F1 第6戦 アゼルバイジャン

Formula 1 Azerbaijan Grand Prix 2021
Baku City Circuit 6.003km×51Laps=306.049km
winner:Sergio Pérez(Red Bull Racing Honda/Red Bull RB16B-Honda)

 F1第6戦アゼルバイジャン。異様に速度が出る市街地サーキットです。かなり事故が多い印象のあるイベントですが、今年は予選からいきなり荒れました。

 Q1ではランス ストロールとアントニオ ジョビナッツィーがクラッシュ。2度の赤旗が出されてしまいます。FP3で発生した水漏れの修復作業を予選中も続けていたジョージ ラッセルには2度の赤旗は作業時間確保に繋がり修復完了。Q1を突破して結果予選15位でした。
 赤旗は他にも影響し、ランド ノリスは赤旗が出たのにピットに入らずにストレートをそのまま行ってしまったので3グリッド降格処分。ちょうどピットの入り口付近にいたので、本人は『今からでは止まれない』と思って避けたんですが、言い分は通りませんでした。でもあそこで急減速したらそっちの方が危ないと思うんだけどなあ。

 Q2ではセッション終盤にダニエル リキャードがクラッシュしてまた赤旗。2回目のアタックを完了できない人が発生しました。レッド ブルは1回目のランでアタック→チャージ→アタック、とイン/アウトを含めて計5周していたので、この2回目でできれば浅い履歴のタイヤを使ってタイム更新をしておきたかったところ。赤旗でそれが叶わず古いタイヤが決勝のスタート用となります。角田 祐毅はQ2で4位、初のQ3進出。

 そしてQ3、1回目のランではシャルル ルクレールが最速。この週末もタイヤの熱入れの問題かどうも安定しないルイス ハミルトンが2位につけます。バルテリ ボッタスはハミルトンにスリップストリームを提供する仕事で自分は10位(´・ω・`)

 アルファタウリは新品タイヤが1セットしかないのでサイクルをズラし、他の人がいない間にタイムを出します。角田が8位、ピエール ガスリーはさすがの4位。そしてこの後が大変でした。
 彼らがアタックを終えたタイミングはちょうど他の人が2回目のアタックへと向かうアウト ラップと重なります。ただでさえスリップストリームが欲しくて駆け引きが起こっている中ですが、アルファタウリの2人もこの中に入って2回目のアタックに行くつもりだったようでぐちゃぐちゃに。
 事実上の最終コーナーであるターン16をゆっくり立ち上がる人もいますが、計測ライン~ターン1の減速位置が極めて近いからこそできることでしょう。そんな中で、いざみんながアタックに入ると、角田がターン3でクラッシュ。事故を見たカルロス サインツも回避のためにスピンし、当然赤旗となってQ3終了。モナコに続いてルクレールのPPが赤旗で確定しました。
 好調だったはずのレッドブル。フェルスタッペンは2戦連続でアタック機会を奪われて良い気はしない上に、今回は原因が自分たちの陣営の若造ですから、ちょっと角田の立ち位置はよくなさそうです。ハミルトンは車の状態はよろしくないのに幸運な2位。1回目できっちりタイムを出しててよかった('◇')ゞ


 決勝、フェルスタッペンには思わぬ出来事。実はQ2で重量検査に向かっており、この際に路面の塗装をタイヤが拾って汚れてしまったそうで、これにより許可を得てタイヤを別のQ2のタイヤに交換。この別のやつというのは、赤旗でアタックし損ねたやつなので履歴は1周ちょっと。結局他の人より履歴の浅いタイヤになりました。ラッキー♪


 スタートはまずまずクリーン、セルヒオ ペレスが2つ順位を上げて4位とし、フェルスタッペンの背後へ。3周目に入るところではハミルトンがルクレールを抜いてリーダーになります。DRSが解禁される前に仕留めました。レース後のルクレールによれば、ターン15で木の枝か何かが落ちていて、これを避けて走るために少し減速してしまったということです。けっこう落ちてるんですよね。


 上位3台はいずれも1秒以内での走行でレースが進行しますが、6~7周目にルクレールがDRS圏外に千切れてしまい、すかさずフェルスタッペンがかわして2位浮上。翌周ペレスも同様に3位に浮上します。強いぞレッドブル。ガスリーが5位、角田も7位です。

