NCS 第14戦 オースティン

NASCAR Cup Series
Echopark Texas Grand Prix
Cuircuit of the Americas 3.41miles×68Laps(15/17/36)=231.88miles
winner:Chase Elliott(Hendrick Motorsports/Llumar Chevrolet Camaro ZL1 1LE)

 NASCAR Cup Series、いよいよ今年注目の一戦となりました。オースティンのサーキット オブ ジ アメリカズ、F1のアメリカGPで使用されているサーキットをそのまんま使った初開催のレースです。
 今回は初開催ということもあって、土曜日に練習走行、日曜日に予選と決勝が行われる日程ですが、可能な限り走りたい数名はXfinity Seriesにもエントリー。カイル ブッシュはこっちのレースでまず優勝しました。さすがにCamping World Truck Seriesに出ているカップのドライバーはいませんでした。

 残念ながら週末の天気予報は今一つ、カップ シリーズは練習走行がウエット、予選はドライでしたが、決勝までの間に雨が降ってきてスタート時には霧雨が降ったような状況になります。
 予選ではタイラー レディックがPP、好調を維持するカイル ラーソンが2位につけます。大半の車はスリック タイヤを選択し、5台だけがウエット タイヤを選択しました。が、スタート前にだんだん路面水量が増えてきている様子で、いろんな意味で雲行きが怪しくなります。

 レースが始まると、濡れた路面とスリックの組み合わせでみんなフラフラ。なんといきなり3位スタートのオースティン シンドリックがリードを奪います。続くのが7位スタートのA J アルメンディンガー、スポット参戦組がトップ2となる波乱の幕開けです。
 1周目から早くもタイヤをレインに交換するドライバーがピットへ駆け込み、2周目にはアルメンディンガーもレインへ。ところがシンドリックだけはスリックで走り続けます。
この水量をスリックで走れるのが謎w

 レイン組より僅かに遅いぐらいのペースで走れているシンドリックですが、予報ではこの先も雨は増加予想。レイン組の方がペースで上回っており、もしコーションが出てからタイヤを換えたらビリ、わざわざ1台だけ違うことをする意味が無いので、なぜそこまでして引っ張るのか解せなかったですが、ようやく5周を終えてピットに入ります。
 これでリーダーはウエットでスタートしたマーティン トゥルーエックス ジュニアとなりました。マイケル マクダウル、バッバ ウォーレス、リッキー ステンハウス ジュニア、ライアン プリースとウエット組が続きます。シンドリックはタイヤ交換組で5番目あたりまで落ちますが、コース上で順位を取り返します。

 8周目、CM中にダニエル スアレスがコースのど真ん中で止まってしまいコーション。動作を見る限りギアがニュートラルに入ってどこにも入らなくなった感じです。これでウエットで大成功した人たちは一旦大量リードがリセットされました。

 トゥルーエックスはここでピットを選択。ここで給油するとステージ2の終わりまで給油不要になるので、3回給油を行うとしてゴールから逆算している感じです。18台ほどステイアウト、マクダウルとジョーイ ロガーノの1列目で10周目にリスタート、毎回こんな状態になります。


 ウエットを履いたところでグリップは極めて低く、デニー ハムリンは単独でスピンした様子。視界がとても悪いということですが、映像を見ているとドライバーによってワイパーの動作範囲がまちまち。
 ペンスキーは180°動いてますが、ドライバー側の90°だけのところもあるし、動かしていないところもあります。ジョー ギブス レーシングはワイパーが動いてないみたいですが、カイル ブッシュによれば(おそらく撥水性のある)スプレーを使ってワイパーは使っていないということで、動かしても大して役に立たないので、水がどんどん飛び去ることを重視したみたいです。

 11周目、ロガーノがマクダウルを捉えてリーダーに。3位にはシンドリック、無駄にピットを引っ張らなければたぶんリードしてたと思うんですけどねえ^^;
 NASCARでは基本的にスーパー スピードウェイでの黄色い線、シケインなどのコーナーの内側のショートカットしかコースの逸脱とはみなさないため、ここでも同様にコース外走行は自由。おかげでコース外がラインになりますw

 ただ見ていて面白いのが、ロガーノなんかはむしろコース内でアウト側に1台分以上残したミドルを使って走っていてラインが全然違うという点にあります。ラバーの乗った部分は滑るから避けたい、というのはよくある話ですが、半径を小さくしてでも内側を使って速いというのは面白いですね。それだけ車が曲がるんでしょうけど。

 13周目、マット ディベネデトーがウイリアム バイロンに思いっきり追突、両者とも大きなダメージを負います。右リアのフェンダーが無くなったバイロンは緊急ピットしましたがこのレース11位。連続トップ10記録は11で途切れました。

