NCS 第2戦 デイトナ(ロード)

NASCAR Cup Series
O'Reilly Auto Parts 253
Daytona International Speedway Road Cource
3.61miles×70Laps(16/18/36)=252.7miles
winner:Christopher Bell(Joe Gibbs Racing/Rheem Toyota Camry)

 NASCAR Cup Series第2戦、当初予定ではホームステッドでしたが、その次の第3戦オート クラブがCOVID-19の影響で中止となったために日程を変更。NASCARは、移動を少なくしつつ、中止による穴を開けないために、デイトナに留まってロード コースでのレースを行い、ホームステッドを第3戦に1週間遅らせる判断をしました。昨年の様々な経験が活かされていると思います。

 昨年の大半と同様に、スタート順位は予選ではなく、前戦の順位やオーナー ポイントを指数化した数値に基づいて決定され、チェイス エリオットがPP、デイトナ500勝者のマイケル マクダウルが2位となります。ロードコースは通常とは異なる勝者が出やすいのでプレイオフを争う上で重要、と言いつつ、このところロードはチェイスしか勝っていないので、誰がチェイスを止めるのか、の方が注目点です。


 スタートでは、FOXも先週のヒーローであるマクダウルのスポッター・クレイトン ヒューズの無線の声と共にレースを開始しましたが、マクダウル、いきなりターン1で止まりきれず(;・∀・) 2005年~2012年に通算6度ロレックス 24の参戦経験もあるんですが、いきなりやっちまいました。デニー ハムリンが外から狙って来ていたので、ちょっとブレーキで頑張りすぎましたかね。

 これでマクダウルは順位を下げ、さらにその先の混雑した場所で芝生にスプリッターを突っ込んでしまい車両を損傷。そして前方でも同じくカイル ブッシュがコース外に押し出され、スプリッターにダメージを負いスロー走行。結局上位勢が1周目を終えたころ、マクダウルのタイヤが外れてしまい早速のコーションとなりました。
 皮肉なことに、ブッシュ クラッシュとデイトナ500の優勝者がいきなりダメージを受けたことになります。カイルは完全に右側のスプリッターが潰れました。

 4周目にリスタート、チェイスはあっさりリードを広げ、ハムリン、ジョーイ ロガーノが続きます。チェイスの速さを止められる気配が誰にもありません。
 10周目、エリック ジョーンズが左リアのタイヤをパンクさせてホイールだけで走行。さらに11周目にはブラッド ケゼロウスキーが最終シケインでタイヤのパンクに見舞われたようで、あやうくオカマを掘りそうになりつつギリギリ事故を回避、緊急ピットとなります。
 そして、画面には映っていませんでしたが、マット ディベネデトーもやはりタイヤを傷めてバースト、フェンダーを盛大にすっ飛ばし、これによってコーションとなりました。今年のMatt Dはブッシュクラッシュからずっと車を壊してますね^^;

 ステージ終了が間近なのでみんなピットへ。タイヤをレーン上に転がしてしまう人がいたりしてピットもバタバタします。

 14周目、ステイ アウトしたクリストファー ベルとブラッド ケゼロウスキーを1列目にリスタート。ベルはスタートからのタイヤですが、ケゼロウスキーはさっき緊急ピットして四輪交換したらたまたまコーションが出たので、抜群のタイミングでタイヤ交換して、コース上の車をコーションでごぼう抜きした形になってしまいました。
 チェイスはちょっと不安な2列目リスタートからでもきっちりと抜け出します。ベルは明らかに並んでる車を押し出しやや悪童ぶり若さを発揮。ケゼロウスキーはせっかく前方リスタートでしたが、ブレーキで立て続けにロックさせてしまい明らかにフラット スポットを作ります。もうちょっとロードコース上手かった気がしたんだが(^-^;
 ステージ1はこのままチェイスが勝利しました。ロガーノ、ハムリン、ケゼロウスキー、カート ブッシュのトップ5です。実力者が並びますね。

