NCS 第6戦 アトランタ

NASCAR Cup Series
Folds of Honor QuikTrip 500
Atlanta Motor Speedway 1.54miles×325Laps(105/105/115)=500.5miles
competition caution end of Lap25
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Body Armor Ford Mustang)

 NCS、第6戦はアトランタ。路面がもうバッキバキのボッロボロで、再舗装するする詐欺な感じのトラックです。どうやら、近隣にカジノを含むリゾート開発の話があり、これに付随して再舗装どころかペーパークリップ型のオーバルに大改築する、というような構想もあって、結果的に再舗装への投資に二の足を踏んでいるという事情もあるようです。そんなバキバキのアトランタで今年は2010年以来となる2回のレース開催です。


 冠スポンサーとなっているFolds of Honorは負傷した軍人の子供へ奨学金を給付することを目的とした非営利法人。QuikTripはコンビニエンス ストアーで、FoHの活動を支援している支援企業の1つです。

 前日のXfinity Series、Echo Park 250ではジャスティン オールガイアーが今季初勝利を挙げましたが、レース後にノア グレッグソンとダニエル ヘムリックが一悶着。

 レース中にピット内で交錯し、レース後に不満が爆発して殴り合いとなりました。処分されるのかと思ったらどうやらお咎めなしになったようです。ソーシャルディスターンス。


 デニー ハムリンとマーティン トゥルーエックス ジュニアの1列目でスタート、序盤ハムリンをケビン ハービックが追い、各順位で激しい争いが起こります。


 ハムリンは後ろにクリーン エアーを与えないようなライン取りを時々織り交ぜて後続車両の接近を巧みに回避、リードを維持。
 そのリーダーのハムリンですら、たかだか15周でもうラップ タイムが新品タイヤより1秒も遅くなっており摩耗の激しさは明らか。ここはコンペティション コーションがありますが、この先長いレースなのでロング ランでのペースを安定させることが必須です。なお今日のタイヤは合計13セットです。
 この後25周でコンペティションコーション、ハムリンがここまで全周リード、カイル ラーソンが唯一これに食い下がって2位、4秒近く離されて3位にハービックです。既にトラック上にはルースが悪化してふらふらの車がたくさんいました。荒い路面はタイヤに攻撃的です。

 迷うことなく全車ピットで4タイヤ交換、狭いピットで忙しい中、ラーソンがハムリンをかわします。ハービックは3位でしたが作業でバルブを吹っ飛ばしたようで、装着した左後輪がパンク、リスタートと同時に緊急ピットの憂き目に遭いました。ギリギリリード ラップを維持しますが、速く走らないと周回遅れです(;'∀')
 
 31周目にリスタート、今度はラーソンが隊列を引き離してリード。一旦争い始めると、どうしてもサイド ドラフトで足の引っ張り合いになるので、最初に相手を引き剥がしておくのは大事なようです。


アトランタではイン側のペイントされた部分が少し窪んでおり、ここにタイヤを引っ掛けると掟破りの地元走りになります。ラーソンはこれをうまく活用してリードを築きます。

 63周目、2位のハムリンがピットに入ってピット サイクルが始まります。ラーソンは翌周にすぐ反応し、両者の差はピット前より2秒ほど詰まったもののそれでもなお1.6秒差、そしてピット後また差が開いていきます。
 そして、ちょうどこのピットを挟んだ前後ではハービックもラーソンと必死に争っていました。ラーソンにペースで勝てないためにじわじわと追い詰められ、74周目にとうとう周回遅れになります。
 一方ハムリンの方はアジャストがあまりハマらなかったかこのロングランでは力不足。カイル ブッシュ、ライアン ブレイニー、カート ブッシュとかわされていきます。ブッシュ兄弟はともにロングランで良さそうです。
 ステージ1はこのままラーソンが独走で制しました。リードラップ車は19台まで削り取られ、ダニエル スアレスがぎりぎり耐えました。スアレスは先週のラグナット違反でトラビス マックが出場停止となり、代役のクルー チーフにホゼ ブラスコが就いています。なかなか良い走りを見せていますが、同じメキシコ人ということで案外相性が良かったりするのかもしれません。


 ステージ2、外側ラインは空転しやすい、という話をスタジオでしていた通り、弟ブッシュが空転して外ラインが詰まります。すると、詰まった3列目の兄ブッシュが後ろからハムリンに押されて制御を失いクラッシュ。思わぬ形で今日初めてのトラブルによるコーションとなりました。カートはそのままリタイア。


