FE 第2戦 ディルイーヤ

ABB FIA Formula E World Championship
Diriyah E-Prix 2021
Riyadh Street Circuit 2.49km 45minutes+1Lap
winner:Sam Bird(Envision Virgin Racing/Audi E-tron FE07)

 FE第2戦、前日と同じくディルイーヤでのレースです。前日はメルセデスのニック デ フリースが優勝、カスタマーであるベンチュリーのエドアルド モルターラが2位とメルセデスが強さを見せましたが、この日はそのメルセデス製パワートレインに思わぬトラブルが発生します。
 予選前のスタート練習中、モルターラのブレーキに問題が発生し、全くブレーキが利かずにそのまままっすぐバリアへ突撃。ペダルを踏んでも一切減速しないため、本人は相当な恐怖を感じたようですが、幸いモルターラは無事でした。
コースの一番奥まで突っ込んでいったモルターラ

 
 しかしながら、ブレーキが利かないという重大な事象、そして今のブレーキは電気指令式・いわゆるブレーキ バイ ワイヤーでシステム上に問題が発生したとみられることから、メルセデス搭載の4台は予選への出走が認められませんでした。その後ソフトウェアの問題を
解決し、モルターラ以外の3台は後方からのレース参加となりましたが怖い場面でした。

 予選PPはエンビジョン バージンのロビン フラインス。2位はセルジオ セッテ カマラ、3位に昨日やっちまったサム バード。4位、5位にNIO333の2台がつけているのがなかなか興味深いところです。NIOは去年よりカラーリングがかっこよくなった、というか以前の雰囲気に戻りましたね。



 スタートではやはり奇数列の方が有利なようで、3位のバードがやや接触したもののセッテカマラを抜いて2位浮上。去年までお世話になった古巣・バージンの車を追いかけ、この後3位のセッテカマラに1.5秒ほどの差をつけてアタック モードをフリーで起動できる状況に持って行きます。
 開始10分、6位のジャン エリック ベルニュがまずアタックモードを発動。ここから周辺の車に波及していき、13分30秒ほどというところでトップのフラインスが先にアタックモードを使います。
 バードは翌周にカウンターで使いたいところでしたが、ウインドウ内には、こちらも1回目のアタックモードを使用中の3位・セッテカマラがいたため1周見送って翌々周に使用。それでもやはりセッテカマラに僅差で抜かれてしまい抜き返す時間を要したため、このサイクルではバードはフラインスの背後に戻っただけで終了しました。
 開始20分、1回目のサイクルでうまく4位まで上げていたジャン エリック ベルニュがセッテカマラも抜いてとうとう3位に浮上。旧型パワートレインではありますが、やはりこのチームはレースで強さを見せます。
 するとこの直後、ターン18でジェイク デニスがパスカル ベアラインと壁にサンドイッチにされて車が壊れ停止。何らかのコーションが出そうな雰囲気でしたが、接近するトップ争いではフラインスがまた先にアタックモードを使用します。


 しかしながらここでやはりフル コース イエローとなってしまい、フラインスのアタックモードのうち約2分間はFCY中に無駄に時間を消費することになりました。

 リスタート後にフラインスはバードを抜いたものの、もうアタックモードの時間が無いので引き離すだけの時間がありません。ただ、その後ろではアントニオ フェリックス ダ コスタがベルニュを抜いて3位に上がり、なおかつこのテチーター2台が揃って真後ろに迫り4台の集団へと変化します。これだとバードはアタックモードを使うと一気に4位に落ちてしまうので楽ではありません。

 が、毎度恒例仲が悪いテチーターの2人、コース上で争って、互いに相手を壁に押しつぶしそうなぐらいの争いを演じてしまい、バードからしたらウインドウ内から相手が勝手にいなくなってくれました。これは非常に幸運、逆にフラインスからしたら「なにいらんことやってるんすか!?」という状態です。
ほぼ曲がれないぐらい寄せるダコスタに対してベルニュ。
この後出口で逆に壁いっぱいまで押しやられることに(;・∀・)


 バードは一度コース上でフラインスを抜き、その後アタックモードを使うために一旦抜かれ、そして改めてフラインスを抜いて、これで義務を消化した上での先頭なので完全に主導権を握ります。

 残り11分、セバスチャン ブエミがターン4でクラッシュして停止。さらにターン18の先でマキシミリアン グンターとミッチ エバンスもクラッシュして停止しており、2度目のFCY、結局これがSCとなりレースは一旦リセットされました。
 ブエミはリプレイが無くて何があったのか謎のままでしたが、グンターはブレーキングで後ろにいたオリバー ローランドにオカマを掘られ、止まり切れないまま前にいたトム ブロンクビストを巻き添えにしてクラッシュしてしまったようです。
 ・・・と、これだとエバンスがいないのでなんだか妙だなと思っていたのですが、実は画面に映っていないもう1つの事故が起こっていました。上記3台が絡んだアクシデントのさらに後ろでエバンスとアレックス リンが接触。リンの車両がエバンスに追突したら乗り越えてエバンス車を飛び越え、裏返ったままエスケープを滑走してバリアに衝突して停止したようです。

