FE 第7戦 モナコ

ABB FIA Formula E Monaco E-Prix
Cuircuit de Monaco 3.33km
45minutes+1Lap
winner:António Félix da Costa(DS Techeetah/DS E-Tense FE21)


 FE第7戦はモナコ。パンデミックの影響も相まって2連戦が多いシリーズとなっているフォーミュラEですが、ここは1戦だけです。
 以前にモナコで開催した際は、F1のレイアウトから大幅に切り取った『なんちゃって』な仕様で見た目ががっかりでしたが、今回はほぼF1と変わらないレイアウト。1周が長いとどうしてもレースが大変なので当初は長くできなかったんでしょうが、『フル』で走れるようになったんだなあ、とシーズン1からのファンである私には感慨深いものがあります。
以前のレースでは通らなかった『ボウ リバージュ』


 FE的にも、モナコの有名な光景を背景にしたレース映像はプロモーションに極めて役に立つでしょうから、たぶん気合いが入っていると思います。全くの余談ですが、ちょうどピット前のストレートのあたりには、Planet Sushiという寿司屋さんがあります。フランスで流行ってるらしいですが、日本人のレビューを見ると案外おいしいみたいなので、話のネタに現地観戦の際には立ち寄ってみても良いかもしれません。

 唯一F1と異なるのがヌーベル シケインの出口で、本来ならトラック リミットは当然アウト側のガードレールですが、このレースではその内側に縁石が設けられて道幅が狭められており、並んで走ろうとするとたぶん1台しか通れないと思います^^;
妙に狭いシケイン


 予選、スーパー ポールでは日産のオリバー ローランドにちょっとした悲劇。進行がやや押していたことから、スーパーポールのセッションが予想外にいきなり開始され、ローランドによれば、「1分前にいきなり開始だと言われて、急いでそこから車に乗ってピットを出た」ものの、ピットを出る直前に時間切れで出口の信号が赤に。
 これでローランドはタイム無しの6位スタートとなりました。日産e.damsはこのレースから新しいパワートレインを投入し、いきなり1台をスーパーポールに送り込んだのに、、、無念です。
 PPはアントニオ フェリックス ダ コスタ。テチーターは好調なようで、ジャン エリック ベルニュも4位からのスタート。
 一方選手権リーダーのニック デ フリースは、シケインでステアリングを切って片手になったところでボタンを誤爆、250kwの予選モードから200kwの通常モードに切り替わったらしく、この先が遅くなってまさかのビリ。このためか、ユニット交換して決勝はグリッド降格+消化しきれないのでピット通過ペナルティーです。

 前戦で、レース終盤のSC導入でエナジー管理がぐちゃぐちゃになったことからレギュレーションが変更され、SCがレース残り5分を切ってから退出する際には、1分=1kw(約2%)のエナジー削減は行わないことになりました。
 といって最新版の競技規則を見ても、該当する変更部分が見当たらなかったので、具体的な条文の原典を見つけられておらず
『5分を切って再開する時は一切削減しない』なのか『5分を切ったら、その先の時間の分はカウントしない』なのかが判然としないんですが、
従来の『必要があればエナジー削減は取り消すことができる』に具体的な要件を追加したということなら前者なんでしょうね。さて、早速出番は来るでしょうか。

 決勝、中団の争いが多少ガシャガシャしつつもヘアピンまで進みましたが、狭いヘアピンに集団で突っ込んだら玉突き渋滞が発生。アレクサンダー シムズの車をパスカル ベアラインが踏みつぶして乗り越えていくという、およそF1では考えにくいことが起きました^^;

 結局シムズもベアラインもリタイア、とはいえ人的被害はなく済んだんですが、ヘイローがなければ普通に考えて危険な事故。そのせいなのか、ここは引きのこのカメラしか用意してないせいなのか、リプレイがありませんでした^^;
 改めて映像を見ると、ベアラインがヘアピンの入り口で軽くシムズに追突。同じタイミングでセバスチャン ブエミがちょっと強引にヘアピンで内側に飛び込み、この2人をまとめてかわします。
 が、抜いた後、まだ右後ろにシムズがいるのを割とお構いなしにアウトへ向かって立ち上がったのでシムズが割を食ってしまい、行き場が無いのでアクセルを戻したらベアラインが押してしまって壁にドン。で、ここで渋滞・玉突きになって、後ろからもおされたベアラインがシムズの左側を踏んで行ったという流れでした。驚きなのは、これでも次の周には車が撤去されていることでした。