 弟のミスで兄が撃沈される見事な連携プレー(?)となりました。カイルに追突したチェイス エリオットもこれでノーズ部分がちょっと剥がれてしまい、空力的に少し不利になります。
 
 119周目にリスタート、先ほどは外側が全滅したためにオーダーが大幅に入れ替わっており、そこからさらにリスタートの争いを経てブレイニーが2位に浮上します。ステージ1では12位あたりだったマット ディベネデトーもなんと4位を走行(・∀・)
 ラーソンはこのスティントも敵なしの状態。弱ルースの車を制御できる範囲で滑らしながら、溝落としも使って綺麗に曲げている印象で、ダートの走り方に似ている気がします。ちょっとタイヤの過熱を招かないか気になりますがロングでも速いんだから大丈夫なのかな。
 一方ニュートラルでかっちりした印象を受けるのは、6位を淡々と走るオースティン ディロンとなんとトップ10圏まで上げてきたスアレス。リチャード チルドレス レーシングとそのカスタマーの車ですが、爆発的速さはないけど安定して走れそうな動きです。
 加えて言えば、スアレスはステージ1終了後に新品タイヤを入れたのに、リスタート→即コーションとなった3回目のコーションでもまたピットに入って4タイヤ。これがかなり効いている、と放送席も絶賛です。

 158周目あたりからピットサイクルとなり、ピットを終えてラーソンは相変わらず大量リード。その後も周回遅れを大量生産しながら後続を離し続けてリードラップ車は14台にまで減少します。
 とうとうチェイスまでも周回遅れにする、のかと思ったら、ここから妙にペースが鈍って量産はここまで。しかし8秒以上の大差でステージ2を制しました。最後はチームメイトだからやめておいたのか、あるいはタイヤに不安があったのか、ちょっと気になる動きでした。
 フリー パスはジョーイ ロガーノが獲得。ラーソンからすれば、仮にチェイスを抜いてステージを追えていれば、チェイスはフリー パスでリードラップに戻り、ロガーノを周回遅れに放り出すことができたので、抜いてしまっても展開的に悪くない気はするんですけどね。
 2位ブレイニー、3位ボウマン、Matt Dも6位になり、スアレスが10位に入りました。トラックハウスがここまで走れるとは思ってなかったのでまだ6戦目ですがかなり驚かされています。


 ファイナル ステージ、開始早々の220周目にチェイスが白煙を上げてコーション。そのままリタイアとなりました。地元ジョージア州出身ということもあってチェイスのファンも大勢観客席にいましたが、あっけない幕切れにお客さんも残念そうです。


 たった数周しただけですが、ステージ2でのスアレスの速さも見ているしタイヤもまだ余っているのでリードラップ車両はピットへ。ブレイニーがラーソンを逆転します。周回遅れはこれ幸いとステイ アウトしてウエーブ アラウンド。リードラップ車両はやや持ち直して20台になります。弟ブッシュは速度違反で後方へ^^;
 
 225周目にリスタートし、ほどなくブレイニーとラーソンのリーダー争い。しかし238周目、ブレイニーのグリルにデブリーが付着し、ここは一旦ブレイニーが下がります。ラーソンの後ろに付いてデブリーを除去しました。まだ80周以上ありますからね。
 しかしながら、クリーン エアーを得たラーソンはやはり速く、この後ブレイニーを2秒以上引き離していきます。ただ先ほどまでと違うのは、スティント終盤にペースが落ちてブレイニーの接近を許したことでした。序盤にかなり争ったのでこれまでとタイヤの反応が異なったかもしれません。

 残り59周あたりからピットサイクルとなり、この2人は同時にピットへ。ブレイニー陣営は過去2回のピット作業でラーソン陣営を上回っており逆転が期待されましたが、ここは逆にラーソン陣営が素早い作業で差を広げます。
 一方、ここまで見事な走りだったスアレスはまさかの速度違反で周回遅れとなります。トップ10が見えていましたが、結局17位に終わりました。さらにアンソニー アルフレードは


 自分のピットに入り損ねてスピン。エリック アルミローラのフロント タイヤ チェンジャーの背中に車の角が直撃。映像を見る限り、随分と平然としたリアクションでそのまま作業していて、特に続報も見当たらなかったのでたぶん無事だと思うんですが、かなり怖い場面でした。
 1990年には、ビル エリオットのクルーがやはりピット内で事故に遭い死亡しています。この事故が起きたのもアトランタだったので、古くからのファンの方にとってはひょっとするとその時を想起するものがあったかもしれません。放送席ももうちょっと深刻に捉えても良い場面だった気が。。。
 