 破片と回収対象車両が多い上に、リンの事故があまりに激しかったためSC走行は解除される見込みがなく、結局残り2分40秒あたりで隊列はピットに入るように指示されて赤旗、レースは再開せずに成立とされ、バードが移籍2戦目にして早くも勝利を手にしました。ジャガーは良い補強をしましたね。まだどうしてもバージンの車を見るとバードだと思ってしまう自分がいるので慣れが必要ですが^^;


 やはりエネルギーの使いどころ、攻めどころ、といったあたりに経験値のあるバードが長けています。アタックモードだけが勝負のツールではなく、本来アクセルを戻す場所で少し踏み続けることで相手の懐に飛び込むのもFEにおいては重要な攻撃ツール。無駄に踏めば終盤に苦しくなるだけなので、いかに一発で勝負所を見定めて仕留めるかが大事ですが、そのあたりが非常にうまいです。
 いつもより奥まで行くと、当然ブレーキ開始時の速度が乗っているのでブレーキ位置も変わってきてしまいますから、そのあたりに常に対応し続ける能力が重要です。このあたりがなかなか見ていても伝わらないのが難しいところですね。
 
 後ろからテチーターに追われて苦しかったフラインスが命拾いして2位、ベルニュ、ダコスタ、そして5位に新人のニック キャシディーと続きました。が、ここからが大変でした。フォーミュラE名物・ペナルティー祭りです。

 まず、3位のベルニュは2回目のアタックモードを使用せずにレース終了。規則ではアタックモードは『割り当てられたアタックモードの時間は全て使用しなければならない』とされており、仮に赤旗でなく残り1分程度でリスタートされていてお消化は事実上不可能でした。これにより24秒加算のペナルティーを受け12位に降格となりました。

 10位だったレネ ラスト、13位だったトム ブロンクビストも同様の理由で24秒加算され、さらにFCY中の速度違反もあったためこの2人はさらに24秒加算、計48秒の大量ペナで完走した中では最後方の17、18位となりました。

 そして、5位だったキャシディーにもFCY中の速度制限違反があり、これまた24秒加算で14位に降格。11位だったアレクサンダー シムズには技術規定違反により24秒が加算され15位になりました。

 これらの大量降格によって、開幕戦勝者のデフリースはコース上では14位でしたが、これが9位に繰り上がって連続入賞。そして、彼は数字上はファステスト ラップを記録しているもののトップ10圏外だったのでポイント対象外だったはずが、この昇格によって対象となったためにボーナス1点も獲得。他の人の降格によって、都合3点獲得することができました。

 アタックモード不使用はレース展開のせいで本人のせいではないので、そういう点で納得いかない方も多いでしょうし、当のベルニュがお怒りだったようです^^; ただ、規則上そうなっているのは分かっていますし、ピット義務のあるレースでも同じことは起こり得ます。
 アタックモードはピット義務の代わりといえるものですし、だからこそあまり残しすぎてもいけない中でリスク管理をするわけで、今後このルールをどうするかは別の話として、この裁定自体には文句を言ってはいけないと思います。こうなるのは最初から分かっているので、起こる前に最初からずっと言っていたのなら分かりますが。

 結果的にレース前、レースといずれも大きな事故が起きてしまいましたが、ドライバーが幸い無事であったことが救いでした。今後も万全の安全対策でレースが行われることを願います。次戦はローマ、昨年はCOVID-19の爆発的感染拡大がヨーロッパ内で初期に起き、開催ができなかったイベントです。今年も本当にできるんでしょうかね^^;

コメント

okayplayer さんの投稿…
推しのバードが勝って嬉しい!
フラインスはペースを調整してテチーター2人をバードに詰めさせて、アタックモード取りに行ったタイミングで抜かされるようにしたいのかなーと思って観てたんですが、ダコスタとベルニュが仲悪いのを考慮に入れなかったのがダメでしたね笑笑
SCfromLA さんの投稿…
あの二人、他チームのドライバーを相手してる時よりチームメイトの方が容赦ないんですよね(笑)
ベルニュは元々バージン時代にバードと同士討ちして、たぶん1年で離脱した理由の1つでしょうし、テチーターに移籍してもロッテラーに容赦ない態度だったのでたぶん相手が誰でも同じなんでしょうね。それが相手がダコスタなせいでなおさらですが、見てる分にはハミルトン×ロズベルグ以上に面白いので怪我しないようにやりあっててもらいたいです。