F1 第2戦 イタリア(イモラ)

Formula 1 Pirelli Gran Premio Del Made In Italy E Dell'emilia Romagna 2021
Autodromo Enzo e Dino Ferrari 4.909km×63Laps=309.049km
winner:Max Verstappen(Red Bull Racing Honda/Red Bull RB16B-Honda)

 F1第2戦はイモラでのエミリア ロマーニャGP。昨年パンデミックの影響で急きょカレンダー入りした懐かしのサーキット、今年は第2戦での開催です。トラック リミットは厳しめの設定。どうでも良いですがイベント名が無駄に長いです。

 予選、開幕戦ではQ1でいきなり2番手タイムを記録して世界に衝撃を与えた角田 祐毅は、今回はQ1でリアからバリアにぶつかって車に衝撃を与えました。タイム無しで20位スタート、ギアボックス真っ二つの大ダメージだったみたいです。


 トラックリミット違反でタイム取り消しが相次ぐ中、PPはルイス ハミルトンが獲得。Q3の1回目のアタックが会心でした。2位にはなんとセルヒオ ペレス。マックス フェルスタッペンが3位とレッド ブルが並びます。ペレスはQ2をソフトで通過、フェルスタッペンはミディアムで、その点でペレスはまだミディアムでQ2を確実に通れると思われていないことになりますが、逆にこれでハミルトンにスタートで重圧をかけられます。
 一方バルテリ ボッタスは失敗してなんと予選8位。今日はメルセデスが分断されてしまいました。シャルル ルクレールが2戦連続の4位、ピエール ガスリーも同じく連続で5位と好調。何より驚いたのは、ウイリアムズが2人ともQ1を突破し、ジョージ ラッセルが12位を得たことでした。


 決勝は雨になって寒い気象条件。せっかくソフトの蹴り出しの良さを活かしてハミルトンを食いたかったペレスとしたら少し残念な天気です。イモラでのレースが雨だったのはざっと調べたら1997年以来でしょうかね。ほぼ全車インターミディエイトでのスタートを選びました。

 フォーメーション周回でいきなりルクレールがターン12で飛び出してあやうくレースを終えそうになりますがうまいこと復帰、隊列に抜かれる前だったのでちゃんと4位からのスタート。セバスチャン ベッテルはトラプルでピットからのスタートでしたが、ピット出口で待機しながら「BBWに問題がある」とか言ってるし、既にスタート前から情報過多です。

 スタート、蹴り出しの良かったフェルスタッペンがすぐハミルトンに並びかけ、ターン2でインをとって前に出ますが、ちょっと深く入ったので併走したハミルトンには行き場が無し。ハミルトンは軽くフェルスタッペンと接触した後スピード バンプに乗って、ウイングの左端が欠けてしまいます。
 ペレスはその後ろでえっらい安全運転していましたが、タイヤに熱が入ってなくて攻められないのか、この後ちょっと滑ったところでルクレールに抜かれて4位に後退してしまいました。


 混乱は続き、ターン12でニコラス ラティフィーが飛び出すと、復帰後にやや後方確認を怠ったか、ニキータ マゼピンに幅寄せしてしまって接触、ラティフィーがクラッシュしてしまいました。これで即座にSCとなります。マゼピンは開幕からやらかしが多くて相当ネタにされてますが、これはマゼピン悪くないですからね^^;

 SC中に雨量が増えたのか話がさらにややこしくなり、4周目にミック シューマッハーがウエービングしていてうっかり自爆。ウイングを失い、部品をピット出口付近にばら撒いてさらにSCの時間が続きます。しかも出口付近にばら撒いたせいでピット入り口が一時クローズとなり、自分の破片のせいで自分が修復しにピットへ向かえないという珍事に見舞われました。
 さらにペレスもまたSC中に飛び出してしまい見ているこちらは大混乱。抜かれた分を追い抜いて元の順位に戻ってますが、フォーメーションではないので順位下げても抜いたらあかん気が・・・結局10秒のペナルティーを受けました。そもそもみなさん、いくら条件がよくないとはいえ、SC中に飛び出したり事故ったりしてはいけません。

