F1 第7戦 フランス

Formula 1 Emirates Grand Prix De France 2021
Circuit Paul Ricard 5.842km×53Laps=309.69km
winner:Max Verstappen(Red Bull Racing Honda/Red Bull RB16B-Honda)

 F1第7戦はフランスです。本来なら先週・6月13日にカナダで開催されるはずでしたが、入国に2週間の隔離が必要な状況で中止に。代わりに今週トルコでやることが発表されたもののこれもやはり無理になり、最終的にフランスを当初予定から1週間前倒しした上で、次戦のオーストリアを2連戦にするという荒業でどうにかすることになりました。NASCARみたいですね!

 予選、Q1では角田 祐毅が最初のアタックの最初のコーナーで縁石に乗りすぎて自爆、赤旗となりました。Q1はアルファタウリの車の出来からすれば、普通に走ればそんなに通過は難しくない場面ですからやってはいけない類のミスでした。


 さらにQ1終盤にはミック シューマッハーもクラッシュしてセッションは赤旗で終了。このあおりを受けたのは1回目のアタックでトラック リミット違反によりタイムを抹消されていたランス ストロールでした。まともなタイムを記録できないままQ1敗退、一方シューマッハーは事故時点で15位だったので、Q2を走れはしないんですが自身初のQ1突破が記録されました。複雑。

 Q3ではレッド ブルとメルセデスがハゲしく争い、マックス フェルスタッペンが頭一つ抜け出してPPを獲得。ルイス ハミルトン、バルテリ ボッタス、セルヒオ ペレスの順でした。レッドブルは最高速でメルセデスを凌いでおり、ペレスも割って入れるかなと思いましたがさすがはメルセデスというべきか、そうはさせてもらえませんでした。アルファタウリはピエール ガスリーが6位でこれもさすがの結果です。


 決勝、スタートのタイヤは上位10台は全てミディアム。どのチームもソフトは使わずミディアムとハードを組み合わせた1ストップ戦略が基本です。ソフトはすぐに傷むので使いズラい上に、ピットのロスが25秒ほどあるので2ストップにはしたくないレースです。
 スタート、ターン1までの距離は短いので蹴り出しさえまとめればフェルスタッペンは安泰のはず。綺麗に発進してまずは最初の任務完了、と思ったらはみ出してしまいました(;・∀・)これでハミルトンがリーダーとなります。本来はみ出したら戻る時に走るべき走路が規定されているんですが、スタート直後ということもあってかお咎めなし。大損せず2位となります。


 ハミルトンはグリップ不足を最初から訴えており、「そっちが予想しているほど長く走れるとは思えない」とも言っていますが、ペースはかなり抑え込んでいる様子。フェルスタッペン、ボッタスはこのペースに合わせるように走っており、当面はハミルトンのペース次第のレースという感じです。ただ4位のペレスはボッタスから4秒ほど後方にいて、あえて温存で距離を空けているのか、単についていけないのか。。。

 第2集団は5位のカルロス サインツの後ろにガスリー、シャルル ルクレールが続き、以降も車が繋がっています。ここに、スタートから唯一と言って良いほどコース上で順位を上げてきたマクラーレンの2台、ダニエル リキャードとランド ノリスが迫ってきました。マクラーレンはレースで強いですねえ。

 14周目、ルクレールが早くもピットに入りハードへ交換。次に16周目にリキャードが動きました。17周目にガスリーとサインツも入りサイクル一巡。ノリスだけは入らなかったので、前方の人がみんなどいてくれたところから走れるだけ走っておき、新しいタイヤで追い上げる戦略となりそうです。マクラーレンが2種類の作戦で挟み撃ちする形ですね。

 17周目、上位ではまずボッタスがピットへ。こうなるとフェルスタッペンも動くしか無く18周目に入ります。ピット前に2.7秒ほど差があったのでアンダーカットされることなく実質2位でコースへ復帰。当然この流れでハミルトンも19周目にピットへ。
 ピット前にはフェルスタッペンと3秒差があったのでこちらも当然順位を守れると思っていましたが、なんとターン1でフェルスタッペンがハミルトンをかわしました、ビックリ!