 ステージ1はこのままロガーノが制しました。マクダウル、カート ブッシュ、ラーソン、シンドリックのトップ5でした。ディベネデトーはつぶれた車でステージ10位、潰れたフェンダーは引っ張ったらわりと戻りましたが、ペースが全体的に悪く23位でした。

 ところで、先日ブラッド ケゼロウスキーのラウシュ移籍の噂についてお伝えしましたが、この話に付随して「シンドリックが本来予定していたウッド ブラザーズではなく、2022年にペンスキーへ行くのではないか」という噂が浮上し、さらにこれに伴って「ディベネデトーはウッドブラザーズ残留の可能性がある」とどんどん話が広がっているようです。このへんは連想ゲームですが、そうあってほしいと願う人は当ブログに数名いる気がしますw


 5位のシンドリック以下にピットに入る車がいましたが多くはステイアウト。ロガーノとマクダウルの1列目でリスタートしました。序盤にリーダーだったトゥルーエックスは12位です。ステージ1を終えたらもうちょっとみんなピットに入って前方に戻るつもりだったのにアテが外れた感じがしますね。

 マクダウルはリスタートに失敗し兄ブッシュが2位に浮上、さらに弟ブッシュもこの周に3位に浮上して、ロガーノをブッシュ兄弟が追いかける態勢となります。
 しかし、中団で複数の事故が発生。水煙がひどすぎて詳細の把握ができない状況ですが、ライアン ブレイニーがクリストファー ベルに追突されて右リアをバースト。これを見た後続のハービックが早めに減速したら、ウォーレスに追突されたようです。これでコーションとなり、さらに


 謎の設備トラブルまで発生、さらに水を撒いていますw FOXはGPSのデータからバーチャル映像でクラッシュの状況を推察し『再現』。これ、非常に便利ですね。かなりの速度差で後ろから突っ込んだと思われる状況がよく表現されていました。ハービック、ウォーレス、ベルはリタイアです。
ハービックはとりあえずピットで処置したもののトラック上で停止・・・

 コーション中に何台かはピット、トゥルーエックスもその一台でしたが、理由は前が見えないから。ウインドウ シールドにだれかしらが撒いたオイルが付着してどうしようもないので入ったそうですが、これで27位まで落ちてしまいました。トラック ポジションを犠牲にしたのが後手後手の展開を生んでしまっています。

 25周目、兄ブッシュはピットに入ったのでロガーノと弟ブッシュの1列目でリスタート。チェイス エリオットは混とんとしたレースで目立ちませんでしたがここでようやく4位まで浮上、ビル エリオットもターン15のスポッターとして参戦しています。ビルに「ちょっと君、見にくいから場所空けてくれんか」とか言われたら誰も断れない気がするw

 リスタートではなんと全くマークしていなかったロス チャステインが2列目からインに飛び込んでリードを奪い、プリースが続きます。チャステインは序盤からちょっと危ない飛び込みを何度か見ていましたが、ここはうまくインに飛び込みました。
 そしてこの2台、両方とも走り方が不安定でお互いに細かいミスを繰り返しながら争います。カイルはちょっと距離を置き3位、ロガーノはコースのミドルを走る走法がちょっと災いしてる感じで集団に襲われています。そして、またしてもバックストレートで事故が起こりました。 

 マクダウルが前方で事故があったと誤解したのかずいぶんと早く減速してしまい、後ろからトゥルーエックスが追突。さらにトゥルーエックスにコール カスターが追突し、不運にもカスターはバリアの角にも直撃。カスターの車からは出火してフロントをほぼ全損。これでとうとう赤旗になりました。
 スチュワート-ハース レーシングは今週も2台が大破ですね。。。正直、バックストレートでの視界があまりに悪いのでレースできる状態ではないように見えます。NASCARは赤旗の間に総動員体制で路面の水を除去しにかかりました。

 赤旗が解除されると、NASCARは特別にピットでウインドウシールドとヘルメットのバイザーに触って視界確保の作業機会を与えると通知。また、この先のリスタートは1列とすることも決定されました。ブリストルのダート戦と同じ流れですね。
窓ふき選手権スタート

 リスタートを前にしてチャステインとロガーノがピットへ。この2台は最初にウエットに換えた1周目からピットに入っていないので給油のしどきでした。

 29周目、プリース、カイル、シンドリック、エリオットの順でリスタート。プリースはターン1の出足でミスり、カイルとシンドリックの争いとなります。その後ろではオースティン ディロンがS字区間で曲がれず内側をショートカット、外側は自由に走るレースですが、内側だと利益を得ていなくても一発でパススルーのペナルティーを食らうみたいですw

