F1 第4戦 スペイン

Formula 1 Aramco Gran Premio De España 2021
Circuit de Barcelona-Catalunya 4.675km×66Laps=308.424km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W12 E Performance) 

 F1第4戦スペイン。お馴染みのカタルーニャ サーキットですが、今回ターン10が改修されました。これはFIAと、2輪レースの国際組織であるFIMの共同の事業で、主に2輪のレースで事故が増えていることが原因とのこと。
 元々緩めの中速コーナーだったものを2004年にV字の低速に作り替えたんですが、これをまた緩いコーナーに変えて、ちょうどその2つの中間ぐらいの曲がり方のコーナーになりました。元々アウト側には大きい旋回半径のヘアピンがもう1個ありましたけどね。
 で、ついでに追い抜き機会も増えるかも、とFIAは言ってるみたいですが、どう考えてもF1で走る分には関係無いと思いますね。


 予選、Q1では角田 祐毅が0.007秒差で脱落し16位で順位確定。すると思わず無線で悪態をつき、車に矛先を向けたために批判されることになります。
 元々学習・課題解決の早さが評価されており、それが弱小チーム・イェンツァーでのF3、短期間で戦わないといけなかったF2で結果を残し、F1に呼ばれた要因の1つですが、今は課題が分かってるのにそれができずに課題のままになっていることが自分で腹立たしいのかなと感じます。
 アルファタウリはピエール ガスリーもQ2で0.016秒差で敗退。アルピーヌがちょっと上がって来たので、中団争いではやや苦しみだした感じです。

 Q3ではルイス ハミルトンが1回目のアタックでマックス フェルスタッペンを0.036秒差で退けると、2回目は思ったほど各ドライバーのタイムが伸びずそのまま決着。ハミルトンは通算100回目のPPを獲得しました。
 過去の選手と比べて良いの悪いのという話には私は意味はあまりないと思いますが、じゃあ例えば今のハミルトンみたいな条件で走らせてもらえたとして、チームメイトに勝ち続けて、勝っても意欲を失わず向上を続けられる人が残る19人の中に何人いるかと聞かれたら、おそらく数名だけではないかと思うので、そこが誇るべき点ではないかと思います。
 そもそも100回のPPって、いくらレース数がむちゃくちゃ増えたとはいえ途方もないですね。だってF1に100戦=5年間シートを得続けるだけでも決して簡単ではないんですから。。。
 一方セルヒオ ペレスはやらかしてしまいました。Q3の1回目のアタックで、外側に車を寄せすぎて砂を踏んで自爆(。∀°)

 2回目のアタックも今一つで予選8位。ペレスがリアの不安定な車と合ってないんじゃないか?というのは以前にも書いたと思いますが、特に高速でちょっと減速を入れつつ前荷重で「エイヤッ」と曲げるコーナーだと、どうしてもすっ飛ぶ気がして攻めきれないんじゃないかと感じます。完全にガスリー、アレクサンダー アルボンの3の舞を演じている状態です。彼らがどうというよりフェルスタッペンが特殊すぎるんですよねたぶん。
 バルテリ ボッタスが3位、シャルル ルクレールがまたもや4位となっているので、レッド ブルは今日も1対2での争い。こうなったら勝つためには、スタートでフェルスタッペンがハミルトンのウイングを踏んづけるか、ルクレールがスタートでボッタスを抜いて、ボッタスもいなくなって『サシ』の勝負になるのを期待するしかありません。


 決勝、曇っていていくぶんタイヤの消耗は助けられそうな気象条件でレースが始まります。抜けないけど左側のタイヤ摩耗はハゲしいこのコース、たいていの場合、速いのは2ストップ、でも抜けないからやりたいのは1ストップです。
 蹴り出しで少し良かったフェルスタッペン、ターン1でハミルトンの内側をついてまずは自分の任務を果たすと、ルクレールはターン4でボッタスをかわして、見る側にとっては期待通り(?)メルセデスが分断されます。上の文章、スタート前から仕込んでたんですよ、念のため。


