクレール


 残り10周、もう追えそうもないハミルトンはフェルスタッペンの10秒後方。ペレスはボッタスを毎周1秒ほど追い上げており計算上は最後の最後に追いつきそうです。上空には黒い雲が見えて来ていますが、あと十数分で終わるのでおそらくは大丈夫。

 最後はハミルトンがファステスト狙いでピットに入りフェルスタッペンは2位以下を置き去りにした形で優勝、レッド ブルとしてはこれで4連勝となりました。ハミルトンは混雑するレースでファステストだけはきっちり確保して19点を取り最小限の損害でこのレースを終えます。通算43回目の2位はミハエル シューマッハーに並ぶ史上最多タイです。なお、国際映像でピットの平均ロスが25秒と表示されていますが、実際は21秒ぐらいです。


 3位争いは計算通りペレスが最後に追いつきましたが、残念ながら追いついたところで終わってボッタスが3位、ペレスが4位。ボッタスは終盤に周回遅れの集団に追いつき、しかもペースがあまり変わらないのでなかなか青旗を振ってもらうところまで行かず苦労しましたが、しょうもない失敗をせずよく耐えたと思います。もちろん本人は『よく耐えた3位争い』なんてものをしたいわけではないと思いますが。

 ノリスは5位で今季初めてスタート順位より下げて終わりましたが致し方なし。サインツ、ルクレールのフェラーリ2台がこれに続きました。ルクレールは対サインツで見た場合、緊急ピット直後は20秒ほどの差でしたがフィニッシュでは13秒差、サインツがピットに入る前、アロンソからの渋滞に詰まっていた時間帯には最小で4秒差になっていました。
 アロンソらがソフトをもたせないといけないので飛ばせない一方で、ルクレールは空いた場所をハードで走っていたので結局1ピットして集団の最後尾に追いついてしまった形ですが、本来の6位でレースしていればここに埋まること無くもっと速く走れていたでしょう。
 このレースのドライバー オブ ザ デイにも選ばれましたが、そもそも1周目の接触は映像を見る限りはルクレールが少しでも早くガスリーのスリップストリームを得ようとして右に動いたものの、動くのが早すぎて自分からぶつかりにいって相手をリタイアに追い込んだように見えます。 
 スタート直後なので多少の混乱は仕方ないですし、ルクレール自身もウイングを壊して損失を被ってはいるわけですが、競り合いのコーナーで何かあったのとは違って真っすぐ走っていれば何も起きなかったはずの箇所でガスリーには特にできることもなかったと思うので、何らかのペナルティーが課せられるべきではなかったのか?とちょっとこの判定には釈然としませんでした。

 角田は10位でなんとか1点獲得。26周目と比較的速い時期にタイヤを交換したので他のドライバー同様にタイヤがしんどくて、テレビ未放送無線では「ノ~タイヤ~」というちょっと泣きそうな声の無線が公開されていました。結局最初から最後までずっとアロンソの真後ろを走り続けて抜けずに終わりましたが、ひとまずはよく耐えてミスなく走り切ったと言えると思います。
 グリッド降格なく8位からスタートしていればもう少し良い結果になったかなあというところですが、後からタラレバ言っても仕方ないですし、たぶん本人も同じ場所でもう1回できるので、これを足掛かりに次戦は上積みを狙うつもりでいるでしょう。
 そのアロンソもシーズン序盤はエステバン オコンに負けていましたが、最近は安定してオコンより良い走りをしている印象で、やっぱりただもんちゃうなあ、と感心させられます。

 さて、次戦もまたオーストリア、これで3連戦はおしまいです。タイヤは今週より1ランク柔らかい配置になるのでタイヤの使い方と気象条件がかなり重要な気がします。


コメント

okayplayer さんの投稿…
このツイートの人なにふざけた事言ってるんだ!
カイルプッシュ さんのコメント…
いつもアップありがとうございます。レースの詳細やさまざまな情報、とてもありがたく思っています。レースを見てからこちらのブログを見て、レースを振り返るのが楽しみです。
特にNASCARが好きなので、NASCAR関連の記事はとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします!
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 ホントそうですよね~、きっとこういう輩はエアレースが好きだったりするに違いない!
SCfromLA さんの投稿…
>カイルプッシュさん

 ありがとうございます。NASCARだけは無駄に気合いを入れているので今後ともよろしくお願いいたします。