 9周目、ガスリーにも追われ始めたルクレールはピットへ。角田も入ります。この直前、角田に対してはピットから「タイヤは大丈夫だからここから飛ばせ!ベッテルを引き離すぞ!」と無線が飛びましたが、角田の返答は「黙れ!!!」 これ、完全にFOMに角田の暴言が狙われてますね(;・∀・)

 11周目、タイヤを既に換えているサインツがターン8を止まれず直進し大きく後退。同じころハミルトンはピットに入ります。しかし4.6秒と作業に時間がかかりました。
 メルセデスはモナコでボッタスのホイールが外れなかったことからナットの形状を変更。斜めにガンを差して、山を一瞬で全部削り取ってしまったことが失敗の原因だったため、あえて山を低くしてしまい、真正面からちゃんと差し込まないといけないようにしたそうです。今までと違うから作業に手間取ったのかもしれません。

 これを受けて12周目にフェルスタッペンもピットへ。1.9秒の超速ピットでハミルトンの前でコースに戻りました。
ハミルトンは遥か後方


  ペレスはステイ アウトし、フェルスタッペンのスリップストリームによる恩恵があったのでファステストも記録。13周目にピットへ突っ込みます。ところがペレスはハミルトンにお付き合いの4.3秒ピット。これでもギリギリ前でコースに戻りましたが、本来1秒以上余裕があったはずが真後ろにハミルトンがいます。

 これで見た目上のリーダーは11位スタートのセバスチャン ベッテル。ソフトでスタートした中で唯一まだピットに入っていません。ピット サイクル前は角田の後ろ、実質8位といった場所にいましたが、タイヤが元気なようでハードに換えた角田よりも速く走れています。かなり車の状態に満足な様子の無線も流れます。ベッテルの機嫌が良くて切れの良い走りが見れるとなんか嬉しいですね。

 18周目、ベッテルは角田に対してじゅうぶんな差を付けてピットへ。オーバーカットして7位でコースに戻ります。4位のストロールがハードでスタートしてまだ入っていないので実質は6位です。

 フェルスタッペンとペレスは3.2秒差でほぼ同じようなペース。ハミルトンはその1秒背後でDRSを使えたり圏外に行ったりの繰り返し。ハミルトンは「こいつ速いんだけど」「あっちの方がリアが安定してる」と、たぶん格下の相手に抑えられているので苛立ってる、という感じの反応。

 一生懸命にペレスを追っていたハミルトンは厳しくなった様子で25周目にはペレスの2.5秒後方まで置いて行かれレッドブルの優勢。依然としてストロールが入っておらず4位ですが、けっこう良いペースなのでピット後に10位争いに参加して、新しいタイヤで面白いかもしれません。その10位にいるのはボッタス。全然順位が上がらない。。。

 あとは自爆だけが怖いフェルスタッペン、エンジニアから風向きについての注意が出されます。一方面白くなってきたのがガスリー、ルクレール、ベッテルの実質4位争い。ベッテルのタイヤが一番新しいので、ピットに入った時から楽しみにしていた局面です^^

 と思ったら31周目、ストロールがピット入り口付近でクラッシュ。300km/hは出ているであろう場所で左リア タイヤが壊れた様子。ちょうどその後ろにガスリー以下の争いがいましたが、幸い二次災害は起こりませんでした。もちろんSC導入で、なおかつピット入り口付近に車両と破片が散乱しているのでピット入り口は閉鎖となりました。


 不幸中の幸いだったのはストロールの車が左にすっ飛び、そのままコースの左側半分でのたうちまわっていたことだったと思います。コースを横断していたらガスリーが避けられたかちょっと怪しい危険個所でした。

 かなり破片も散らばってるし、誰がどう細かい破片を踏んで次の事故が起きるか分からないので、一旦赤旗にしてみんな別のタイヤに換えておくべきではないかと思いましたが、SCのままレースは進行します。

 35周目にピットは解禁されますが、リード ラップ車両が17台もいるので上位勢は入れるわけもありません。後方の4台だけピットに入りました。ミック シューマッハーはナットが締まってなかったようで車を押し戻すことに。1周の短いコースだったらリスタート前に追いつけず大損するところでした^^;

 36周目にリスタート。ペレスがやや出遅れますがハミルトンが早めに引いたので2位を維持。そしてその後ろではベッテルがルクレールをかわすと、翌周にガスリーもかわして4位へ!一方ボッタスはリスタートでリキャードに抜かれて入賞圏外へ落ちると、タイヤを交換した組が後ろに来てしまったのでもう風前の灯。。。

 2位争いはピット直後と似たような展開で、ハミルトンがペレスの後方1秒前後を行ったり来たり。フェルスタッペンが鼻歌を歌いながら逃げているようにも見えます。
フェルスタッペンの上に ♪~ とか書きたい感じ?