 ハミルトンはイモラでのスタートに続いて、またもフェルスタッペンにウイングを踏まれそうになりましたが今日は見切って回避。その回避行動でボッタスはハミルトンに詰まってしまいルクレールに刺される要因になったので、ある意味フェルスタッペンは自分で2台仕留めた形です、ちょっと荒っぽかったですけどね^^;

 7周目、角田がターン10の手前で突然トラブル発生で車両停止。急なことでコースの端っこに止まることになったので、これではどうしようもなくSCとなります。角田は前日の失敗を取り返す機会を早々に失ったので、次戦までちょっとモヤモヤが残ったまま過ごすことになりそうです。
 燃圧の低下が原因で、なぜそうなったかは調査中だそうですが、そもそも角田の前日の発言には、車の調子が何かガスリーとは違うのでは?という疑念が伏線にあった模様。実は壊れる前から僅かながら性能で問題があった、というならある意味で落着ですが、そうでないと角田的には、不可抗力であってもさらにストレスが溜まる状況です。まあそれも含めての競技なので、それに耐えられなければ生き残れはしないわけですが。


 外見的には壊れていない車両をコース外へ連れて行くだけなので作業はささっと終わり11周目にリスタート。いつも通り抜けないコースなのでフェルスタッペンとハミルトンの差は1~1.5秒差で膠着。ルクレールとボッタスも1秒差で膠着しています。

 21周目あたりからピット サイクルとなり、23周目にボッタスがピットへ。24周目にはハミルトンが一気にフェルスタッペンに近づいて重圧をかけ、フェルスタッペンに先にピットに入るように仕向けます。ハミルトンはステイ アウト。

 レッドブルは連係ミスでタイヤが用意されておらず作業に時間がかかってしまいます。ハミルトンには思いがけずオーバーカットのチャンスが訪れたかに見えましたが、ちょうど周回遅れに詰まるタイミングだったのでステイアウト継続。同じく、ボッタスに間違いなくアンダーカットされるルクレールも引っ張っていて、2台はSC待ち兼後半勝負の考えです。

 28周目、残ってた2人もピットへ。ハミルトンとしてもこれ以上引っ張るとボッタスにアンダーカットされてしまうので限界でした。ボッタスには無線で「ルイスについて行って、フェルスタッペンを捕まえるぞ」と伝えられますが、言われてできるんならとっくの昔にやっとるわい!とツッコミを入れたのは私だけではないはず。

 ハミルトンは早い段階からタイヤを使ってフェルスタッペンを追い上げていき、36周目にはDRS圏へ。このコースは抜く気が無ければ1.5~2秒離れておかないとタイヤによろしくないとされてますので、それをここまで踏み込むということは多少のリスク覚悟で揺さぶりに行ってますね。
 一方ボッタスへの無線は「フェルスタッペンより0.2秒速い。最終周にフェルスタッペンに追いつくぞ」。気が遠い!

 42周目、後ろからつつき続けたハミルトンがいきなりピットへ転進、2回目のピットでミディアムの2セット目投入。2年前のハンガリーで見た光景、フェルスタッペンはもう今からピットに入っても仕方ないし、そもそもミディアムは今使っているやつしか持っていないので1ストップで縛られてしまい、見えない競争が始まります。

 フェルスタッペンへの無線は「ハミルトンが最終周に追いつく」。・・・そうすると最終周にボッタスとハミルトンが一緒になって追いつくのか?あ、ボッタス離されてるからもう計算狂ってて無理だわ・・・^^;

 52周目、ハミルトンがボッタスに追いつきました。無線でボッタスに対しては事前に「ルイスは別の戦略で1分21秒台で走っている。彼は勝利のためにレースをしている」と、要するに邪魔しないよう伝えます。この言い方は逆を言うと「お前は勝てる機会なし」と言ってるようなものなので結構残酷(。∀°)
 そして53周目にハミルトンは完全に追いつき、「ルイスを抑えるな」ともっと直接的な表現が出ますが、ボッタスが半周ほど粘ってしまい、この間フェルスタッペンがちょっと逃げました。トト ウォルフも何とも言えない表情です。
トト(・・・今度から若手にはまず道の譲り方教えなあかんなあ)