 リスタートから2周ほどはカイルを追いかけまわしたシンドリックでしたが、そこを過ぎると急激にへばって置いて行かれ、ステージ最終周には逆にエリオットに抜かれてしまいました。カイル、ロード コースでは自身2度目となるステージ勝利、レディックが3位、5位にコリー ラジョーイが入りました。
 NASCARのロードコース戦って、画面上部の順位表示が1周ごとにしか更新されないから順位とペースの確認がしにくいんですよねえ。タイミング ループは埋まってるはずなんですが、システムに反映する仕組みがないんでしょうか。


 ステージ間コーションでは、主にラジョーイ、プリースなど1回目のコーション以来ピットに入っていなかった人たちがピットに入りますがカイル、エリオットはステイ アウト。状況が複雑で正確な把握が困難ですが、この2人も1回目のコーション以降入ってない組だと思われるので、そう長くは走れないと予想されます。上空は雲の切れ間にさしかかって少し明るくなり、路面の水量も減りました。

 16台ステイアウトでファイナル ステージ開始。残りは33周でどのドライバーもあと1回のピットは必要な状況です。リスタートではシンドリックがターン1で2台抜きして2位へ。タイヤがまだ万全でない時でも限界近くを探せる能力があるドライバーかもしれませんね。
 しかしやっぱり数周するとエリオットらに追い回され、カイルからするとちょうど良い蓋になっています。シンドリック以下に大渋滞発生、みんなコース外を走りますw

 38周目、シンドリックに詰まって困り果てたエリオットをラーソンがかわすと、コースの終盤区間でとうとうシンドリックが持ちこたえられずガタガタと順位を落としていきます。これでラーソンが2位。ここにロガーノが続いてきます。ロガーノはこの集団では新しいタイヤなのでその分速さを持っていました。

 41周目、残り27周でカイルがピットへ、エリオットも続きます。ピット後の無線でカイルは燃料がまだ2周ショートだと言っているので、本来ならもう少し引っ張りたかったんですが燃料がここで限界でした。燃費走行しつつコーションが出るのを期待して走るしかないでしょう。

 残り24周あたりからピット サイクル。中団グループからピットへ向かいます。この頃にまた雨脚が強くなってきました。
 残り23周でリーダーのラーソンもピットへ。他もだいぶピットに入り終えた感じですが、これでチャステインが暫定のリーダーとなります。チャステインはコース外を利用しまくって良いラインを見つけたらしく、ラーソンを1周あたり1秒ほど上回るペースで2位にまで上げてきていました。

 残り22周でチャステインもピットへ。これでピットに入っていないのはボウマンだけ。そしてピットに入った組では、ちょうどエリオットがカイルを抜いて事実上のリーダーとなりました。チャステインはフェンダー修復作業も行ったので少し作業に時間がかかり、ピット組では7位あたりで復帰です。

 残り18周でボウマンもようやくピットへ、同時にエリオットに抜かれる寸前だったので、リーダーからまるまるピット1回分の遅れということになります。ただ、エリオットもカイルと同じ周にピットに入ったということは同じく燃料は厳しいわけで、2位のラーソンにチャンスがあります。
 カイルの方は3位に落ちてしまったし、燃料も厳しいし、しかも雨量が増えてきてフラフラし始めたので、ギャンブルでもう1回入って新しいタイヤで追いかけることを決断。残り16周でこのステージ2回目のピットとなりました。

 トラック上はふたたびかなりの水量、バックストレートはアクア プレイニングを起こしそうな状況で、燃料消費は少なくなりそう。とりあえず走るしかないエリオットはこの状況で水を得た魚のように猛烈な速さを発揮し、ラーソンを毎周数秒ずつ突き放していきました。

 ただ、状況の悪さは深刻になってきて、カートはブレーキで完全にミスってミサイル状態。なんと2台の車のちょうど真ん中、ここ以外ないという場所を通り過ぎて誰も巻き込まずにすみました。しかも奥のグラベルにハマらないようアクセルを踏み続けてコーションも出さない献身的ドライビングです。

危うく弟を巻き添えにしかけたが兄の力で回避!

