NCS 第9戦 リッチモンド

NASCAR Cup Series
Toyota Owners 400
Richmond Raceway 0.75miles×400Laps(80/155/165)=300miles
competition caution:Lap30
winner:Alex Bowman(Hendrick Motorsports/Ally Chevrolet Camaro ZL1 1LE)

 NASCAR Cup Seriesは今週もショート トラック、第9戦の舞台は0.75マイルのリッチモンドです。昨年はパンデミックの影響で秋の1戦だけの開催。プレイオフの第2戦でしたが、コンペティション コーションとステージ間コーションしかコーションが無かった、というレースでした。今回はどうなりますやら。

 レースはマーティン トゥルーエックス ジュニアとデニー ハムリンの1列目でスタート。ハムリンがいきなり空転して3位に転落しますが、車は良いみたいですぐに2位を取り返します。この後とりたてて何も起こらず30周を完了してコンペティション コーションとなりました。

 ピットではハムリン陣営が11.9秒の驚異的作業時間でトゥルーエックスを逆転。外ラインを選択してリスタートします。ハムリンがすぐにインにかぶせ、チームメイトで縦に並んで協力する意図もありそうでしたが、そうはさせじと2列目外側のジョーイ ロガーノが追随して2位に割り込みます。

 ロング ランでも安定しているハムリン、そのままステージ1を制しました。ステージ最終周にトゥルーエックスがロガーノをかわして2位、2019年のリッチモンドはトゥルーエックスがスイープしています。

 チェイス エリオットは5位でリスタートしたものの、ピットで僅かに調節した右リアのタイヤ内圧が合わなかったのか大幅に順位を下げてステージ17位。
 曇り空から時々日差しが出てくる気象条件となっており、路面状況がその都度変化するので、アジャストの方向性の問題なのか、アジャストは間違ってないけど路面が変わって合ってないのか、うまく判断していかないといけない難しい戦いとなっています。

 ステージ2、順当にハムリン、トゥルーエックスのオーダーで進行しますが、ここはトゥルーエックスが速さを見せて104周目にリードを奪います。

 ジョー ギブス レーシングはこの2人に加えてクリストファー ベルも6位あたりで快調ですが、カイル ブッシュは蚊帳の外でトップ10圏外。ターンのセンターで苦しんでなかなかスロットルを踏み込めずにイライラ度上昇中です。「シャシーで言えば、リアのダウンフォースが欲しいな」なんて投げやりなことを無線で言ってます。
 かといって安易に車をフリーにするとトラクションかからないし、トラクションを重視したら曲がらないし、何を優先して対処し、現実的にどの順位を目指した車にするのか、判断力がここでも問われます。

 トップ2は互角の走りを見せて0.5秒程度の差で静かな戦いが続く中、137周目、ステージ2の1/3ほどに到達したところからピット サイクルとなります。ところが、このタイミングでライアン ニューマンとオースティン シンドリックが接触。ニューマンのスピンでコーションとなります。3度目のスポット参戦だったシンドリックはこのレース28位、ニューマンは30位でした。

 これで、まだピットに入っていなかったブラッド ケゼロウスキー、オースティン ディロン、タイラー レディック、マット ディベネデトー、ダニエル スアレス、コリー ラジョーイの6人が大幅に得をする一方、けっこうな台数が周回遅れとなり、ウエーブ アラウンドを受けることになりました。

 148周目、トゥルーエックスとハービックの1列目でリスタート、すぐハムリンが2位となってトゥルーエックスとハムリンのレースになります。今週もハービックはなんやかんや世渡り上手な感じで走ってますね。ところでハービックもロガーノに続いてメガネっ子になったんですかね?


 ステージが残り50周ほどとなるとこのステージ2回目のピットサイクル。トゥルーエックスとハムリンは同時に入り、ここでハムリンがまたも11.8秒の高速ピット。トゥルーエックスをピット内で逆転しますが、ケゼロウスキーがまたピットに入らず引っ張っているので見た目上のリーダーはこちらに変わります。

 ケゼロウスキーはこのままステージ2を走りきる『1ピット作戦』で賭けに出ていますが、新品タイヤより1周で1.5秒近く遅いので理論上はあっという間に追いつかれてしまいます。新品タイヤの温存はできますが今のところ使い切るほどではなさそうですし、かなりコーション頼みな感じがあります。ブレイニーも同じ戦略に出ました。

 207周目、ステージをまだ30周近く残してケゼロウスキーは追いつかれリード チェンジ。ハムリンが見た目上でも先頭に戻ります。ケゼロウスキーはコース上の全員に抜かれながら耐えるしかありません。