 メルセデスは2台で自分たちから揺さぶって相手を動かしたのに、うっかりアンダーカットされてしまって失敗でした。レース後のメルセデスの話だと、アンダーカットされるというのは全くの想定外だった模様。
 そもそもボッタスをピットに入れたのは揺さぶるためではなく、振動の問題が出ていて早めにピットに入れるしかなく、結果的にフェルスタッペンが動いたのでハミルトンも動く流れに繋がった、という話です。何だろう、しれっとボッタスのせいにされている気もするw
 ただ、中継映像だけなので見ている側の情報は限られますが、ハミルトンはフェルスタッペンがピットに入ったことを伝えられると「タイヤはまだ行けるぞ」と答え、そして「ハンマー タイム」と言われたのになお「全部使い切るのか?どうするんだ?」と聞きながら走っていたので、イン ラップで本当に全部出しきれずに入ったようにも感じました。相手に合わせるのか、引っ張って履歴差を作って後半勝負なのか、やや意思疎通に迷いがあったようにも思います。

 24周目、そろそろフェルスタッペンが追いつきそうだったところで暫定1位のペレスがピットへ。フェルスタッペンがコース上で抜いて、ペレスは鉄の屑作戦でもやるのかと思ったw ノリスも同じ周に入り、一旦ガスリーの5秒近く後方へ。残りまだ29周もあります。

 1位争い、前に出たらフェルスタッペンが逃げるかといえばそうでもなくハミルトンとボッタスがDRS圏内で追走。残念ながらボッタスは26周目にここから少し千切れてしまいますがハミルトンは離れません。ずっと後ろにいたらタイヤはしんどい気がするんですが、ハミルトンはいつまで食い下がれるのか。

 29周目、フェルスタッペンは無線で「この状態のまま最後まで走れるとは思えないよマジで」と、ハミルトン的な訴えかけ。この情報はすぐハミルトンに伝えられ「あっちは最後まで行けないって言ってるから重圧をかけ続けろよ」と言われますが、ハミルトンは「その通りだね」。そう言うと思ったけどピレリさんの気持ちも少しは考えてあげるんだみんな!w

 フェルスタッペンはそうは言いつつハミルトンを1秒以上の差に蹴り出しますが、なんとなく上位勢が諦めて2ストップに変更しそうだなあ、と思った矢先の32周目、フェルスタッペンが先に動きました。またミディアムに交換してペレスの後ろで復帰します。

 メルセデスとすれば、我慢の1ストップか、同様に攻めての2ストップか。ただもう1回入った場合、ハミルトンはペレスの壁を抜けないといけないため動きにくい状況にありますし、単にフェルスタッペンの後ろで終わる可能性も高い。こうなるともう居座るしか選択肢がありません。過去何度かメルセデスが仕掛けた罠を今回はレッドブルが仕掛けていきました。

 一方ハゲしかった5位争いはマクラーレンの2台がやはり御機嫌。リキャードはコース上でルクレールを抜いたら前に誰もいないので快適なドライブ。一方ピットを引っ張ったノリスの方も圧倒的なペース差で前にいた3人を全部ぬいてしまい、さらにリキャードも抜いてしまってほぼ5位を確定させます。フェラーリはタイヤがズタボロな状態です(^-^;


 フェルスタッペンは毎周ハミルトンより2秒ほど速いペースで追い上げていき、捕まえるのはどうやら時間の問題。こうなるとボッタスがいかに壁になるか、です。
 41周目、ハミルトンとフェルスタッペンの差は約7秒。フェルスタッペンは無線に問題が出たようでドライバー側の声ががっさがさ。現状とにかく追うだけなのでエンジニアからの指示が聞こえていれば大丈夫かもしれません。

 一方ハミルトンも一時期無線が壊れたようで、ポール リカールに怪電波でも流れてるんじゃないかと思いましたがこちらはピット側で機器を交換したら直った模様。このあたりからハミルトンはいくらか持ち直し、一方フェルスタッペンのペースもやや鈍って毎周0.7秒ぐらいしか詰まらなくなってきました。