 しかしさすがに雨が多すぎて単独スピンする人も増えてきたのでとうとう残り14周でコーションとなってしまいます。事故を連発していた時よりもひどい状況ですから当然といえば当然です。なんかこのまま赤旗で終わりそうな気がする。。。

 
この状況でも映像を撮っていただくスタッフさんに感謝

 やはり隊列はそのままピットの方へ導かれて赤旗に。乾かす努力をしてはいるものの、本日一番の雨脚を前に焼け石に水状態。結局このままレースは打ち切りで成立となり、エリオットが今季初勝利を挙げました。

 ロードコースでチェイスが勝つだろう、というのは誰しもが思うところでしたが、今回は全く予想していなかった展開で、どちらかというと『気づいたら良い場所でレースが終わった』という感じでした。それでもこの位置に付けていたのは紛れもなく彼の実力であり、ピットにいつ入るかという逆算でも、うまくファイナルステージで前からリスタートできる流れに持って行きました。燃料がヤバかったですけど。

 特筆すべきは打ち切り直前の数周で、どのドライバーもタイムが一気に2分40秒~43台と、それまでより3~4秒落ちたんですが、彼だけは38秒台を維持していて、落ち幅が1.5秒程度しかありませんでした。ロング ランで戦えるようにトラクション重視の車に仕上げてあったんだと思いますが、最後の極端にひどい条件で生きました。
 この数周の速さはレース結果には関係しませんでしたが、一気に2位との差を10秒以上に広げていたので、仮にレースが続いていても、燃費走行で暫くは1周2秒犠牲にしたってすぐには捕まらなかったわけですから、勝利を手にしていた可能性があります。

 ヘンドリックはこれでチームとしてカップ シリーズ通算267勝目。ペティー エンタープライゼスに並ぶ歴代最多タイとなりました。先週の1-2-3-4に続く偉業達成です。また、シボレーにとってカップシリーズ通算800勝目でもありました。
 エリオットのスポンサーであるLlumarですが、イーストマン コダックが創業したイーストマン ケミカル カンパニーが製造している、自動車の塗装面を保護するフィルムのブランド名です。日本では長瀬産業がパートナーとなっているみたいですね。

 ラーソン、ロガーノ、チャステイン、アルメンディンガーのトップ5。6位にチェイス ブリスコーが入って自身初のトップ10フィニッシュ、マクダウルが7位でした。チャステインがちょっと驚きでしたね。カイルはギャンブルに出た直後にレースが終わったので無駄な仕掛けとなって10位でしたが、チャレンジとしては悪くなかったと思います。

 せっかくのロードコース戦だったのに、雨のおかげでレースがわけのわからんことになってしまい、波乱という意味では面白かったのかもしれませんが、やはり勿体なかったなという印象です。ペース的には予選タイムから20秒以上遅いペースでした。決勝のレース ペースがどの程度か分かりませんが、Xfinityでは予選とそう変わらなかったことから推察すると、ドライの115%ぐらいのタイム水準だったと思います。
 せっかくならドライで、あのクソ重たい車がS字区間をどう走るのかを見たかったですね。来年も開催されるでしょうから、その時はすっきり晴れててほしいです。次戦はシャーロット、600マイルです。


コメント

まっさ さんの投稿…
チャステインの大活躍に日本で1番喜んでると自負している私です!!!上手く名前を売れた気がします。
このまま優勝をでスイカを投げて欲しかったwww。

ChaseFun9 さんのコメント…
Chase Elliott! Chase Elliott! Chase Elliott!
そしてHMS 4人5勝!今年は全員勝つとホントは昨シーズンも言ってましたが今季達成で嬉しいです
これだけ早くチーム4人が勝つのも例が少ないみたいですね!

Matt D.は今年も厳しい位置に居ますし枠が減って来てるのもあって初勝利決めて欲しいですね��
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 チャステイン推しがいたw 今回は特殊だったのでロードコースに強いのか、何か上手くハマったのか判別がつかないですが常に上位を争うようになると面白い存在ですよね~
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん

 シーズンまだ半分も進んでないのに4人とも勝ってしまいましたね!しかも4台いたら4台目は必ずハズレになっていたあのヘンドリックが!!w
ケゼロウスキーの移籍の話からどうもシリーシーズンが大きく動きそうなので、Matt Dはその輪の中に入れる戦いを見せてもらいたいです。ウッドブラザーズが残ってほしいと思ってすら貰えないというのが最悪ですからね。今ファン投票でトップ5らしいので人気はかなりあるみたいでそこはちょっと安心してます。
まっさ さんの投稿…
実はチャスティンがHREのドライバー時代にアメリカで彼のカムリを作ったんです...。それ以来日本で1番応援してます。xfinityではハーヴィックをやっつけてバズってますよーーー。
当時からリスタートはめちゃウマ。でも調子が良すぎると空回りしてしまうので...
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 え、ということは、2014年ごろにHREの関係で関わっていたということですか( ゚Д゚)
まっさ さんの投稿…
そうなんです。。ウフフ。
インターンでたった一回のチャンスでしたが。。。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 それは貴重な体験でしたね。記録を見るとこのシーズンに服部さんのところで数名のドライバーが走ったわけですから、そのたった1回のインターンで後のカップドライバーに関係があったというのは貴重な経験ですね。