 ステージ間コーションは上位勢はさっきタイヤを換えたばかりなので基本はステイアウトですが、ケゼロウスキーはフラットを作ったのでピットへ。流れがよくありません。


 ライアン ニューマンは今回『カストロール カーボン ニュートラル』という特別スキーム。カーボンニュートラルというのは、再生可能エネルギーの利用や資源の再利用を通じて、産業活動から生じる二酸化炭素の排出量を実質的に0にしようという取り組みのことですが、ラウシュ フェンウェイ レーシングはこのたびPAS2060というカーボンニュートラルに関する認証を取得、NASCARチームとして初の取り組みを達成しました。
 チームでは、競技車両の素材の90%以上を再利用、これにより過去10年間で廃棄物の量を100トン以上削減し、ショップの証明を全てLEDに交換して消費電力を削減。社用車は電気自動車かハイブリッド車、施設内でのアイドリング禁止、などの取り組みを進めて来たとのこと。
 これを受けて、外観でも極めてシンプルなデザインで、環境負荷低減に対する取り組みを表現した特別スキームだということです。10年以上前に、F1の車体を地球色に塗ったホンダとはメッセージは同じでも表現方法が対照的ですね。そのホンダはカーボンニュートラルを理由にF1から撤退するわけですが。


 時を戻そう。20周目、13台がステイアウト、チェイスとロガーノを1列目にしてスタート。チェイス君はあっさりと安全圏までリードを広げます。一人だけ別カテゴリー状態。
 一方、34位スタート、コウリッグ レーシングの切り札・A J アルメンディンガーはこの時点で6位にまで追い上げ、スペシャリストの本領を発揮します。また、スペシャリストとまでは言いませんが、ロードで強いマーティン トゥルーエックス ジュニアも同じく19位スタートからトップ3まで上げてきています。

 この750馬力もあるエンジンに驚くほど小さいスポイラーで1500kgもある車両ですから、車両はターンで常にスライド状態。おかげでタイヤの内側のエッジ部分は、特にリアがすぐ過熱してしまい、最大の懸念材料だとのピットからの情報。ちょっとでも攻めすぎるともたないんでしょうね。

 26周目、トゥルーエックスがハムリンを抜いて2位へ浮上、同じころアルメンディンガーはロガーノを抜いて4位となります。速さだけでなく、同じペースで走ってもタイヤ・ブレーキに負担をかけない走り方ができるか、というのが10周を超えるようなランでは重要と思われます。

 28周目、ロス チャステインがライアン ブレイニーと争う中で軽く接触して制御を失いバリアに直撃、コーションとなります。チャステインはこのままリタイアし39位でした。
 ここで多くはピットを選択しますが、アルメンディンガーはステイアウトを選択しリーダーに。戦略的には周りに合わせた方が無難ですが、今回タイヤは7セットまで、ということで温存作戦かもしれません。一方のチェイスはピットに入りましたが、外した右前タイヤをあさっての方向へ転がしてしまう致命的ミスがあり、作業が大幅に遅延してピット内で5つ順位を下げてしまいます。
 5台がステイアウトして30周目、ステージ残り5周でリスタート。チェイスは14位からのリスタートになってしまいました。

 コール カスターはワイパーが壊れました(。∀°)
 アルメンディンガーはリスタート1周目こそうまい走りでリードを守ったものの、ハムリンにかわされるとその後も新しいタイヤの車が次々と押し寄せて、さすがにコーション前より順位を下げていってしまいます。
 ハムリンはリードを奪うとそのまま逃げましたが、2位争いはカート ブッシュ以下がハゲしい争い。カートは非常にうまく相手をいなしていき面白いレースを見せます。結局ステージ2はハムリンが制し、カートが僅かな差でロガーノを退けてステージ2位でした。カートはこれを見ると来年も乗ってほしいですね。AJは結局ステージ9位でした。
 
 ステージ間コーションではカートがハムリンをピット内で逆転。ダニエル スアレスとディベネデトーの2台がステイアウトを選択しており、カートは3位リスタート。残り33周でファイナル ステージが始まります。アルメンディンガーは速度違反によりまさかのリスタート最後尾。。。

 リスタートでは蹴り出しの段階でディベネデトーが空転して大失敗し外ラインが全滅。カートがまずはリードを奪います。ところがリスタート2周目、ターン4の緩い左コーナーで縁石に乗りすぎたかラインを大きく外れてダートへ一直線。27位へ転落しました。うーん、やっぱ引退かな(´・ω・`)

