ついにお披露目されたNASCAR Cup Seriesの新車・Next Gen Car。今のところオートスポーツwebさんでは全く相手にされていないようでションボリですが、詳細はメモっておかないとそのうち忘れるに決まってるので、発表された内容をここにざっと記録しておくことにします。
昨日は主に外観の話と作った人の声をそのまんま掲載しましたが、ここではついでにレースへの影響も勝手に考えてみたいと思います。
・全長 193.4インチ(491mm)
・全幅 78.6インチ(1996mm)
・全高 50.4インチ(1280mm)
・ホイールベース 110インチ(2794mm)
・重量 3300ポンド(1496kg)
・スポイラー コースによって変更し後日決定
・車体 フラップ システムを組み込み、左右対称、カメラ取り付け、各メーカーのデザインが施された左右対称の複合体ボディー
・車体下部 センター ステップ スプリッターとディフューザーを備えたフル カーボン アンダートレイ
・チャシー スチール チューブに前後ボルトオンのパイプフレーム構造
・トランスアクスル 5速シーケンシャルトランスミッションとプレート式LSD
・サスペンション 前後ダブル ウィッシュボーン方式
調整可能式ショック アブソーバー
・ステアリング ラック&ピニオン式
・ホイール 18インチ径 12インチ幅 アルミホイール
・タイヤ グッドイヤー イーグル
・ブレーキ フロント:6ポット キャリパー/15インチ ローター
リア:4ポット キャリパー/14インチ ローター
・エンジン 排気量358キュービック インチ(5866cc) 自然吸気
出力はトラックによって後日決定(670馬力と550馬力の2種類の可能性)
・燃料供給方式 インジェクション
・オイル供給方式 ドライ サンプ
・エンジン冷却 空気はラジエーターを通ってエンジン フードから排気
・エキゾースト 左右分割/側面排気
・燃料タンク 20ガロン(75.7L)
とこういうことになります。リアのサスペンションが、左右の繋がった車軸懸架から一般的な独立懸架に変わったので、今まで存在していたトラック バーは必然的に無くなってしまうので、アジャストはウエッジだけになると思われます。
ルーフはGeneration-6より約1.5インチ低く、全長は6インチ短くなりましたが、ホイールベースは同じ、全幅は1.6インチ拡大されているそうです。
ホイールが従来の15インチから18インチに拡大され、それに伴ってブレーキも従来の12.7インチから大幅に拡大し性能向上。ローターは高速オーバル用と低速・ロード コース用の2種類が用意されます。
ホイールの大径化に伴って、5穴のナットでは負荷に耐えられないためナットはセンター ロック方式へ変更。またNASCARによれば、タイヤの扁平率が下がるので、そのぶん従来より柔らかいコンパウンドのタイヤが導入可能だそうです。
エンジンの吸気は、従来はエンジンのフードの上、ハービックの車で言えば犬の頭の部分にある横長の四角い部分(赤丸で印をつけた場所)が吸気場所でした。ラジエーターの冷却風はグリルの下部からとっており、グリルじたいは見かけだけで塞がっていましたが、Next Gen Carではエンジンの吸気がグリルになります。
また、ボンネット上には冷却風を抜くためのルーバーが配置され、だいぶ他のカテゴリーの車の見た目に近くなりそうです。従来は冷却口を大きく採ると、ボンネット内で下から上に空気が突き上げる力が働くのでダウンフォースが失われてましたが、この辺はどうなるでしょうね?
左右対称というのが強調されていますが、以前に書いたことがある通り、オーバルでは車体の左右を既定の範囲内で僅かでも非対称にして、真上から見た際に例えるならバナナのような形状になっていて、これでダウンフォースの側面バージョンである『サイドフォース』を生み出そうと各チームが必死に研究しています。
新規定はサプライヤーから与えられる車体なので従来のように自社製造ではなく、外販に手を加えられる要素はより限られます。また、サスペンション類もいくつかのパターンが供給されて、そこからチームが適宜選択することになるので、ロード コース用に何か特別に手を加えるとか、そういうことも基本的に無くなって、購入したものから最適なものを選び、そこからセッティングで仕上げるのが基本になりそうです。
(もっとも、そこからさらに何かを見つけてくるのがNASCARチームなので油断はできないが)
基本的に車両の地上高も上がり、映像を見る限りではスポイラーは非常に小さくて、一方でフロアにはディフューザーを備えたので、過度なダウンフォース量の変化、床下からのダウンフォース発生の依存度を下げつつ、ディフューザーで安定したダウンフォースを生むことで接近戦を作りたい意図を感じます。
なお、今回の質疑応答などで出た情報を見ると、ハイブリッドは2023~2024年に導入される可能性があるようですが、いわゆる簡易ハイブリッドをサプライヤーから供給されるだけになると思われるのと、高速トラックではあまりブレーキを踏まないからそもそも回生する場所が無い=ほとんどモーターは役に立たない可能性が指摘されています。