 トップ2の速さは抜け出しており、2位のトゥルーエックスから3位のロガーノまで約6秒、そこから4位のボウマンまで5秒と上位は離れてしまっているので、中継の話題も『ケゼロウスキーは周回遅れにならずにステージを終えられるか』になりました。
 しかし残念ながらステージ残り5周というところであっさり捕まって力なく周回遅れに。ケゼロウスキーは都合24周の間に2回もハムリンに抜かれたことになります^^;
 フリーパスも得られず作戦は大失敗、ブレイニーはもっと後方に落っこちてしまいました。ステージ2もハムリンが制しています。ディベネデトーが幸運を活かしてステージ6位でした。


 ファイナル ステージ、またしても2列目外側からロガーノが2位につけると、今回はハムリンに食いついてインを窺い始めます。
 しかしハムリンは、外ラインで自分の走りをしていれば抜かれない自信があるようで並ばれても慌てる様子無し。ちょっかいをかけられている間は少しタイムが落ちますが、やがてロガーノが下がると、トゥルーエックスを自由に走らせない壁になるのでますますおいしい展開です。

 ハムリン、ロガーノ、トゥルーエックスに、アジャストがハマったかカイル、ハービックとリッチモンドの優勝経験者がトップ5に並びます。昨年秋のレースは夜の開催だったので1ストップもそこそこ戦えていましたが、今回は昼間なので全然機能しないことはステージ2で良く分かりました。このステージも当然2ストップ戦略で、291周目あたりからピットサイクルとなります。

 ここでカイルが早めに仕掛けてトゥルーエックスをアンダーカットすることに成功。さらにトゥルーエックスはまさかの速度違反でペナルティー、今季初の速度違反でした。ペナルティーを消化して、ギリッギリでリードラップ最後尾の12位で踏みとどまり、今すぐコーションが出てくれれば勝負できる可能性は僅かにあります。

 これで対戦相手が一人減ってハムリンが楽勝かと思いきや、そうならないのがNASCAR。ハムリンがやや苦しみ始めて330周目あたりからロガーノが真後ろに接近。周回遅れのせいというだけでなく、ターン3でホイール ホップしているという話で、335周目にとうとうロガーノがリードを奪います。
 ところで猛烈にどうでも良いですが、クイン ハウフの00番だけ、上から見たらモノクロ加工されて映像がなんかおかしいのかと思う色合いですごい気になりましたw


 残り60周あたりから最後のピットサイクル。アンダーカットをさせないようロガーノが先に動き、1周後にハムリンも入ります。ピット後の両者の差は約1.9秒、ピット前から0.7秒ほどしか広がっていないので、かなりハムリンはイン ラップとピットを頑張ったと思われます。

 一方、ロガーノから5秒差の3位で踏ん張っていたカイルでしたが、なんとピット入り口で攻めすぎて滑ってしまい、オレンジ色の部分を踏んでしまったので痛恨のコミットメント ライン バイオレーション。ペナルティーを受けて周回遅れになってしまいました。カイルは結局8位でした。

 トップを追うべき人が相次いでピット関係で自滅し、3位は10秒以上離れた位置のベル、完全にロガーノとハムリンの一騎打ちになりました。
 スティント序盤から攻めるハムリンはロガーノが周回遅れに詰まっていることもあってあっという間に追いつき、残り40周あたりからバトルになります。
 タイヤ・ブレーキをいかに必要な時に使い、最後に向けて有効に活用するのか、レベルの高い戦いが繰り広げられ、ハムリンは時々ロガーノの角っこをつつきつつもフェアーな争いが続きます。先に音を上げるのはどちらか、というバトルに心を躍らせて楽しんでいたら、

 381周目・残り20周というところでなんとハービックがクラッシュ。ここに来てコーションとなりました。右リアのバーストっぽいですね。ブレーキ バランスをリアに振って、使いすぎてブレーキの熱からタイヤを壊したのかもしれません。
 これでピット競争になり、先にピットを出たのはまたもやハムリンでした。今回も12秒切りのピット作業。全く無駄のない流れるような動きでリードを奪い返します。なお、多くの車はこれが最後の新品タイヤです。

 ハムリンは今回はロガーノ相手なのでイン側を選択してリスタート。残り12周の短期決戦です。
 目論見通りロガーノを制したハムリン、ところがここに予想外の刺客が現れました。アレックス ボウマンでした。 

 ハムリンのインを奪ったボウマンが391周目にこのレース初のリード。ヘンドリック モータースポーツがここで勝ったのは2008年秋のレースでのジミー ジョンソンが最後とあって、久々のヘンドリック勝利へ放送席もテンションが上がります。