 ハミルトンはここから仕切り直し、ファステストを出して残り12周で8.3秒差。一方のボッタスは2回目のピットに入ってソフトへ交換。だったら詰まる前にそうしとけばよかったのに、ちょっとフェラーリ的展開です。そういえばここでフェラーリがぐちゃぐちゃな戦略で時間を浪費してたレースありましたね。
 
 59周目、とうとう1位争いは1秒以内へ。フェルスタッペンは直線でやったらあかんレベルの蛇行をしますが、それでも全くDRSを使ったハミルトンに抵抗できず逆転。ハミルトンがトップに立ちました。今度はトトさんガッツポーズ。

 フェルスタッペンは抜かれてしまったのでファステスト狙いでピットへ。ボッタスが来ていればこういうことができないんですが、ちょうど周回遅れの10位争いの大集団に取り囲まれている最中だったので楽々フリー ストップでした。

 ハミルトン、メルセデスとの強固な体制を印象付けて今季3勝目、通算98勝目。ポール トゥー ウインは59回目です。
 イモラまでの2戦では、ハミルトンには昨年までにはない、以前ロズベルグとハゲしくやり合って劣勢だった時に似た余裕の無さが見えましたが、このレースはスタートも無理に抑えないし、寄せられても意地は張らないし、そしてきっちり自分が勝つために必要なレースを確実に進め続けて成功させました。
 ミディアムを2セット持って、戦略上の幅があったことで気持ちにゆとりがある、なんてところまでドライバーはさすがに考えられない気がするんですが、何かポルトガルの前にメンタル面で整理整頓をし直したのかな、という去年までの姿でした。

 レッドブルとすると、手持ちのカードが弾切れになってしまってお手上げだったわけですが、やはりペレスがいれば、というのがあります。今季初めて1周目に順位を上げて帰って来たペレスではありますが、それでも6位でなかなか前には進めずに結局5位。たとえフェルスタッペンに追随できなくてもハミルトンのウインドウ内にいればいくらか牽制になるんですが、全く姿が見えないとなるとチームとして辛いものがありました。

 結局ペレスは5位で、4位にはスタート順位を守ったルクレール。チームメイトのカルロス サインツは7位でしたが、母国GPで入賞率100%という記録は継続しました。一方でフェルナンド アロンソは最後にタイヤがなくなってヘロヘロになり、転がり落ちるように17位でフィニッシュ。母国の力は発揮できませんでした。
抜かれまくるアロンソさん


 ガスリーはスタートでうっかり停止位置を通り過ぎて5秒加算ペナルティーを食らう失敗をしましたが、最後に猛烈な勢いで追い上げて10位で1点を持って帰りました。FIAお望みのターン10でのバトルもありましたし、ここぞの勝負強さはやはり持ってますね。ちゃんと止まってほしかったですがw

 戦略的には、結局1ストップで走り切ったのは9位のエステバン オコンと12位のキミ ライコネンだけ。アロンソはもう抜かれ切った後に2回目のストップ、一方ガスリーはペナルティーを受けつつも、最初から2ストップを狙ったようなピット時期がうまくハマったように思います。
 ここって全体の流れでどっちが有利だったか結構変わってしまうので、周囲の状況と自分たちの摩耗状況をいかに冷静に先回りして見抜けるかが大事なので、よく「カタルーニャは車の総合力が問われる」って言いますが、チームの総合力も結構問われるレースだと思います。

 で、そんなレースでメルセデスはタイヤの残し方、戦略の立て方を含めた総合力で、チャンピオンを獲り続けているチームの強さを感じたレースでした。レッドブルは、現状で「車がメルセデスを上回っていて勝てる!」というレースがあるところまで来たのは素晴らしいことですが、「車がメルセデスと対等で、うまくやれば勝てる!」というレースではメルセデスに上手くやられてしまう状態です。
 車両の面でもいつも優位性がある状態ではないですし、車両、戦略、両面でさらなる進歩をしないと「もうちょっと」「惜しい」と言っている間にもうタイトルが決まってしまいかねないので、ここからの反発力に期待です。

 次戦はモナコ、フォーミュラEでもう楽しんだので、ただのパレードになっても気にしないことにしますw

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