個人的に一番興味深いのは、今の車両は扁平率の高いタイヤに、規則では高く設定された静止状態での地上高と下面ダウンフォースの重要性が合いまった結果、1500㎏の車を支えるにはあり得ないほど柔らかいサスペンションで、ダウンフォースでグチャっと車を縦に潰し、それで走行中の車高を下げるという特殊なセッティングが行われているので、これがどう変化するのか、ということです。
そのおかげで今の車って基本的にバンプに乗るとバインバインと揺すられて跳ねるような面白い動きをしていて、これもある種NASCAR独特の面白さでしたけど、もうちょっとカッチリしてくるんでしょうかね。
そして、まあ見てもしょうがないんですが、各部品の供給メーカーも公開されています。せっかくなので書き写してみました。知ってるのはトランスミッションとかダンパーの会社ぐらいですかねえ。
・ブラダー燃料タンク:エアロ テック ラボラトリーズ
・ブレーキ システム:APレーシング
・衝撃吸収材:ボールド スポット スポーツ
・ホイール:BBS オブ アメリカ
・ラジエーター ダクト:ダラーラ
・トランク、屋根、ヘッドカバー冷却ダクト、車体下部:ファイバーワークス コンポジット
・ドア、フェンダー、前後バンパー カバー、燃料アダプター、クオーター パネル、後部ドア クラッシュ パネル、ホイール カバー、窓:ファイブ スター レース カー ボディーズ
・タイヤ:グッドイヤー
・スプリング:ハイパコ
・バンパー:カーキー レーシング ファブリケイション
・プロペラシャフト:レンタス コンポジッツ
・デジタル計器、ECU:マクラーレン
・ダンパー:オーリンズUSA
・排気管:プロ-ファブリケイション
・オイル クーラー、ラジエーター:PWRノース アメリカ
・ホイール ナット:RCRマニュファクチャリング ソリューションズ
・グリーンハウス、ブレーキ ダクト、前部ドア クラッシュ パネル、前部排気管カバー、パッケージ トレイ、ルーフ ハッチ、ルーフ フラップ、スポイラー ベース:ラウシュ アドバンスト コンポジッツ
・アンチ-ロール バー、シフター、トランスアクスル マウント、アップライトとハブ:ラウシュ イェイツ マニュファクチャリング ソリューションズ
・燃料アダプター/カプラー:シュルツ エンジニア―ド プロダクツ
・燃料:スノコ
・チャシー:テクニック チャシーズ
・ウインドウ ネットの組み立て、補修:サーマル コントロール プロダクツ
・コントロール アーム:ビッサー プレシジョン
・ステアリング ラック、ステアリング シャフト:ウッドワード マシーン コーポレイション
・クラッチ シャフト、ドライブシャフト、トランスアクスル:エクストラック
ブラダー燃料タンクというのが何ぞ?という話ですが、燃料タンクはガッチガチの金庫みたいなところに入っているのではなく、箱の中に伸縮性のある素材でブラダー=膀胱のような袋状のものを用意し、その中に燃料を入れています。
余談ですが、燃料と袋の組み合わせによってはブラダーを侵食してしまうことがあるようで、昨年のF1でのロマン グロージャンの火災事故では、そもそも事故前の段階でブラダーが傷んで、燃料が僅かに染み出したり、その直前で容易に出火しやすかったのではないか?とする見方も調査報告書からは読み取れるそうです。
ルーフフラップがラウシュによって手掛けられたという話は以前に書いたことがありますね。いかんせん競技車両の各箇所の名称には詳しくないので、誤訳してたり、そのままカタカナで書いてしまっていて日本だと良く分からない言い回しかもしれません^^;
方向性としてはSUPER GTのClass1規定と同じなわけですが、発表と同時にこうして何をどこから買うのか全部明かして、開発者の話でも「みんなで協力した」というのを前面に押し出すのが、シリーズの運営方針の違いか、文化の違いか、大きくやっていることが違うなと感じます。
GT500だと、かなり多くの共通部品があるわけで、調べたり専門誌を読めばそれなりの情報は出てきますけど、普通にファンが接するレベルの範囲の情報では、何が共通で何が共通でないのかもたぶん分からないでしょう。あくまで「市販車を改造して独自の車でレースしている」というお題目を、SUPER GTは崩したくないから大っぴらに表に出すことはしないのかなと思います。
逆にNASCARは巨大ビジネスなので、こうした事柄でもきちんと企業名を公表するというのも運営に求められる重要な仕事なんでしょうね。
コメント
単に相見積もりして安いとこに決まっただけかもしれませんが。
真の意味でストックカーが復活する来季が俄然楽しみになってきました(っ ◠‿◠ c)
カムリも真の意味でストックカーを体現するべく、FRの特別仕様車を出さなければいけませんよね(っ ◠‿◠ c)
ウルミコス号も相見積もりして色んなところから部品調達してみてはどうでしょう(っ ◠‿◠ c)
たしかに、トヨタブランドのセダンからはFRは消滅しましたけど、レクサス用のFR車台はあるんだから、TRDカムリという別のシリーズを売ってみるのも面白いかもしれませんね。案外待ってる人がいるかも?