 一方上位勢は順位通りの争いで、ダコスタをロビン フラインス、ミッチ エバンスが追っています。今回アタック モードはターン4・カジノの外側のすごく変な場所にあるので取りに行くとロスは必至。その手前のターン3・マスネの右側にタクシー待機レーンがあって路面が緑色に塗られているので、一瞬こっちがアタックモード取得位置かと思ってしまいます^^;

 開始5分、フラインスがダコスタをターン1でかわしてトップに。しかし縦一列の状況はそのままなので、これではアタックモードはなかなか取りに行きズラい状態です。

 いつも通り後方からアタックモードを使っていき、13分ほどで2位のダコスタが上位勢で最初にアタックモードを使います。これで一旦4位に落っこちますが、この直後に目の前でベルニュがエバンスを抜こうとしてヌーベルシケインで並走し大失速。
 もつれる2台をまとめてかわし、ダコスタは労せずして2位を取り戻すラッキーな展開。これを見てフラインスも翌周にアタックモードへ。これでダコスタが見た目上トップとなりますが、この後ダコスタのアタックモードが切れたところでフラインスが抜き返して、1回目のサイクルは終了します。

 この1回目のサイクルで順位争いがハゲしくなったので全体がややばらけ、これを好機と見たフラインスはさっき終わったばっかりなのに早くも2回目のアタックモード。一旦ダコスタに抜かれたものをヌーベルシケインですぐに抜き返してほとんど損失も無い状態です。
 ダコスタはこうなると完全にサイクルをズラして使ってくるのかと思いましたが、すぐ翌周に使用してカウンター。ラインに戻ったところでエバンスとの争いになりますが、ここを耐えて順位を1つ下げただけの3位に落ちます。前にいるのはチームメイトのベルニュ。
 このパターンで、戦略が違うのに無理に争って同士討ちすることが多いテチーターの悪童コンビ。今日もやらかすのかと思ったら、翌周にベルニュは譲るついでに2回目のアタックモードへ。ところが、どこかの検知点を通れなかったようで起動失敗。なぜかうまくいかないぞこのチームw

 ダコスタは再度フラインスに接近し、あとはアタックモードもない正面からの争い。ただダコスタにはファン ブーストがあり、そしてアタックモードのサイクルをズラしているミッチ エバンスが3位で猛追。
 待ってる時間はない!とばかりに、残り16分、トンネル内でダコスタがファンブーストを使ってシケインで追い抜き1位へ。しかしこの争いでエバンスは完全にこの2台の背後につき、この次のストレートでフラインスを、さらにリバージュの上り坂でダコスタを立て続けに抜き、あっという間に1位に躍り出ます。F1ではあり得ないごぼう抜きw
 リバージュは全開区間ですが左右に道が曲がっているので、レコード ラインを通っている風に蛇行して後ろの車をブロックすることもできてしまいますが、エバンスは覚悟を持ってここで並んでいきました。ダコスタも入られると察したら変な動きをしなかったのでお互いお見事でした。


 そしてその直後、ターン1で壁にぶつかったレネ ラストがリバージュの途中で止まってしまいSCとなります。コース上のあらゆる箇所で、何か起きても魔法のように車が消え去るモナコですが、ここは崖なので横からクレーンがひょいっと登場するわけにいかず、マーシャルが手押しで坂の下まで連れていくしか方法なし。こりゃ時間かかります^^;

 残り6分でリスタート、エバンスとダコスタの優勝争いが激化します。エバンスはエナジー残量が後ろの人たちより1%少ない状態なので鬼ブロック、さっき親切にしてくれたダコスタに完全に恩を仇で返しています。ここは絶対抜けないモナコモンテカルロ!

