FE 第6戦 バレンシア

ABB FIA Formula E DHL VALENCIA E-PRIX
Circuit de la Comunitat Valenciana Ricardo Tormo 3.376km
45minutes+1Lap
winner:Jake Dennis(BMW i Andretti Motorsport/BMW iFE 21)

 フォーミュラE、バレンシア2連戦の2戦目です。前日のレースはSCが連発された結果、エナジー管理が複雑になりすぎて9台しか完走できないという珍事となりました。さすがに混乱は2日続けていらないので、今日は普通のレースが見たいところです。

 この週末のレースに先立ち、フォーミュラEは残りのシーズンの改定版の日程を発表しました。5月8日のモナコは当初予定通りですが、その後に予定されていたマラケシュとサンティアゴは消滅。
 代わって、6月19日、20日にメキシコのプエブラ、7月の10、11日にアメリカのニューヨーク、同24、25日にイギリスのロンドン、8月の14、15日にドイツのベルリンで、全て2連戦によるレースが行われ、全15戦になる予定です。プエブラはアウトドローモ ミゲール E.アベッドという2005年に開場した常設サーキットが開催地となります。

  
 ではバレンシアの話へ戻ります。予選は濡れた路面が段々と回復していく途上。元々ランキング上位の人が先に出走するので不利になる予選制度ではありますが、こうなるとその差はさらに大きくなり、予選結果はほとんどリバース グリッドみたいな状態になります。
 PPはジェイク デニス、2位にアレックス リン。2列目はトム ブロンクビストとオリバー ターベイ、NIOの2台が並びました。なお完全に余談ですが、FOXの放送席では解説がいつものダリオ フランキッティーではなくカルン チャンドックのようです。懐かしいですねえ。


 久々のグリッド スタート。久々すぎてBGMの切り替えも若干うまく行ってない気がします。ターン1で早速NIOの順位が入れ替わり、デニス、リン、ターベイのトップ3で序盤は様子見の展開になります。エナジー管理が難しいレース、かつ普段の市街地より全般に速度域が高いので、相手を風除けにすることが普段より効果的。当面は自分から動かずにじーっと付いて行く考えでみんな一致しているようです。


 10分経過しても、細かい順位変動にとどまって大きな隊列に変化なし。リンはデニスの真後ろについてひたすら相手に合わせて節約走行。中団は時々鋭角なターン9で渋滞が起きそうになっていますが、大きな混乱には至りません。
 12分経過、8周目に入ると隊列の後方の人からアタック モードを使い始めます。15分が経過したところでは3位のターベイがアタックモードの1回目を使用、一旦ノーマン ナトに抜かれて4位になりますが、翌周のターン8で入り口でデニス、リン、ナトの上位3人もアタックモードを使用。
 この一連のサイクルでターベイがアンダーカットに成功してデニスとリンの間、2位に一旦は割り込みます。が、当然アタックモードが周囲より先に切れるのでこの後逆にカモにされてしまい、リン、ナト、アンドレ ロッテラー、ジャン エリック ベルニュと立て続けに抜かれて6位に落っこちました。
 チームメイトのブロンクビストも10位なので、NIOは車の性能自体がやや劣っている印象を受けます。結局彼らはこの後上がってこれず、ターベイは8位、ブロンクビストは17位でした。

 1回目のサイクルが終わり、デニス、リン、ナト、ロッテラー、ベルニュの並び。リンはターベイを抜く際にちょっと差をつけられたものの、またすぐにストーキングを再開します。残り20分となりますが、相変わらずチームからセーブの指示、もう最後の最後まで抜く気がないな(@_@。

 しかし残り19分、ターン9でリンはナトにまさかの追突を食らってしまいはみ出して7位に順位を落としてしまいます。せっかく25分間我慢して走り続けていたのにこれは結構悲しい結末。そしてこのあたりからみんな我慢に疲れてきたのかレースが荒っぽくなってきましたw
あ、ごめんちょっと行き過ぎた!という感じの追突


 10位を争っていたセバスチャン ブエミとストフェル バンドーンがターン10で接触。インにバンドーンがいるのにブエミが閉めた形で、バンドーンの右前がバリアに激突しこれでリタイアとなりました。


 最初に見た時は、インにバンドーンがいるのに閉めたブエミが悪いと思いましたが、リプレイを見ると、バンドーンもちょっと「その角度と速度じゃ曲がれませんよ」という感じの入り方でブエミの右側に当たり、ちょっと姿勢を崩しながらこの状態になったので、レーシング インシデントというか、どっちが良い悪いが判別できる類のものではないのかなという印象です。