 44周目、フェルスタッペンがボッタスを抜いて残り9周でハミルトンとの差は5秒。ボッタスが少し粘ったので多少の足止めにはなっていました。ただ抜かれたボッタスは「何で2ストップにしなかったんだ」とブチギレ。


 46周目、ここでハミルトンがフェルスタッペンを0.013秒上回るタイムを記録して意地を見せますが、翌周は軽くはみ出してスピード バンプに乗ってしまいフェルスタッペンが0.8秒速いタイム。ものすごい持久戦は最終局面に入ります。プロの戦いですね。

 49周目、思ったより時間を食いましたがペレスもボッタスを抜いて3位へ。ボッタスはもうプランFで1点獲りにいくしかやることがなさそうかと思いましたが、ペレスには抜いた後にコース外にはみ出した疑いからコース外を使った追い抜きの審議となり、こうなるとひょっとしたら3位が帰って来るかもしれないのでボッタスもステイ アウト。

 そして残り2周となった52周目、フェルスタッペンがとうとうハミルトンのDRS圏に入ると、もうハミルトンは無駄な抵抗はしませんでした。2ストップ作戦辛くも成功、フェルスタッペンがリードを奪い返し、そのままトップでチェッカーを受けました。

 毎度メルセデスにやられていた作戦をやり返してレッドブルが3連勝。フェルスタッペンは2週間前にタイヤと共に砕け散った優勝をタイヤを使いまくって取り戻しました。PP、優勝、ファステストのハットトリック達成で、これは自身初です。
 ペレスは結局ペナルティー無しで3位、ボッタスが4位となりました。ペレスは序盤遅れ気味でしたが、結局タイヤを長めにもたせて1位から8.8秒、2位から5.9秒差ですので地味ですが仕事をきっちりこなした印象でした。最終周に自己ベストを出しているのでちょっとタイヤ余ってしまったかもしれません。
 一方のボッタスは今季ここまで3位が3回、12位が1回、リタイア2回だったので、3位以外の順位で入賞したのは今季初です。
 マクラーレンのノリス、リキャードがこれに続き、7位にはガスリー。フェラーリは早めにタイヤを換えて攻撃したは良いものの摩耗がひどすぎてカモにされてしまい、終わってみたらサインツが11位、ルクレールはまさかの16位。ルクレールはあまりにダメなので2ストップに切り替えたものの、アントニオ ジョビナッツィーを抜けずに置いて行かれる厳しいレースでした。
 対照的にアストンマーティンは9位、10位ながら2台とも入賞。2人ともハードでスタートしてピットを引っ張りまくる作戦でうまくやりました。開幕直後のがっかり感からするといくぶん調子を上げてきて、ベッテルも持ち味を出し始めているので見ていてちょっと楽しみが増えた感じです。


 今回はスタートでのフェルスタッペンの失敗、1回目のピットでのメルセデスの誤算、という2つの要素が最後の"見えない争い"へと繋がって行って見ごたえがありました。タイムを確認しながら「一気に追いついた!」「お、ハミルトン粘った!」「段々追いつかなくなってきた!?」と思いつつ見るのが楽しかったです。
 ハミルトンがアンダーカットされていなくても、フェルスタッペンはDRSを使ってさっさと抜いたか、あるいはやはり2ストップに賭けたか、という展開になっていたでしょう。そしてその勝敗はどのケースでも僅差になっていたように思います。劣化するタイヤで限界までペースを保ち、追いつかれたらもういらんことはしなかったハミルトンの走りも見ていてカッコよく、これぞ最上級のドライバーの争いと感じた一戦でした。

 次戦からはオーストリアで連続開催、フランスから数えて3週連続開催です。全くの余談ですが、NASCARの週2戦や2日連続の開催は、スチュワート-ハース レーシングのスタッフによれば「かなりキツイ」そうで、年に1回ぐらいならいいけど、という印象だそうです。NASCARの場合Xfinity Seriesの仕事も掛け持っててレース数が下手すりゃこの2倍なのでなおさららしいですが、F1の現場もきっと大変なんでしょうね。。。

コメント