SUPER GT、今さらの初歩的な話(タイヤ編)

  この話題は歴史、車両、競技の3つで終わりにする予定でしたが、タイヤでもうちょっと深堀できそうなのでもう1つ行きます。とはいえ、タイヤは外から見ても違いが分からないし、重要事項で詳細が一般人に分かるわけではありません。断片的に得た知識を基にした話が多いので、参考意見程度に読み進めていただければ幸いです。


 現在世界の多くのモータースポーツでは、タイヤは一社からの供給、いわゆるワン メイクです。完全に1種類のところもあれば、F1のようにレース中にいくつかの種類を使用するものもありますが、こうしたカテゴリーでは『固定された要素であるタイヤを理解して開発やセッティングをする』ことになります。ワンメイクだとタイヤの面でのコストは大幅に削減されます。

 一方でSUPER GTでは、現在4つのタイヤ メーカーが参加し、開発が行われていくマルチ メイクです。いわゆるタイヤ競争、タイヤ戦争というやつで、これがレースを面白くしたり、逆にタイヤで大勢が決まってしまったりします。車両には開発余地が小さい時代ですが、タイヤの方はある種際限が無いので競争が熾烈です。そのぶんお金はとてもかかります。


・メーカーごとの大まかな特色と立ち位置

 両クラスには現在ブリヂストン、ダンロップ(住友ゴムのブランド)、ヨコハマ(横浜ゴム)、ミシュランの4つのメーカーが参戦していますが、クラスごとに台数や成績にはけっこうな差があります。


 GT500クラスではブリヂストンが大多数です。JGTC初期の頃はそうでもありませんでしたが、トヨタ、日産、ホンダの3メーカーが直接争うようになっていくにつれてブリヂストンが圧倒的になり始めて今に至ります。

 日本が誇る世界でも最大のタイヤメーカーですから、日本で最上位で自動車メーカーが直接争うカテゴリーで主役になるのはある種当然と言えると思いますが、台数が多い→データがたくさん集まる→開発が進む→結果が出る、の好循環になっていると思われます。規模も予算も大きいでしょう。

 そして、日産以外はメーカー内で主流のタイヤですから、車両開発においても大なり小なりブリヂストン装着を主体にしたものとなってくるはずで、そういう点でも優位性があります。


 一方現在は日産にだけ供給されているのがミシュラン。かつてはトムスに供給していた時代もありましたが、一旦SUPER GTを去ったのち2009年にハセミモータースポーツのGT-Rで復帰。同年でハセミがGT500を去った後ニスモへの供給に切り替わりました。

 正直ニスモでの1年はパッとせず、「やっぱブリヂストンやないとあかんなあ」という印象でしたが、この1年での開発が機能したか、翌2011年に新規参戦のMOLAに対して供給されるとミシュラン旋風。2011、2012とGT500を連覇します。特に2011年はブリヂストンに戻したニスモを下してのチャンピオンでした。

2012年第7戦で優勝した S Road REITO MOLA GT-R

 想像ですが、ミシュランと日産にはある程度長期のパートナー関係があって2009年に参入したものの、チームが撤退したのでニスモが引き受け。ただ結果がイマイチだったので、新規参戦チームにまた回された、というような状況だったと思われます。ところがMOLA×ミシュランが想定外の成績を出したからか、2013年からニスモはミシュランを再び採用して今に至ります。逆転人生!

 トヨタ、ホンダの車両に供給していた時代もあって、ミシュラン装着のHSV-010 GTもたいがい速かったですが現在は日産一筋で2台への供給。ワークスのニスモが採用しているので必然的に車体もミシュラン前提となりがちで、日産では1台しかいないブリヂストンのチームインパルがやや苦戦する理由の一因ではないかと思われます。

 特に2014年に車両規定が変わって以降、ミシュランは『あえてタイヤをたわませている』とも言われます。高速コーナーで高い荷重がかかった際、タイヤがたわんで潰れ、結果車高が僅かながらに低くなり、それによってダウンフォースが増大しているのではないか、ということでした。ミシュランのGT-Rだけ火花の量が異様に多いために出た話でした。

 実際そうした可能性は高そうで、規則でダウンフォースが削減されると、荷重が減ってたわませにくくなり、ニスモとGT-Rがやや苦戦を強いられたところがありました。現在でもミシュランは横方向の高荷重サーキット、鈴鹿などで強いとされており、またタイヤが作動温度領域に入るのが早くて、スタート直後やピット直後に強い傾向があります。

 なお、ミシュランは製造拠点がフランスにあるので、日本メーカーよりも早めにタイヤの製造を開始しないといけない点がやや不利です。


 ヨコハマは各自動車メーカーに1チームずつの供給。強い横荷重のサーキットはあまり得意ではない方向性で、低速と縦荷重中心のコースの方が得意な傾向があります。ツインリンクもてぎやチャーンインターナショナルサーキットでは比較的強みを見せます。