 7周目にようやくリスタート。ハミルトンは手負いなせいか1周で前から3秒も離され、ルクレールに追い回されます。一方で角田は混乱をすり抜けて気づいたらもう14位です。
 方や、チームメイトのガスリーはインターミディエイトではなくウエットでスタートしており、そこまでの路面水量ではないので苦戦を強いられています。エンジニアがやたらと雨が降って来るぞと無線で伝えて励ましますが気休めにもならず、結局ドバドバ順位を下げて、14周目には角田にも抜かれてしまいました。

 一方トップ争いは5秒差になったあたりで膠着。ハミルトンが壊れた車の乗り方を発見したのか、フェルスタッペンとファステストの出し合いで一進一退になってきます。ルクレールは置いてけぼり。チームメイトのカルロス サインツの方は時々お父さんの血が騒ぐのか複数回飛び出してしまい、7位ではありますが既にトップから30秒以上置いて行かれています。

 17周目、5位のダニエル リキャードに対して、ランド ノリスに順位を譲るよう指示が出ます。素直に従ってノリスが5位。この2台の後ろからサインツが追いかけています。

 路面は徐々にドライのラインが出てきていますが、高低差のあるコースなので水が残っている場所がある上に、気温も低いのでなかなかスリックに替えるわけにもいかず、暫くは我慢のレースとなります。
 25周目あたりから周回遅れに出会うと、ここでフェルスタッペンとハミルトンの差がじわじわと無くなって行きその差は2秒以下に。そして26周目、角田がスリックに交換すると、ここからレースが動きます。
 27周目、ハミルトンに1.7秒差まで迫られたフェルスタッペンが先にピットに入ってミディアムに交換します。翌周にハミルトンも入りますが、やや作業に手間取って4秒ストップ。フェルスタッペンがリードを維持します。
 スリックの熱の入りが遅かったり、どこかで滑って数秒失うミスがあればオーバーカットの可能性はありましたが、フェルスタッペンはさすがにきっちりと走ったので、仮にハミルトンが2秒ストップでもオーバーカットは無理でした。それどころかピット前よりちょっと差が開きましたので、フェルスタッペンは適切な交換時期だったと言えそうです。他の車も一気にスリックに乗り換えました。


 トップ2は再度周回遅れの集団に遭遇。フェルスタッペンが通過し、続いてハミルトンもこれをかいくぐる、はずでしたがまさかの事態。31周目、ラッセルを抜こうと濡れたインからターン7に入ったら止まり切れずスナーバックス突入。急いで出たいのでアクセルを踏み込んでターンしようとしたんだと思いますが、車はほぼ真っすぐ進んで右前をバリアにぶつけてしまい、ウイングを壊してしまいました。ちょっと彼の1年目の中国GPを思い出します^^;



 そして、そんなハミルトンの様子を見ていたら32周目、そのラッセルとボッタスがターン1、つまり実質直線の部分で接触して2台ともクラッシュ。これでコース上に車両と看板の破片が散乱してSC導入、その後赤旗となります。ハミルトンはちょっと救われました。


 この接触、ボッタスからすると、いきなり右側面からぶつかられて意味不明な事故ですが、ラッセルから見ると、DRSを使って右側から抜こうとしたら、ボッタスがちょびっと右に動いたのでコース脇に追いやられ、おそらく濡れた白線あたりを踏んでいきなりスピンしてしまいました。そのため、お互いに相手の行為にお怒りという状況でした。
 ボッタスとしても、ラインが限られている中であんまり左には行きたく無いし、舵角を大きくしても何かあった時に急にスピンすると怖いので、できるだけステアリングを切りたくなかったんだろうなあというのは感じます。ただ、結果としてラッセルに残した空間があまりに厳しいものでした。
 そもそもの話をすれば、彼がここでラッセルと8位を争っていて、既に周回遅れになってしまっているというのが良くないですね。昨年のトルコでもそうでしたが、雨での運転に全く自信が持てない状況で走っているように思うので、その自信なさが、余計にスピンしたくない操作にも繋がったのではないかと思います。実際、車載を見た限りではあとタイヤ2本ぐらいインを走ってもまだドライ路面はありそうでした。

 ボッタスは文句を言いに来たラッセルに中指を立てているように見えますが、公式ハイライトでも特にモザイク処理されていないのは、ヘイローで何指を立ててるんだかよく見えないせいでしょうかね。しかし改めてぶつかった瞬間を見ると


