NCS 第12戦 ダーリントン

NASCAR Cup Series
Goodyear 400
Darlington Raceway 1.366miles×293Laps(90/95/108)=400.238miles
competition caution:Lap30
winner:Martin Truex Jr.(Joe Gibbs Racing/Auto-Owners Insurance Toyota Camry)

 NASCAR Cup Series、来年からの新型車両お披露目会を終えた後に向かう先は、1950年開場のダーリントン レースウェイ。昨年はパンデミックによるシーズン中断が明けた最初のレースとして2連戦が開催され、元々予定されていたサザン500と含めて3回開催されましたが、今年は2004年以来17年ぶりにシリーズに最初から2戦組み込まれています。
 ここ数年お馴染みとなった、昔懐かしのペイント スキーム等を施した車で走る『スロウバック ウイークエンド』はこちらの400マイルのイベントでの実施となりました。誰がどんなイメージなのかはいちいち書いていられないので、詳しくはJayskiさんのサイトへどうぞw


 何年もやってると有名なやつは出尽くした感があるので、みんなかなり『細かすぎて伝わらないスロウバック選手権』になり始めてる感じです。

 そして今回のレース、NASCARは低ダウンフォースの750馬力仕様を選択しました。通常、パッケージは『1マイルより長いか』で判断しているため1.366マイルのここは550馬力仕様でしたが、too tough to tame=手なずけるのが難しい、という愛称に相応しいのはこちらですよね。


 レースはブラッド ケゼロウスキーとケビン ハービックの1列目でスタート。ケゼロウスキーは今回、クルー チーフのジェレミー ボリンズが欠場。『チームのプロトコル』が原因だということですが、詳細は発表されていません。結果から言うと、来週のドーバーも『予防的なチームプロトコル』により欠場となっています。COVID-19関係ならそう言うと思うんですが、何か言えない事情があるのか、全然違う話なのか。。。

 そんなクルーチーフ不在のケゼロウスキーを抜いて5周目に早くもハービックがリード、するとその直後にエリック アルミローラがターン2の出口で回ってイン側のバリアにまっすぐ突っ込みクラッシュ、1回目のコーションとなります。ぐっしゃり曲がりました^^;

 車検に2回引っかかって後方スタートだったアルミローラ。リッキー ステンハウス ジュニアに軽く押された様子。本人によれば、その前の周にステンハウスが軽く壁に当たり、譲ってくれたにもかかわらず、この周のターン1~2で軽く押され、出口でタイトになってスロットルを戻したら詰まって押された、という話。30位以下で終わるのは今季5回目で、選手権で未だ28位です。

 12周目、ハービックは内側を選んでリスタート。2列目のカイル ブッシュがぴったりついて行ってケゼロウスキーからあっさり2位を奪うと、そのまま14周目にハービックもかわしてリーダーとなります。この後マーティン トゥルーエックス ジュニアもハービックをかわしてジョー ギブス レーシングが1、2位。
 一方ケゼロウスキーはスプリッターが路面に当たりすぎて乗りにくくルースだそうで順位をどんどん下げていきました。これはセッティングを外してますね。結局ケゼロウスキーは、この後パッカーを入れたりしたものの一向に直らず、周回遅れでコリー ラジョーイあたりと競争するのが精いっぱい、まさかの3周遅れの24位に終わりました。

 22周目、CMに入った直後にトゥルーエックスがカイルを抜いたと思ったら、カイルの左後輪がパンクしてスピン、2回目のコーションとなり、これがコンペティション コーションと統合されてここから給油可能になりました。カイルはどこにもぶつけずセーブ。カイルのスロウバックは『M&M's 80周年スロウバック』ってこれただの宣伝やんw

 29周目にリスタート、トゥルーエックスの隣はピットで順位を上げたタイラー レディックだったんですが、蹴り出しで遅れてハービックがあっさりと2位。外ラインのグリップがよろしく無いようで、この後も外側リスタートの人は毎回出だしで出遅れていました。

 低ダウンフォースのパッケージではみんなコントロールが難しいようで、前の車を抜こうとしてインに飛び込んだら横を向く車が多発。近年はイン側のバンク角が無いところでもダウンフォースが多くて平気でグリップさせて走れていたので、久々にダーリントンっぽい走りを見ている気がします。絶対こっちの方が面白いので今後もこっちでお願いします。

 ステージが残り30周ほどになるとピット サイクル。リスタートから30周ほど走ったわけですが、ピット前はどの車も動きがよれよれで映像を見ていて「おそっ」と思うほど速度が低下しています。滑りやすい路面と高い路面温度、低ダウンフォースでかなり摩耗がひどそう。

 ロス チャステインが唯一コーション待ちのためステイ アウトの賭けに出ますが絶望的な速度差。トゥルーエックスがかわして見た目上でもリーダーに戻ります。ただ、この後目の前で周回遅れが3ワイドの争いを始めたりしてなかなか抜けず、この間にデニー ハムリンが接近します。