 ルクレールはリスタート直後に思いっきり前輪をロックさせたものの意外と平気な様子。角田が追いますが、後ろからもノリス、サインツが来ています。ノリスは振動があると訴えているのでちと怖いのですが。

 いよいよレースは残り5周に入ろうかというところ、信じられないことが起こりました。

 フェルスタッペンがコントロール ライン付近でクラッシュ。左リアタイヤが壊れました。当然SC導入。ルクレールに対しては無線で「レースはまだ続いてるぞ」とエンジニアが声をかけますが、返答は「冗談だろ!?」

 ストロールは31周ほど走ったハード、フェルスタッペンも34周、レース周回で言えばやはり30周ほど走ったハードですから、非常に気になります。こうなると怖いのでピレリは週末に入ってからタイヤの最低内圧を引き上げていたんですが、タイヤ屋さんとしてはマズイ状況です。でも、「タイヤに亀裂があった」と説明して終わるのが毎度のパターンなんですよねえ。

 48周目を終えると赤旗が宣告され、ペレスを先頭に車両はピットへ。フェルスタッペンも同じころ徒歩でピットへ。さすがにここからシュートアウトはせんだろう、と思った私は甘かったようで、45分ほど待たされてレース再開。スタンディングでのリスタートにより、残り2周のシュートアウトとなりました。
 公式サイトのリーダー ボードの表示をふと見たら、計測地点の問題か何かでしょうが、ニキータ マゼピンだけ2000秒差とか書いてあって思わず笑ってしまいますw


 みんなソフトに交換して50周目にリスタート。面倒くさかったのか一瞬でシグナルが消え、ハミルトンが蹴り出しで並びかけました。ハミルトン獲ったか、、、ノー―――!!



 ハミルトンは無線でエンジニアのピーター ボニントンに「マジックをオンにしてたか?切ってたと思うんだけど」と尋ねました。しかしボノは被せ気味に「スイッチはオンに戻ってたみたいだ」
 メルセデスには『ブレーキ マジック』と呼ばれるモードがあります。フォーメーションはSC中の走行でブレーキの温度を保つため、ブレーキマジックを使うとバランスが極端に前寄りとなり、ERSの回生モードなどいくつかの設定がこれ1つで切り替わるという優れものです。
 しかし当然ながらこれでレースしようとすると前輪がすぐロックしますし、仮にそうならなくてもERSが充電モードなので加速時にアシストがありません。絶対切らないといけないものです。しかしどうやらハミルトンはペレスがスタートで寄ってきてそれに対応している際にボタンを誤爆したとのこと。痛恨の失敗でした。これは、ナットに続いてスイッチの場所も変更しないといけなさそうですね。
 ハミルトンは2018年のオーストリアから続けていた連続入賞記録が54でとうとう途絶えました。事故とはいえ選手権でフェルスタッペンを逆転するはずが、まさかのお付き合いです。メルセデスとしても連続入賞が55で途切れました。

 この後3位争いがルクレールとガスリーの間で繰り広げられましたが、ガスリーが見事な応戦で3位を死守。ペレスがそのまま優勝して移籍後初優勝、通算2勝目。ところが、無線で祝福のコメントを受けるや否や「車を止めろ」と指示されてピット出口に止めてしまいました。1位の看板の前に車がいません(´・ω・`)2位ベッテル、3位ガスリー。角田はリスタートから2つ順位を下げてしまい7位でした。
 いきなり車を止めるもんだから、何か車検でひっかかるような違反とかやらかしてないか心配で気になって気になってレース後すぐ熟睡しましたが、起きて確認したらちゃんと結果は確定しているみたいでよかったです。