 3メーカーの車両ともヨコハマタイヤと組むことで参戦している、という色彩が強いと思われます。「何でこのチームはブリヂストンを使わないの?」と思われますが、むしろ「ヨコハマだから参戦している」という方が見方としては正しそう。

 現在の3チーム、近藤レーシング、ウエッズスポーツバンドー、2017年復帰後の無限はいずれもGT500参戦時からヨコハマです。ヨコハマは2016年からスーパーフォーミュラのタイヤ独占供給も行っているので、従来に比べて高性能なタイヤの知見はいくぶん増えていると思われます。


 ダンロップは2008年まではホンダとトヨタに1チームずつ供給していましたが、以降はナカジマレーシングのみに供給を続けています。ナカジマレーシングと組んでGT500に出ることで、タイヤの技術開発を行っています。いかんせん1台しかいないのでデータ量も少なく、4メーカーの中で、最も『挑戦』という感じが強いように感じます。

 ダンロップは速さ、寿命ともなかなかブリヂストンに対抗できないことが多いですが、高温やウエットでは同等以上の力を出すこともあり、このあたりの条件には比較的合いやすいタイヤのようです。





 一方GT300クラスに目を転じると、こちらはヨコハマが圧倒的多数を占めています。GT500でのブリヂストンのように、各チーム、車両に合わせて専用で作っている、というわけではなく、言うなれば「みんなが使えるものを作ってGT300を支えている」という立ち位置です。カスタマー タイヤ、とでも呼べば良いでしょうか。

 もちろん開発してないわけではなく、特に連携の強いチームと協力して新しいものを開発、投入。結果としてできてくる”製品”を色々と取り揃え、ヨコハマを使うチームに選択肢を与えて使ってもらう、というような形です。ヨコハマの技量が上がれば、GT300のヨコハマ使用車両全体が底上げされるわけですね。もちろんGT500の開発知見も活かされていることでしょう。


ミシュランは2020年に久しぶりにGT300にやってきました。2020年は2チームへの供給だったので、いかにもGT500同様特別なタイヤを特注で作っていそうですが、オートスポーツNo.1543によればそうではなく、ヨコハマ同様カスタマータイヤだそうです

 ミシュランは海外のレースではGT3車両にタイヤ供給していたりするので、それらから役に立ちそうなものを取り揃えてチームに使ってもらう、とこういう形にしたいそうです。ヨコハマのライバルということになりますから、競争を通じてチームがより望んだ性能、コストのタイヤを選ぶ選択肢となることを狙っているようです。


 一方今季は3チームへの供給となっていたダンロップ、開発は主にGT500で行い、そこから精査して技術を落とし込んで、時間差でその結果がGT300に下りて来るようなイメージだとのこと。ですのでタイヤ開発の軸足はGT500サイドということになります。

 チームごとに特別な仕様を作ることはないそうですが、GT3車両とJAF-GT300車両では全く特性が違うので、特にBRZ向けのタイヤは事実上BRZ専用タイヤと言えるかもしれません。

     

 そしてブリヂストンですが、こちらは2011年に初めてGT300クラスに参戦した後発組です。2010年にF1への供給が終了してリソース面で余裕ができたことが一因だということですが、こちらも基本はダンロップと同じでGT500での開発から技術を転用する形だとのこと。

 ただ、GT500での実績を見れば分かる通り、やはりブリヂストンは基本的にSUPER GT用タイヤにおいて圧倒的技術、知見を有しているので、GT300でも強さを見せています。特に、タイヤ無交換で1レースを走り切り、それでいてペースが驚くほど速いというようなことが多々見られました。

 既存メーカー、非ブリヂストンのチームからすると黒船が襲来したようなもので、「ブリヂストンでないと勝てない」とまで言われているとか。今季は供給台数を5台にまで増やしましたが、ブリヂストンによれば供給台数はこのあたりで限界だということで、欲しがって手に入るものでもありません。他のメーカーからの「打倒ブリヂストン」の意欲はけっこう高そうです。

 というわけでGT300は、大まかに分けて幅広く商品を取り揃えて供給するヨコハマ、ミシュランと、GT500での開発を活かして少数精鋭で勝負するダンロップ、ブリヂストン、というような感じになっています。


 ではついでに、タイヤに関して出て来る単語もちょっと触れて終わりにしようと思います。え?ちょっとって言いながらクソ長くなるんだろうって?その通り。


・構造とコンパウンド

 タイヤについてはよくこの2つで語られます。構造というのは内部の設計のことです。タイヤは単にドーナツ型のゴムの塊ではなく中にはさらに別の素材が入っており、表面を剥がすと中にはベルトというのがあって、ベルトがあるおかげで体重がかかってもぐちゃっと潰れずに形状を維持できています。