 これでリーダーはベルになりますが、もう背後にチェイス閣下が降臨。41周目、ベルはターン1でインを閉めたつもりでしたが、脱出で僅かに空いたインをチェイスに狙われリード チェンジ。一方、後方では挽回しようと先を急ぐカートがケゼロウスキーにオカマを掘ってケゼロがスピン。ケゼロはこの前にもバス ストップを曲がり切れず一旦停止の憂き目に遭っており、もうガタガタです(´・ω・`)

 45周目、右前のスプリッターがガッツリ失われているカイルがハムリンを抜いて5位に浮上。ハムリンはブレーキに少し問題が出ているようでペースが上がりません。カイルは少なくとも右前のタイヤとブレーキに冷却の心配はないですねw この後ロガーノも抜いて4位になりますが、後方にいたレース序盤に頻繁にタイヤを換えたため、新品はあと1セットしかないのが場合によっては不利な情勢。
 足りなくなったら履歴の浅い中古タイヤも再度注ぎ込むことになるので、外したタイヤも一部はちゃんと残しておくのがNASCARの鉄則です。

 一方リーダー争い、チェイスは毎度のことながら逃げていく、のかと思ったら、ベルがしぶとく1.5秒ほどの差で追随。すると、チェイスがブレーキでスモークを上げる場面が目立ち始めます。去年、ロードコースのレースでチェイスに対してロングランでペースを維持できた人ってほぼいなかったので、これはかなり意外な展開でした。

 残り20周、大きく遅れた3位にいるトゥルーエックスが上位勢で最初にピットへ。ここから多くの車がピットに入っていきます。
 チェイスはさすがにガタガタと崩れるようなことは無く、ベルと1秒程度の差を維持し、2台とも残り18周でピットへ。ピットで少しチェイスが差を広げました。コーションがなければここから18周のロング ランでの対決になります。


 ところがここで思わぬ不確定要素到来。いわゆる天気雨の状態となり、トラックの一部にだけ軽い雨が落ちてきます。コース外には虹が見えました。
 規定では、NASCARはロードコース戦においてレース中に雨が降った場合、チーム側に安全にタイヤの判断をしてもらうために、一度だけ雨を理由にしたコーションを出せるとなっているそうで、コーションが出るのかが気になります。
 しかし現状で雨はトラックの前半部分でしかほとんど降っていない上に、上空は晴れていますから、レインを履いたらすぐボロボロになってしまいそうです。

 とか思ってたら、57周目に雨によるコーションが出ました。まだレースは10周以上ありますから、レインを履かないにしても、まだ新品があるならタイヤを換えておきたいタイミングです。多くはピットに入りますが、ここでチェイス陣営はまたタイヤ運びでややてこずって、ピット内で順位を3つ落としました。

 7台がステイアウトしロガーノとチェイス ブリスコーが1列目、ピット組ではベルが最上位となる8位、というところで残り12周でリスタート。
 中団でタイラー レディックが行き場を失って芝に突っ込みフロントを大破。さらにチェイスもターン3から先で行き場を失ってコース外走行を余儀なくされますが、神業コントロールで踏みとどまります。ただ、グリルは芝だらけ。押し出したのはコリー ラジョーイで、ちょっと遺恨ができたかもしれません。でも普段ほぼ近くを走ることが無いので、次にコース上で出会う頃にはもう忘れてるかもしれませんw

 この直後、レディックの車両から出火してコーション。さっきのクラッシュでオイル関係の線でも切れたでしょうか。チェイスにとっては救いのコーションで、コーション周回中にハムリンの真後ろについて芝を剥がします。低速のコーション周回でも、接近すれば負圧で剥がれてくれるもんなんですねえ。

 再びロガーノとブリスコーの1列目で残り10周のリスタート。しかし7位のトゥルーエックスがターン1のブレーキでホイール ホップを起こして止まれずに、あろうことかチームメイトのベルに接触しながらスピン。幸い後続はトゥルーエックスを避けていきましたが、取っ散らかってまたコーションです。
 これでベルも順位を下げ、雨コーション時にタイヤを換えたドライバーの中ではカイル ラーソンが最上位となる5位。チェイスには及びませんが、今日はヘンドリック モータースポーツの中では2番目に良い走りをしており、元々ロードコースでは短距離ならかなり速いドライバーです。もしかして、のチャンス到来です。