 トゥルーエックスの前方にいる周回遅れというのが同じトヨタのバッバ ウォーレス、その前にいるのはチームメイトのカイルなので、トゥルーエックスはかなり気を使って走っている様子。それでもウォーレスに壁に挟まれかけます、ウォーレスは走るのに必死で気を使えない模様w
 ステージ1はそのままトゥルーエックスが勝利、チャステインは賭けに失敗して周回遅れ、そしてせっかく気を使ったウォーレスはフリー パスを手にできませんでした。こんなことならさっさとぶち抜いたらよかった(´・ω・`)


 ステージ2、トゥルーエックスとハムリンの1列目でリスタート。またもや外ラインは出遅れますが、ハムリンは辛うじて2位を維持。そしてそこから間もなく99周目、コール カスターがクラッシュ。アルミローラと同じ場所で同じように車が壊れました。

 滑って横を向いたアンソニー アルフレードに巻き込まれてウォールへ一直線。スチュワート-ハース レーシングは本日2台目の大破です。カスターはスロウバックではなく母の日を取り上げて『オーナーのジーン ハースの母・マーガレット ハースに敬意を表したスキーム』でした。いつものHAASのフォントで『HAPPY Mother's day』とボンネットに書いてあったんですが、思いっきり潰れました^^;
 昔のダーリントンの映像が映ってましたが、かつてはバリアもコンクリートの塊なので、ぶつかるとウォールが砕け散り、横転した車にウインドウ ネットが無いのでドライバーは体が車外へはみ出る状態。今の安全性に感謝するばかりです。

 105周目にリスタートしますが、今度はフロントストレッチでカート ブッシュがクラッシュしてまたもやコーション。マット ディベネデトーの内側を窺っていたら、後ろのウォーレスに軽く押されてスピン。ウォーレスはフリーパス位置でしたが、事故関係者と判断されてフリーパスは得られませんでした。ちなみにカートはスロウバック不参加の模様w
出火によりカートはそのままリタイア

 ここでリード ラップ車両はピットへ向かいますが、ハムリンはステイアウト。ちょっと油断してたらトゥルーエックスがピットに飛び込んで反応し損ねた感じですが、数周の履歴差がどう影響するのか。
 
 115周目、同じくステイアウトしたチェイス ブリスコーと並んでリスタートしますが、ブリスコーは蹴り出しの瞬間に勝負にならず、ハムリンもまた何の抵抗もできずに一瞬でトゥルーエックスにかわされました。たかだか数周の履歴差なんですが、完全な新品タイヤのグリップ力というのはやはり武器になります。

 この後トゥルーエックスはリードを拡大。2位には走るごとに調子を上げている感じのあるジョーイ ロガーノがつけるものの大きく離されます。ロガーノのスロウバックは『1971年にマリオ アンドレッティーがF1で初勝利を挙げた時のスキーム』。もはやハコ車ですらなくなりましたw
 3位にはスピンによる後退から順位を取り戻したカイル。リード ラップ車両は17台まで減りました。その17台目はMatt Dなわけですが^^;

 ステージ残り43周あたりからピットサイクル、リスタートから見て真ん中分けという感じです。トゥルーエックスはちょっと右前輪の交換で時間がかかっていましたが、リードが大きかったので問題なし。
 ピットを終えると真っ先にピットに入っていた組のウイリアム バイロンがいきなり2位に登場、カイルは一旦ピット後にハムリンに抜かれていましたが、コース上でまたかわして3位継続です。

 結局ステージ2もトゥルーエックスが支配、2位にカイル、3位バイロンでした。ロガーノはピット前は2位だったものがピット後は5位に後退。ハムリンを一旦抜いたものの、ステージ終盤にまた追いつかれてしまい、ハムリンのついでにもう2台行かれてステージ7位でした。このハムリンとの争いは『これぞプロ』という見事な争いでした。


 ファイナル ステージ、トゥルーエックスとカイルの1列目でスタート、ステージ後の無線インタビューの感じではカイルも調子は良さそうでご機嫌でしたね。トゥルーエックスが2タイヤ交換と表示されてましたが明らかに表示ミスでしょう、するはずがないw

 相変わらずトゥルーエックスが逃げてカイルが続く展開。無線ではカイルが次のピットの際にどうやって入ると速いかについてやり取りしている様子。
 さっきのピットでバイロンが一番速かったので、そのブレーキ位置とラインを使うように言われているみたいですが、そういきなりできるもんなんでしょうか?何せ練習走行も予選もやってないので、ピットに最適に入る攻め方なんで完全に勘でしょうからねえ。やり方変えて速度違反したらシャレにならないしw

 しかしピットの入り方がどうとかいう問題が関係ないほどトゥルーエックスは逃げていって5秒以上のリード。そしてこのステージは1ストップではとてもタイヤがもたないので2ストップ。残り70周あたりで1回目のピットサイクルとなります。
 ピットからの情報では多くがルースに苦労している様子。ロガーノは「今まで乗った車で一番のルース」。ジェフ ゴードンの解説だと、ここは路面温度が下がってくるとリアよりもフロントのグリップの上り幅が多いそうで、そこに低ダウンフォース仕様が拍車をかけているようです。いやあ、楽しいですねえ(ゲス)

