17人以上優勝したらプレイオフはどうなる?

 2021年のNASCAR Cup Seriesは開幕から4戦続けて異なる勝者を生み出しました。F1で4戦続けて別の人が勝ったらなかなかの混戦ですが、元々優勝できる可能性のある人が多いこのカテゴリーにおいてはそれほど珍しくはなく、過去10年でも2011~2014、2016、2017、2019と7回はこの状況です。


 ただ、今年の場合、過去未勝利でチーム力的にも普段は20位以内でも合格点、トップ10で終えれば勝ったも同然なマイケル マクダウル、デビュー2年目で初勝利だったクリストファー ベル、4年目で通算1勝のウイリアム バイロン、と未勝利でシーズンを終えても不思議ではない面々が真っ先に勝ったため、例年とはやや様相が異なります。

 そこで気になるのが、『優勝ドライバーが17人以上出たらプレイオフはどうなるのか?』という疑問。ちょうどこちらにもまっささんから質問コメントをいただきましたが、検索したらアメリカのサイトでもやはり同様の記事が上がっていて、気になるのは現地のファンも同じの様子。というわけで、こちらでもルールの確認をしてみたいと思います。

 最初に1つお詫びですが、この制度ができた際にざっと公式サイトの情報から2014年に記事を書きましたが、今回ルールが変わったりしていないか情報の確認を行っていたら、思いっきり誤訳して間違った規則を書いていたことに気づきました。約6年越しにお詫びして訂正いたします。こちらが正しいルールです。

 プレイオフは、26戦のレギュラー シーズンで上位16人が進出、勝った人は進出確定で、残りの枠はポイント順、と基本的に説明されています。ですが、厳密に言えばまず前提条件として

1 カップ シリーズを主要参戦シリーズとして登録
2 基本的に全戦出場
3 ポイントで30位以内

の3要件を満たす必要があります。
 
 1つ目、ご存知の方も多いでしょうが、カップシリーズはほぼ全戦にXfinity SeriesとCamping World Truck Seriesの両方、ないしは片方が帯同して併催されています。そうすると、カイル ブッシュが典型例ですが、練習も兼ねて他のシリーズにも出るカップドライバーが大勢いて、当然トップ選手なので上位でレースを終えることが多くなります。
 チームとしては有名ドライバーならスポンサーも得られますし、ドライバーも練習出来て(忙しいけど)お金にもなるので、出ようと思えばどんどん出てしまい、そうするとこれから上がって来る若手の出場機会や競争の場が失われがちになります。
 そのため、2011年から、ドライバーはポイントを獲得できるシリーズをいずれか1つだけ選択する制度となっており、それ以外のシリーズに出場しても、ポイントは一切得られない仕組みになっています。
 今年のカップシリーズだと、ティミー ヒル、コディー ウェアー、ギャレット スミスリーなどは、基本的にカップにも全部出る予定ですが、ポイントではエクスフィニティ―を選んでいるので、カップ戦では点数を貰っていません。彼らは万一優勝しても、点数が無いのでプレイオフの対象外となります。

 2つ目と3つ目はスーパー スピードウェイなどにスポット参戦していたり、ドライバーをとっかえひっかえしているチームのドライバーが偶然優勝しても、プレイオフの枠を取らないようにしてレースの質を保つための措置と考えれば良いでしょう。怪我や出場停止処分など、出る意思はあるけどやむを得ず出れなかったような場合、NASCARの判断で欠場しても権利を得ることができます。

 では、これらの前提をクリアした上で、優勝したドライバーが次々と生まれて17人に到達したらどうなるのか、というと、1勝したドライバーをポイント順に並べることになります。
 26戦のレギュラーシーズンなので、2勝のドライバーが16人重複することは不可能なため、2勝した人は前提条件さえ満たしていればプレイオフ確定。一方1勝は理論上何人でも並ぶことができるため、プレイオフの枠を超過した場合はポイント順になります。

 そしてここでさらに1つ注意点となるのが、私が誤訳してしまったものですが、レギュラーシーズンのチャンピオンの取り扱いです。レギュラーシーズンチャンピオンには、自動的にプレイオフの進出枠が割り当てられることになっており、通常は何勝もしている人がチャンピオンも獲るのであまり起こらないとは思いますが、未勝利の人がチャンピオンだった場合、プレイオフ枠の1つはその未勝利ドライバーに与えられます。
 そのため、1勝した中でプレイオフに出れるのは、ポイント順に決めていって15番目まで、ということになり、16番目の人は脱落となります。

・勝者が15人以下→勝った人と残りはポイント順で16番目まで

・勝者が16人以上→複数勝利の人と、1勝の人の中でポイント順に並べて16番目まで。ただし、レギュラーシーズンチャンピオンが未勝利ドライバーならそちらを優先、1勝の人は15番目まで

とこういうことになっている、と思いますがまた誤訳してたらどうしましょう(´・ω・`)

 とはいえ、そもそもの話、17人勝者が出るということは起こり得るでしょうか?NASCARの過去の歴史で、年間で最終的に到達したケースはありますが、最初の26戦で16人を超えたことは一度も存在しないので、現実的ではない、という見方が大半だとは思います。ただ、勝てる可能性がある人の名前を羅列すると、

デニー ハムリン
カイル ブッシュ
マーティン トゥルーエックス ジュニア
ブラッド ケゼロウスキー
ライアン ブレイニー
ジョーイ ロガーノ
チェイス エリオット
ケビン ハービック

と可能性が高そうな面々だけで8人いてこれで計12人。そこに、ちょっと確率は下がりそうだと個人的にやや失礼な予想をする中で

エリック アルミローラ
アレックス ボウマン
カート ブッシュ

まで加えるとこれで15人です。サプライズが残り22戦で2回あれば17人ですね。起こりそうもないけど起こらないとも言い切れない感じです。

 プロ野球では、交流戦が導入されて以降、理論上『リーグ内の全チームが勝率5割を下回る』という事態が想定されましたが、そうそう起こるもんじゃないと思われました。ところが2015年に実際にセントラル リーグでこの珍事が発生して大変驚いた記憶があります。
 当時も記録が間近に迫っていたので、『上位チーム負けろ!』と変な期待をしながら見ていた記憶がありますが、そういうこともありましたので、今年NASCAR史上初の珍事が起きないとも限りませんし、そういう期待を持って観戦するのもまた楽しいと思います。さすがに未勝利がレギュラーシーズンチャンピオンというところまで併発するとは思えませんけどね^^;

コメント

まっさ さんの投稿…
わざわざご丁寧にありがとうございます! ぽんっと勝ったからプレーオフ進出!が出来ないようになってるのが高い質のチャンピオン争いが出来る秘訣かもしれませんね。
それにしても今年のプレーオフ争いは白熱ですね。ダートの神様が出現する可能性もありますし。。。。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん
2011年にシリーズ選択制を導入したら、いきなりデイトナ500でポイント獲得対象外のベインが勝った、というのがありましたから、確率が低い出来事に対しても制度設計に抜かりがないんですよね。