 残り8周、ロガーノと兄ブッシュを1列目にリスタート。ラーソンはリスタートですぐ3位に上がり優勝の大チャンス!さらにターン6で兄ブッシュのインに飛び込んだ!まではよかったですが、止まりきれずにまさかの自損事故!勝利が見えて気合いが入りすぎたか、ラーソンは結局30位で終えました。
 さらにフロントストレッチではなぜかデイトナ500の最終周みたいな3ワイドのもみあいが発生した末に、弟ブッシュがクラッシュ(´・ω・`)2人のカイルが立て続けに撃沈しました。弟ブッシュは35位でした。

 コーションは出ずロガーノがリード、カートが後続の蓋になっているのでリードを拡大していきます。さらにその後ろの4位争いではケゼロウスキーがチェイス相手にかなり無茶苦茶な走りで必死に防御していると、詰まったチェイスがターン6でハムリンに押されて回される悲劇。
 これは前に合わせられずに回したハムリンが悪いと言わざるを得ないですね。チェイスとハムリン、元々仲が良くない2人にまたもや因縁生まれた気がします。これでもうラジョーイとの件は忘れたことでしょうw さらにブリスコーはボンネットが開いてしまうし、リスタート以降レースはもう無茶苦茶です。
一応前は見えてる、、、のか?w

 ベルがカートを抜いてようやく2位になったのは残り5周、ロガーノまで3.5秒。ここからじわじわと差を詰めていきます。
 残り2周、とうとうロガーノを捉えたベル。ロガーノはリアのブレーキが過熱しすぎて火花が出ており、ブッシュクラッシュでのブレイニーと同じような状態です。これでは守り切るのは難しい情勢です。
 オーバル部分でデイトナ500を思わせるブロックを見せたロガーノでしたが、あえなくシケインでのインを明け渡し勝負あり。ベルもかなり攻めたので最終周は決してブレーキが楽な状態ではありませんでしたが、最後の1周をきっちりまとめ、デビュー2年目、38戦目でキャリア初勝利を挙げました。
 レース後車検でラグ ナットの装着不十分による違反となり、クルー チーフのアダム スティーブンスに罰金1万ドルの処分が下りましたが、ラグナット違反ではレース結果は覆らないため、正式な勝者となりました。


 これでデイトナ500でのマクダウルに続き、開幕から2戦連続で初優勝ドライバーが誕生しましたが、これは1949年、1950年に次いで史上3度目の珍事。と言ってもカップ シリーズの前身であるNASCAR Grand National Seriesが誕生したのが1949年ですから、いかに異例であるか分かります。
 2位ロガーノ、3位ハムリン、4位に兄ブッシュ。気づいたら結局上位のカート、チップ ガナッシ レーシングとしては今彼が抜けるとチャステインでは心もとないですし、NextGen Carのテストも担当したカートにはぜひ残留してもらいたいんじゃないでしょうか。
 ちなみにそんなチップガナッシですが、オーナーのチップ ガナッシがCOVID-19感染症対策規定違反により、3万ドルの罰金と、次戦でのピット内立ち入り禁止処分を受けています^^;

 そしてケゼロウスキーが5位、アルメンディンガーが7位、マクダウルがなんと8位。レース途中に色々やらかして落っこちた人が、終盤のコーション連発で気付いたら上位に戻ってきていたので、もうワケが分かりませんw

 普段ならステージ制のロードコース戦はステージ終了の2~3周前にピットに入って行って、コース上で争わずに戦略ゲームに終始してしまうことが多いですが、このレースはその前にコーションが出てしまったので、結局アンダー グリーンでのピットは1回だけで、全域でコース上での争いとなりました。 
 おかげで退屈せずに見ることができましたが、ベルが勝つのは予想外でした。映像を見る限り、タイヤが落ちて来る中でもできるだけ車を滑らせないようにうまく走らせているように見えました。Xfinity Seriesの時代には、2019年にロード アメリカで1勝していますが、思った以上にロードコースが上手いのかもしれません。

 ただ、面白かったので良いとはいえ、どう考えてもレインなんて履きそうもない条件、しかも豪雨でスリックで危ない区間がある、とかでもない状況で雨によるコーションというのは、ちょっと『見えないデブリー』的判断のコーションには思えました。チェイスとベルの正面からの勝負も見たかったなあと思いますが、これは今後のお楽しみでしょうかね。

 次戦はホームステッド。1.5マイルですが、Dシェイプでははくペーパー クリップなのでここも特殊トラックの部類に入るレースです。


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