ラッセルの左前輪がボッタスのヘイローに乗り上げてまま走ってるので、これヘイローがなかったら結構危険な当たり方をしていると思います。。。

 レース後のインタビュー段階でも双方の主張は平行線だったようですが、ボッタスは逆の立場で考えて、あの状況でスピンして自分に非があると思えるかは少し考えた方が良いと思います。
 悪質行為とまでは言えないと思いますし、こうした環境でのある種のレーシング インシデントではありますが、事故の主因はどちらかと言えば、私はボッタスの側だと思います。まあ、もっと根本的なことを言えば、普通の直線ではなく『ターン1』を通過する位置にあるDRSを、他のコースと同様に捉えて安易に解禁してしまう競技運営側の思考にもあると私は思っています。


 レースは35周目、スタンディングではなくローリングでリスタートされます。オーダーはフェルスタッペン、ルクレール、ノリス、ペレス。ライコネンが後方でスピンしてしまい、これまた適切でない形で順位を戻してしまったので、後程ペナルティーを受けることになります。
 そしてなんとフェルスタッペンも、いよいよリスタートしようかという最終コーナー付近で巻き込んで危うくレースを台無しにしかけました。さすがというべきか、回らずこらえて1位を維持してリスタート、逆にこれでリズムが狂ったか、ルクレールはソフトを履いたノリスにかわされました。中団では角田がスピンしてリード ラップ最後尾の15位に転落してしまいます。

 この後フェルスタッペンは手堅くリード、一方ペレスは表彰台は手にできそうな雰囲気だったのか、38周目に単独でスナーバックスに入店、14位へ転落します。

 ハミルトンの方は赤旗後にウエーブアラウンドでリードラップに戻り、前方の車の自爆と勇気ある追い抜き、ウイングも復元されてご機嫌な走行。49周目にはノリス、ルクレール、サインツ、ハミルトンの4台での2位争いとなります。

 55周目にウマゴン2台の攻略を完了しハミルトンは3位。ソフトを履いたノリスはペースが上がらず苦戦しつつもハミルトンと戦いますが、60周目にとうとうハミルトンはこれを抜いて2位。フェルスタッペンは20秒前方なので届きませんが、スナーバックスで一息ついたことを考えると望外です。

 レースはこのままフェルスタッペンが優勝、ハミルトンは2位でファステストを記録していたので、選手権ではフェルスタッペンに1点のリードでトップを維持しています。ノリスは3位で表彰台を獲得。ルクレール、サインツ、リキャードと続きました。
 ランス ストロールが7位でチェッカーを受けましたが、追い抜きの際にターン2を曲がり切れずに砂場を突っ切り、ターン3をカットして追い抜きを成功させていたことがレース後に審議対象となってペナルティー。これでストロールの正式結果は8位、ガスリーが7位となりました。私も映像で見てて
「あれで行けるんやったらスタートでハミルトンも曲がらず通過したらよかったことになるやん」と思ってたので、審議されててよかったですw

 色々と起きたレースでしたが、フェルスタッペンはスタートに成功すると、常に冷静で勝つために必要な走りを続けて素晴らしいレースでした。リスタートで自爆しかけたのはいらん余興でしたが、ピット後のアウトラップでも必要な速さをきちんと引き出して、結果ハミルトンを焦らせて自滅を誘うことができたと思います。

 一方ハミルトンにとっては、自滅してしまったのにチームメイトと、将来チームメイト、ないしは後継者になるであろうドライバーが事故ったおかげで2位に戻った形になりました。メルセデス的にも良かったんだか悪かったんだか結果だけ見たら評価しズラくなりましたが、もちろん内容は悪いですね^^;
 開幕戦では怒られるまでトラックリミットを無視したことでちょっとした論争になりましたが、フェルスタッペンが明らかにこれまでよりも自分の脅威となっていて、かなり久しぶりにハミルトンが重圧を感じている、というか、内心普通に戦うと厳しいと感じているようにも見えます。
 周回遅れを変にぬれた路面から抜きに行ったら止まらない、なんて去年なら絶対リスク管理していたはずですが、それよりもフェルスタッペンに今ここで絶対離されてはいけないという意識が勝ってしまったがためのミスだったと思うので、これは今年のレースは本当にこの先も面白く、そしておそらく何回か騒動が起こりそうに思います。次戦はポルトガルです。

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