 他にもタイヤの形状を維持するための部材というのがいくつかあって、これを『構造』と呼びます。英語でコンストラクションと呼んだりもしますね、特に川井ちゃんとか、川井ちゃんとか、川井ちゃんとか。建築物の耐震強度ではないですが、縦横にどういう素材のどういう強さのものをどう配置するかでタイヤの動きに影響するので特性が変化します。

 一方コンパウンドというのは英語で化合物を意味する単語ですが、タイヤにおいては地面と接する表面部分のゴムの素材を表します。化学的な分野で、色んな素材を色んな組み合わせ方をして特性を変えることができます。

 俗にタイヤがソフトだハードだというのは、コンパウンドが相対的に柔らかいのか固いのかを表します。一般的に、柔らかいと発熱しやすくてグリップ力が高いけど摩耗は激しくなり、固いと逆になります。究極目標は速くて全然摩耗しないタイヤですがもちろんそうはならず、速さと耐久性は相反する要素でタイヤ競争においては永遠に追い求めるテーマと言えます。


・温度レンジ

 電子レンジのこと、ではありません。レース用のスリック タイヤというのは、熱によって表面が溶けてべったべたになり、路面にベタベタと張りつけながら走るようにして高いグリップ力を発揮しています。当然ながら、溶けるためには高温である必要があるので、特にタイヤをウォーマーで温められないSUPER GTでは熱が入るまでがとても大変です。

 そして、タイヤは構造とコンパウンドによってさまざまな特徴を持ちますが、それぞれに『この温度ぐらいの時に一番良い性能が出る』という温度があります。そのタイヤが一番よく仕事をしてくれる温度帯を温度レンジとか、作動温度領域とか言います。

 これより温度が低いと、まだ溶けてないので性能が発揮されず、逆にここを超えてしまうとオーバーヒートというやつで、溶けすぎて性能が落ちたり、摩耗が急速に進んだり、最悪壊れてしまいます。

 F1で使われているピレリのタイヤはこの作動温度領域の範囲がとても狭くて、例えば一番固いC1タイヤは固いぶん温度レンジが高くて維持するのが大変。安全に走ろう、とか、燃費走行しよう、とペースを落とすとそこから外れ、外れるからペースが上がらない→入力が減る→温度が下がる→ペースが上がらない、の悪循環を起こしてしまいます。

 逆に柔らかいC4やC5ではすぐに、とくにリアが温度レンジを超過してしまうので、慎重に走らないとすぐダメになります。

 SUPER GTのタイヤはそこまで扱いにくくは作らないですが、やはり温度レンジがとても重要で、その日の路面温度にピッタリ合ったタイヤであるかどうかは勝敗に直結します。想定より路面温度が低いから、ラッキー、負担が少なくて長持ちするわ、とはいかず、性能が出なくてそれ以前に全然速く走れないこともあります。


・ソフト=速い、ハード=長持ち、とは限らない

 一般論では上に書いたように、ソフトは速くて寿命が短い、ハードがその逆、と思いますが、ことSUPER GTに関してはそうも言い切れないところがあると言われます。理由は温度レンジの問題です。

 そもそも、チームが便宜上ソフトだハードだ呼んでいるもの自体、我々が一般的にイメージしている「ソフト=速いヤツ」というわけでもなく、温度レンジで呼び分けているところがあるそうで、大雑把に例えれば、ソフト=路面温度20℃ぐらいのとき用、ミディアム=25℃ぐらい用、ハード=30℃ぐらい用、といった具合になります。

 ソフトを選んで路面温度が20℃なら選択はばっちりです。ソフトだから段々落ちて行くのかと言えば、この条件で作動してうまく機能するタイヤ、これで150kmをきちんと走るつもりのタイヤなので、別に「ソフトを選びました=スティント後半にペースがガクンと落ちます」とは限らないのです。

 逆にこの条件でハードを選んだら、本来思った温度より10℃も低いんだから長持ちして、何なら無交換でいっちゃう?なんて思いますが、綺麗に溶けてくれないので結局タイヤが摩耗する、そもそも作動しない、といったことが起こるケースもあります。極端に言えば、この条件下では、ソフトが一番速くて長持ち、と言えなくもありません。

 このあたりは外部からは分からない問題で、そもそも自分たちが何のタイヤを選んだか自体そんなに言ってくれないので分からないことだらけですが、柔らかいか固いか、という話よりも、温度レンジが合っているか、がすごく大事です。ゲームだとこのあたりの細かいシミュレートはなかなか難しいので、疑似体験もできない部分ですね。


 少し話が脱線しますが、F1で2014年あたりのピレリのタイヤは、スーパーソフト、ソフト、ミディアム、ハードの設定がありましたが、作動温度領域は上から順に『低、高、低、高』となっていました。