 残り1分、デフリースがシケインの先で止まってしまいますが、車を置いたまま黄旗でレース続行。これでシケインの入り口のポストから先が黄旗区間となり、ダコスタは抜きどころを一か所失います。

 そして最終周、リバージュでラインを空けると見せかけて閉めたエバンス、あとはシケインぐらいしか抜けるところが無いけどそこはイエロー。エバンスが鬼ブロックで逃げ切るかと思ったら、ヘアピンでレース コントロールからの無線「17番は動いた」。
 モナコの魔術か、デフリースがいなくなって黄旗が解除になりました。これで勝負どころが復活したダコスタ。もう残量が無くて早めにアクセルを戻すしかないエバンスをシケインの入り口で捉えて外からかわし1位を奪取。

 そのまま最後まで逃げ切りました。エバンスの方はもう残量が無いので完全な通せんぼじじいになっており、プール横のシケインは後ろから押されてしまって曲がれず通過してしまい、最後は惰性でチェッカーを受けましたが、それでもなんとか残量切れは免れたようで3位。
 エバンスじじいにイラつかされたであろうフラインスが2位となり、あら、終わってみたら1~6位までスタート順位と同じではないですかw ベルニュは2回目のアタックモードを撮り損ねた後にSCになったのでかなり厳しい状況かと思われましたが、なんとか自力で順位を取り返しました。

 F1より20秒ほど遅い車なわけですが、見ている分には決勝でも決して遅いというイメージはなく、やはり狭い市街地特有の緊張感と近さがあれば、絶対的な速度よりも接近戦の内容が見た目を左右するように感じました。そして、普段の市街地レースと比べて、いかにここの舗装が滑らかであるかよく分かりました。

 エバンスにとっては、1位に躍り出た過程は見事でしたが、その後の展開がやや不運でした。追い上げにかなりエナジーを消費してしまったので、これを何周かにかけてちょっとずつ帳尻を合わせて行かないといけなかったわけですが、SCが出てしまって残り周回数が減ったので、これを少ない周回数でこなす必要が出てしまったことが1つ。
 そして、もし回収がもうちょっと長引いていれば、リスタートが5分を切ってからだったので、新規定によってエナジー削減が行われないと思われるので、こんなに苦しむこともなかったはず、マーシャルさんの懸命で迅速な手押し作業は、エバンスにはマイナス要因でした。
 さらに、シケインの抜きどころが黄旗で潰れたかと思ったら、最終周、自分たちが現場に到達するちょっと前に車両が撤去されていました。まあそもそもあの状態で普通はレースしちゃいかんわけですが、FEあるあるです。

 逆にダコスタからすると、アタックモードを使った時にうまく前に詰まらず走れたことと、2回目の起動直後にエバンスをギリギリ退けられたことが効いたと思います。場面場面で不利になりそうな状況があったところをうまく切り抜けられたことが最後に繋がったと思います。
 最後に色々あったので忘れてしまいそうですが、こうして全体を改めて振り返ると、誰が勝者だったかはどこか1箇所の動きが違っただけで全く変わったような気がしますね。

 天気も良かったですし、非常に素晴らしいイベントになったと思います。次戦はメキシコのプエブラ、1か月以上間隔が開きます。

コメント

okayplayer さんの投稿…
やっと今観れました!
1周目はコレどうなるんだと思いましたが、その後はめっちゃ面白かったですね〜
FEの奥深さとドライバーの腕が凝縮されたレースな感じがしました
F1と比べてこんなにモナコが面白く感じるとは!

しかし他でまぁまぁトラブルあった割には今回のベルニュ先輩ちょっと丸かったんじゃ無いですかね笑
SCfromLA さんの投稿…
>okayplayerさん

 やっぱりモナコで走るとドライバーもちょっと『聖地』的なイメージで気が引き締まるんじゃないですかね 笑
バレンシアでちょっと問題があった後のレースだけに、汚名返上ではないですけど良さの出たレースが運営されてファンとしてもホッとしました。