ジェフ ゴードン「HMSは2008年からリッチモンドで勝っていません、たぶんアレックス ボウマンは15歳の頃ですよ」

マイク ジョイ「最後にヘンドリックでリッチモンドで勝ったのはその通りですね」

ラリー マクレイノルズ「最後に彼らがここで勝った時、私には髪がありましたよ」

 まさかのハゲネタ登場で、チェッカー間際なのに腹抱えて笑いましたw 気になったので一応その頃のラリーの映像を探してみたのですが、こちら2009年の動画だそうで

・・・確かに今よりはあるな。日本でNASCARを見ている人がそもそも少ないのに、解説者の髪の毛について探し出す人なんておそらく日本で私だけでしょうw


 ラリーの髪の話を気にしてたらレースが終わってしまいます。トラック上は先ほどのコーションでウエーブ アラウンドした車が多く、リスタート後早々に古いタイヤの車が隊列から千切れ、ボウマンの前方には周回遅れがやたらと登場。見てくれて無くてヒヤッとする場面もありましたが、そのまま逃げ切って勝利を手にしました。

 ボウマンは通算3勝目、allyがスポンサーに就いて以降、ジョンソンは勝たずに引退してしまいましたから、allyにとってもカップ シリーズの初優勝です。
 ボウマンはステージ2終了後のピットでアンコントロール タイヤにより隊列後方からのリスタートでしたが、無線で「全部抜きなおしてやるよ」と言って、有言実行でした。これまでのレースでも、たびたび速さは見せており、先週もナットが緩んで無ければ優勝争いに絡んでいてもおかしくなかったので、決してマグレではないでしょう。
 これでHMSは4人中3人がもう勝利を手にし、勝ってないのはなんとチェイス エリオットだけになりました。これほど早くヘンドリックから3人も勝つとは全く予想していませんでした。

 一方、敗れたハムリンはなんとこれで開幕から9戦で8度目のトップ5フィニッシュ。未勝利のドライバーが開幕からの9戦で8回のトップ5は史上初の珍記録です。最も悪かったのがホームステッドの11位、ここまでの平均順位が4.2。そのうち勝つでしょうが気分の良いものではないでしょう、コーションが出ていなければロガーノを仕留めて勝っていた可能性が高いです。

 ハムリンは1戦を除いてトップ5ですが、このレースではエリック アルミローラが6位、ディベネデトーが9位で、いずれも今季初のトップ10フィニッシュ。Matt Dはポイントで18位とじわじわ上げてきてはいますが、いかんせん優勝者がどんどん増えるので、やはり勝たないとプレイオフはなかなか手が届かなさそうな状況です。

 先週のマーティンズビルに続いて、ロングとショート、どの状況で強い車なのか、といった要素にコーションが絡んで、なかなか見ごたえのあるレースでした。特にボウマンは全く予想外だったので、NASCARってこれだからやめられないよな、と思わせてくれました。高速のオーバルだけが面白いんじゃなくて、実はショート トラックが面白いんだというのをもっと日本に皆さんにも知っていただきたいですね。

 次戦はタラデガ、今季2度目のスーパー スピードウェイ登場です。


コメント

ChaseFun9 さんのコメント…
HMS!HMS!HMS!やったぜALEX!!!
正直ここ数年は一歩後ろを走ってる感が否めなかったHMSがFord, TOYOTAと肩を並べて優勝争いをしているのが最高です!まあ元々凄い力を持ったチームですがChaseのチャンピオン獲得で勢いが付いたんでしょうね
あとは我らがチャンピオンが勝って四人でチャンピオンシップだあああああああ!!!!
日日不穏日記 さんの投稿…
更新早いですね、こちらは青息吐息でした。ハムリンがここまで勝てないのは不運ですが、間違いなく勝てるでしょう。レースに動きがなかったとはいえ、いきなりリードラップカーのタイヤ交換になったのは気になりました。その間に何かが起きているわけではないんでしょうけど。
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん
コメントがなんだか本当にチャンピオンシップがHMS4台になる予言に見えてきましたw
個人的には地味で苦労人なボウマンをどうしても応援したくなるんですが、それぞれタイプの違う4人できちんとチームがコントロールされてるってのがすごいですね。
と言いつつ、本当に4人でチャンピオンを争いだしたら何が起きるか分かりませんが(それもまた楽しみ)
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん
たまたま時間があったので一気に視聴を進め、ハゲネタがあったので予定を繰り上げて記事をアップしてしまいました(←アホ)
ファイナルステージの1回目のピットサイクルだったか、ハムリンがステイアウトしてるのかと思ったらいつの間にかもうピットが終わってて、なんとなく中継映像が捉え損ねてるような妙な映像作りになってましたね。
数字だけ見たらハムリン無双でもおかしくないのに、そうなっていないのが2021年が面白い理由の1つでしょうね~