 ピット後のトップ2は2.3秒前後の差で推移。55周以上のスティントですので無理するわけにいきません。両者のラップタイムを履歴で確認すると、296周目に完全同タイムを記録するなど、このスティントではずっとほぼ同じタイムで走っていました。

 このままラーソンがマネージメントして勝つのかと思われましたが、残りおよそ20周、転機が訪れます。再度周回遅れとして現れたロガーノです。ラーソンはこれを抜けず、ペースが釣り合ってしまいます。これでクリーンエアーでは全くもってなくなってしまい、その間にブレイニーがどんどん接近。
 33秒0~33秒3で走るブレイニーに対し、ラーソンは33.3~33.6と0.3秒ほど遅くなってしまい、タイヤも使ってしまったのか、ラーソンに元気が無くなります。
 ブレイニーは残り8周で抜いてリーダーに。ロガーノはお役御免とばかりにここで周回遅れになりました。ラーソンは「さっさとどいとけこのハゲ!」と思ったかどうかは知りませんw

 ラーソンに再度追いかける力は残っておらず、それどころか4周遅れのブラッド ケゼロウスキーもまた壁になってしまい、ペンスキーに取り囲まれて万事休す。ブレイニーがアトランタ500を制しました。カップ シリーズ通算5勝目です。

 路面温度が下がってややタイト方向になったことは、弱ルースでコントロールして走っていたラーソンからすると少し合わなくなったように思えます。ラーソンのレース後の話を聞いた感じでは、終盤は自分の方が劣っていると感じていたようです。
 タイムを見ても、ステージ2のスティント終盤と比べてややペースは遅くなっていました。ブレイニーは逆にこの条件に合致した車で、ラーソンと適度に距離を保って相手のタイヤが減るのを待ち、無駄な消耗を避けて一発で勝負を決める非常に頭脳的な走りを見せたと思います。
 そういえば、ステージ2でロガーノが周回遅れになっていたら、5回目のコーションでロガーノは当然ステイアウトしてウエーブアラウンドしたはず。そうすればタイヤはやや古い状態でペースが遅かったはずなので、あの時あの場所にはいなかったのでは。。。さすがにタラレバが過ぎました(^-^;

 これで開幕から6戦続けて異なる勝者が誕生しました。さすがに少し珍しくなり、2014年以来の出来事です。この時は7戦まで記録が伸びました。史上最長は2000年に記録された10戦連続ですが、記録はどこまで伸びるでしょうか。

 ディロンが6位、クリス ブッシャーが7位と中堅チームががんばりました。ブッシャーはホームステッドでも速かったので、滑りやすい1.5マイルとラウシュ-フェンウェイ レーシングは相性が良いのかもしれません。
 そのRFRですが、NBAの超有名選手・レブロン ジェームスがフェンウェイ スポーツ グループにパートナーとして加わったことが発表され、間接的・形式的とはいえラウシュフェンウェイの共同オーナーの一角という形になりました。

 Matt Dはトップ10を逃して11位でしたが、開幕戦から順位が33、37、28、16、14、11と着実に順位を上げては来ています。得意のブリストルがダートになってしまったので見せ場が1つ減った感はありますが、カップ戦で唯一得たことが無い順位を目指して足場は整いました。

 コーションは5回のみとアクシデントは少ない耐久レースでしたが、終盤のタイムの削り合いはなかなか見ごたえがありました。ラーソンがかなり状態が良いのはNASCARにとっても良いことだと思いますが、チェイスがそろそろ勝たないと全米のファンがやきもきし始めそうです。

 次戦はいよいよブリストルのダート。金曜日に練習、土曜日に予選レース、日曜日に決勝とドライバーは久々にたくさん走れます。


コメント

まっさ さんの投稿…
ブレイニーの走りは見事でした。あと一歩のレースが多い印象なだけに応援したくなります。
さて、中継を見てると3ラップぐらいにティミーヒルとかティミーヒルとかティミーヒルとかがあっという間にラップダウンになってる気がするのですが。。。汗
ピットに入ったのかそもそもクラス違いなぐらいに遅いのか。。。
黒旗が出ない以上、そこまで遅いわけではないのか。。。
ちょっと気になります。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん
ヒルは車検に3回引っかかったので、テールエンド+スタート後パススルーペナルティーの処分を受け、始まって早々にリードラップ最後方にいました。
まあ、トップグループより2秒ぐらい遅いんですけどね。