 終わってみたら混乱のレースでキミ ライコネンが10位となり今季初入賞。6位のフェルナンド アロンソは復帰後最上位となりました。

 ピレリのマリオ イゾラはレース後、今回のタイヤの問題について
「予備的な結論を出すつもりはありませんが、これはデブリによるカットのようです。なぜなら、私が言ったように、これは最も負荷のかかるタイヤではないからです… 同じタイヤで同じ周回数を走らせた他の車も問題なく使用できました。したがって、予備調査では、おそらく外的要因、破片、縁石などによるものだと考えられます。」

「もう 1 つの要素は、兆候がなかったこと、またチームによると警告がなかったことです。私たちは彼らからテレメトリーを受け取る必要がありますが、彼らが私たちに話したのは、兆候も振動もなかったということで、タイヤに何か問題があると思われるものはありませんでした。」

 2018年には、ボッタスがクラッシュによるSCのリスタート後にバーストしてまさかのクラッシュを喫したことがあり、その場面を思い起こした方も多いでしょうが、イゾラはフェルスタッペンの件についても同様ではないかと言います。

「マックスの場合、それはランスの車の残骸かもしれません。ランスについては、クラッシュの前に事故はなかったので、正直なところわかりませんが、何かがトラック上にあった可能性は否定できません。」


「覚えているかもしれませんが、2018年、ボッタスはメインストレートで大きな破片を拾い、突然の収縮で同じ問題を抱えていました。この時には、画像からそれが確認でき、タイヤを切っている破片がはっきりと見えました。この場合、もう少し複雑です。」

「明らかに、私たちの調査のもう1つの要素は画像であり、画像、動画などがあれば、何が起こったのかをよりよく理解するために使用します。」

 そして、ピレリはフェルスタッペンのクラッシュによる赤旗中に、ハミルトンのタイヤに切れ目を発見したと発表しました。

「フェルスタッペンと同じスティントでルイス ハミルトンが使用した左リアタイヤの内側のショルダーに切り傷が見つかりました。カットはかなり深くて大きく、おそらく6〜7cmでしたが、構造をカットしていなかったので、このカットだけではタイヤはまだワンピースのままでした。そして、赤旗でルイスがピットに戻り、タイヤのセットを交換したときにタイヤの切れ目を見つけることができました」


 予想通りの反応^^; ここは意見が分かれるところで、破片の上を通ったので心配があるならリスク管理でピットに入るのもチームの仕事だ、という自己責任論の考えの方もいると思います。
 しかし、個人的には1回目のクラッシュで赤旗にしてタイヤを交換し安全を確保すべきだったと思います。過去に破片を踏んだ例があり、同じようなことが起きているのですから、後付けで「2018年と同じですね」と説明されても「はい、そうですね」というのはあまりに間が抜けています。
 SC中はタイヤの内圧が下がるので、些細な破片でもプスっと刺さりやすくなります。その状態からまたレースになって速度が上がると内圧が上がりいきなりバーンと壊れるわけで、潜在的なリスクは誰もが感じていたでしょう。

 もちろんレースの進行を決めるのはピレリではないのでイゾラが悪いわけではないですが、レース コントロール側はもう少し状況を考えてしかるべきだったと思います。自己責任論で良いのなら、そもそもVSCもSCもいらないはず。それで重大な事故が起きたから制度を作ったわけで、今回たまたま、『たかがフェルスタッペンが優勝できなかっただけ』で済みましたが、多重事故で死傷者が出ても問題無かったと言えるんでしょうか?
 タイヤの問題があるような対応をすると、タイヤに問題があると認めたように見えるからピレリ的に困る、という力学も働くのかもしれませんが、自分達のメンツを重視して他を後回しにした政策決定なんて、たいていロクな結果を生みません。
 1回目の事故ではSCで進行し、2回目は止めてわざわざ2周だけのレースを再開させた判断の差はいったいどこから来るのか、というのも説明が必要だと思いますし、逆に、ストロールの事故以降に誰も問題が起きずにレースが終わっていたとしても、続行して良かったのかは議論されてしかるべきだと個人的には思います。

 確かにストロールの事故の段階で赤旗にすると、各陣営の残りタイヤによって戦略がかなり固定されてしまい、有利不利が出て来るという難点はありますが、破片を踏んでいつぶっ飛ぶか分からないものを『これもレース』と呼ぶぐらいなら、心配のないであろうタイヤで流れが変わったものを『これもレース』と呼ぶ方が、まだいくらか健全ではないかと個人的には思います。

 次戦はポール リカールでのフランスGPです。

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