 ピット後の第2スティントではカイル ラーソンが上がってきてカイルを抜き2位へ。ここまでステージ順位は4位、5位。ロング ランで速いけどリスタートではちょっと抜かれる、というのが今日の流れで、ロングランが続いているので上がってきました。とはいえトゥルーエックスは3秒以上前方。時々バリアに当ててる人がいますが、コーションは出ないままレースは終盤へ。

 残り38周あたりから再びのピットサイクル。さっきのピットから30周/15分ぐらいしか走ってませんが、他のカテゴリーに置き換えたらこんな間隔でタイヤ交換とかかなり異質です。GT SPORTのレースの感じに近いですね。

 ピット後にラーソンは猛追、イン/アウト ラップを攻めたと思われますが、さらにタイヤを使って一気に距離を詰め、残り30周でとうとうトゥルーエックスの1秒以内に踏み込みます。しかも前には周回遅れがたくさん。ちなみにラーソンのスロウバックは『自分が初めてレースしたゴーカートのスキーム』。調べてもそのカートの写真が無いから何とも言えませんが、思い出深いもので、かつ再起をかける彼に原点は重要なんでしょう。

 ラーソンの姿が急に大きくなって一瞬トゥルーエックスも焦ったように見えましたが、さすがにいつまでも勢いが持続するわけではなく、勢いが収まるとしばらくは0.5~1秒の差で膠着します。一旦流れが止まれば逃げてる側が有利なことが多いですね。

 残り10周ほどでは、周回遅れにするにも厄介なライアン ニューマンが登場、しかもタイラー レディックと争ってるのでそうそう譲ってくれそうになく、ラーソンにとってはこれが最後のチャンス!
 トゥルーエックスは取り囲まれたり、ちょっと突っ込みすぎたり苦戦しましたがここを何とか通過。すると自分はなんとしても引っかかりたくないラーソン 

 なんと2台の間に割って入り一気に抜いて行きました、気迫を感じます。しかしこれでもう息切れ、最後はトゥルーエックスが2.5秒ほどの差をつけてラーソンを下し、3ステージをスイープしてダーリントンを制しました。

 トゥルーエックスのスロウバックは、ファニチャー ロウ レーシング時代のマット ブラックの車両をイメージしたものということですが、今日の速さは確かにコカ コーラ600で392周をリードして勝ったあのイメージに近い圧倒的なものでした。
 唯一ケチをつけるなら、FRR時代もオート オーナーズのスキームは青系統の色なので、スポンサーと色の組み合わせが全然合ってなくて違和感しかなかったことです(。∀°)

 ラーソンは2位でしたが、これまで2マイルには強くてトラックが小さくなると弱くなる傾向にあったのが、1.5マイル規模で、しかもロングランで安定して速いので、本人の腕とチーム力が合わさって良い化学変化を起こしてるような印象を受けました。カイルも悪くなかったですが完全なペース負け、こういう日もあるでしょう。
 4位のバイロン以下は15秒以上1位から離されて別次元のレースでしたし、終わってみたらリードラップ車両は9台だけでした。クリス ブッシャーが9位で、やはりこういう滑りやすいトラックでロングランやらせると相対的に普段より成績が上がる傾向にありますね。彼もあと何かもう1つ欲しいんですが、今のラウシュ フェンウェイではなかなか難しいでしょうか。
 
 ディベネデトーはじりじり下がって3周遅れの19位。ダーリントンは通算4回以上出走経験のあるトラックとしては自身で3番目に平均順位の高いトラックだったんですが、今日はあまり速さがなくロングランもダメでした。悪い日に悪いなりの順位に留めるのも仕事ですが、チャステインあたりとは争えていたはずなので、15~18位の2周遅れの争いにはなんとか加わっていたかったですね。

 中盤に似たような事故が続いた以外は、結局ステージ2終了のコーションを挟んで170周ほどコーションの出ないレースだったので、スロウバックの思い出話をしているだけで終わった感じでしたが、壁にうっかり当たる人は結構多かったので、プレイオフで行われる秋のレースはもっとハゲしくなるんじゃないかと思います。高ダウンフォース仕様に戻さないでね!

 次戦はモンスター マイル・ドーバーです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
スローバックを追いかけてたら、優勝経験のないドライバーまで出てきて、誰?って感じで。マリオ・アンドレッティはビックリしました。1971年の南アフリカGPだから、フェラーリに乗ってた時代ですね。次戦がドーバーで次がCOTAだから、そのプロモーションも兼ねてるのか?なんて考えてしまいました。CMが流れて、実況もフォーミュラーワン・トラックなんて言ってましたしね。確かに箱車ですらないw。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 スリックジョンソンなんて、ゴードンが「スリックが名前なの!?」って言ってたぐらいなので(実際は愛称だけど)、知名度はきっとそれほどではなく、地元サウスカロライナで特別有名だった、という感じでしょうね。
我々も含め、誰だろうと気になって調べることで知る功績だったり、事故だったりというのはあるので、知らない人をあえて探すというのも価値があるなと思いました。数年したら「1992年のマンセル」みたいなことになってたりしてw