 トップ争い、リンがいなくなったのでデニスはちょっと楽になり、ナトを従えてリード。エンジニアからは「他のドライバーより多くエナジーを残している上に一番速いぞ」ととても嬉しい無線が入ります。さらに、ナトにはリンを押したことに対して5秒加算のペナルティーが課せられたので競争相手では無くなり、勝利が見えてきました。

 ナトの後方にはロッテラーで実質的に2位。そしてレネ ラスト、オリバー ローランド、リンが3台でひとかたまりになっています。ラストは14位スタートからアタックモードを先回りして使って追い抜きを繰り返しここまで来ましたが、そのせいで残量が周りのドライバーより少ないのでどこかで帳尻を合わせないといけません。


 リンは残り4分ほどのところからローランドとラストを立て続けに抜いて4位に浮上、ナトはペナルティーがあるので実質3位までは戻しました。

 そしていよいよ終了間際の残り15秒、ここでデニスにエンジニアから大慌ての無線が入ります。
「ジェイク、ジェイク!このセクターで1秒落としてくれ、それから最終周で飛ばすんだ!」

 デニスのペースが快調すぎて、うっかり残り時間1秒でコントロール ラインを通過して昨日の二の舞になりそうでした。デニスは指示通りちょっとペースを制御して時間を0にしてからラインを通過、わざと遅く走ったのでナトが真後ろに来ますが、そこからすぐ後続を引き離していきます。

 デニスがこのまま、1%を残してのトップ チェッカー。後続も動きはなく、ロッテラー、リンのトップ3となりました。デニスが最終周に入った時の残量は4%、ラストやローランドは2%ほどだったので、デニスがもしうっかりしていたら、また大量の失格車両が出るところでした^^;


 今年の新人さん、デビュー6戦目のデニスは一昨年はDTMに出ていました。F1レッド ブル レーシングのシミュレーター/開発ドライバーなんですが、主にGTカテゴリーで活動している25歳のドライバーです。
 F2でバリバリのチャンピオン争いをしていたメンツと比べるとフォーミュラでのこれまでの成績という面ではいささか見劣りしますが、大きなチャンスをモノにしました。BMWは今年でFEから撤退しますが、シートはどうなるんでしょうかねえ。。。

 リンが2位にいれば最後の競争がもっと面白かっただろうと思うので、追突はちょっと残念でした。押してしまったナト、強引だったのではなく単に合わせ損ねてミスったんだと思いますが、ペナルティーを受けても5位でFE初入賞です。
 ラストはもっと落っこちるかと思いましたが6位でフィニッシュ、動きの少なかったこのレースで非常にうまい走りを見せましたが、アウディーもまたFEを今年でやめますから、慣れたころにはシーズンが終わって、来年はシートどうなるんでしょうかねえ。。。(2回目)

 レース中にアタック モードの不適切な使用によりペナルティーを受けたのはアントニオ フェリックス ダ コスタ。ダコスタが何をやっていたのか中継映像では謎でしたがそれもそのはずで、レース後の話によれば、ターン9での詰まり気味な集団走行で何度かターン8~9にかけて接触があり、どうもこの時に誤ってアタックモードの起動ボタンを誤爆していたようです。
 アタックモードは単にあの場所を通過すれば良いわけでは無く、事前に起動操作をした上で地点を通過する必要があり、不必要に何度も起動させようとすると違反対象になるようですが、ダコスタの話からすれば完全に不可抗力だった模様です。ダコスタはペナルティーのために22位でした。

 ドライバー選手権は、選手権の上位5人が全員無得点だったため、後ろから追い上げただけで上位は前日と変動がありませんでした(;・∀・)

 2連戦がものすごく対照的になりましたが、やはり普通にレースをすると隊列レースになってしまって、見た目がいつも以上に地味になってしまいましたね。正直、もっと車が遅く見えると思っていたので、私からすると「思ったよりサーキットでも速く走ってるように見える」と思ったんですが、FE慣れしている人間の見え方なので、たぶん普通の人が見たら遅いでしょうね^^;

 これはレース開催前の時点でのインタビューですが、motorsport.comに対してベルニュは
「良いコースだけど、フォーミュラEには全然適していない。でも新型コロナウイルスの時代になって、都市部にサーキットを作るのが難しくなっているんだ。レースができることを、幸せだと僕たちは考えなくちゃいけない」

「でもはっきり言って、このサーキットには2度と来たくない。嫌いだからではなく、フォーミュラEに合っていないからだ」


と言っていたそうです。走り終えたドライバーの印象がどんな感じなのかも知りたいですね。次戦はモナコ、今回はかなりF1に近いレイアウトになるという話なので楽しみです。

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