 そのため、ソフトとミディアムを使うレースでは、ミディアムの方が『固いけど作動温度領域は低い』ため、路面温度が高いレースではミディアムの方がオーバーヒートしやすく、逆に雨上がりやSC明けのリスタートなどはミディアムの方が速い、というちょっと不思議なことがありました。それぐらい、コンパウンドの硬軟と作動温度領域の複雑な話の一端が垣間見えると思います。


・フラット スポット

 タイヤは綺麗な円形をしているはずですが、主にブレーキでロックしたり、スピンしてタイヤを引きずってしまうとそこだけが極端に削れて平たくなってしまいます。この場所をフラットスポットと呼びます。

 フラットスポットは少々なら大丈夫ですが、大きいものを作ると、そこが平たいのでブレーキの際に同じ場所でまたロックしやすくなってしまい、どんどん悪化してしまいます。グリップ力も落ちるし、振動も出て来るのでよろしくありません。

 全くの余談ですが、鉄道車両でもブレーキでロックさせると車輪にフラットスポットができてしまいます。走行中に断続的に「ダダダダダダダダ」と音がしているものはフラットスポットができている車輪です。


・グレイニング

 熱を加えると溶けてベタベタ張り付くスリックタイヤですが、熱が入り切っていないうちは言うなれば不安定な状態。その際にいきなりこじったりして高い負荷をかけると、消しゴムをゴシゴシしたみたいに表面がささくれてしまうことがあります。これをグレイニングと呼びます。

 グレイニングは主に柔らかいタイヤでいきなり強い入力を与えると出やすいとされていますが、低温の環境であまりに荷重がかからず、タイヤが作動温度に達しない状態で走っても、綺麗に溶けてくれていないのでグレイニングが出てしまいます。

 タイヤの温度が上がって綺麗に溶けて来ると、摩耗とともに自然に消えていくことがあり、川井ちゃんは『グレイニングフェーズが終わる』なんて表現しますが、原因や発生箇所によっては消えません。いずれにしても、フォーミュラのレースでないとタイヤは見えないので外見では全く判別ができないですね。


・ブリスター

 タイヤがあまりに高温になってしまって、内部で沸騰したようになり、気泡ができてしまうことがあります。これによってタイヤの表面に到達して穴が空いたりすることをブリスターと呼びます。

 ブリスターは高温や過負荷のレースで柔らかいタイヤを使うと起こりやすくなります。キャンバー角を多く付けたセッティングで長い全開区間を走ると、狭い接地面にばかり負荷がかかるので起こることもあります。ブリスターは内部が熱によって壊れてる状態なのでグレイニングのように消えることはなく、あまりにひどいと破裂などのトラブルの原因になります。


・ピックアップ

 ピックアップという単語には2つの意味があります。1つは、コース上に落ちているタイヤカスをタイヤの表面にひっつけてしまうこと。SUPER GTはレースの中で両クラスがお互いに周回遅れにする/されることが多いので、どうしてもタイヤカスの落ちている場所を走らざるを得ない場面があり、多かれ少なかれ拾うことは避けられません。

 タイヤカスを拾うとタイヤが綺麗な円形では無くなってしまうので振動が出ます。あまりに巨大なものをひっつけると、振動が大きすぎてドライバーが故障と勘違いしてピットに入ってしまうことすらあります。

 本来機能させたいゴムの上に、使い終わって捨てられたゴミがくっついて邪魔しているわけですから、グリップ力も低下してしまいます。フラットスポットと状況は似たようなもので、出っ張りスポット、みたいなもんです。でも出っ張りは走ってるうちに剥がれることが多く、むしろひっついたらドライバーは積極的に剥がしに行きます。


 そしてもう1つの意味合いが、『自分のタイヤから発生したタイヤカスが剥がれずにタイヤ表面に付着する』ことです。これは広義的に見ればグレイニングの一種、グレイニングの結果とも考えられます。2014年と古いですが、MOTUL AUTECH GT-Rのドライバー・松田 次生は、自身のブログで『グレイニング=ピックアップ』という認識で記事を書いています。

 このブログ記事内で次生選手も『これから暑くなるので無くなると思う』と書いており、

綺麗に溶けない→表面がささくれる→タイヤカスとなって表面に現れる→運が悪いと自分にへばりつく

というような形で発生していると考えられます。去年までよく『NSXはピックアップしやすい』なんて言われることが多かったですが、これは別にNSXのドライバーだけやたらタイヤカスの上を走るわけでも、カスを引っ付けやすいタイヤを使っているわけでもなく、車両特性によってグレイニングが出やすいせいと考えられます。

 ミッドシップであったNSX-GTはリアが重くてフロントの荷重が少な目。負担が少なくて長持ち、とも言えますが、荷重がかからないのでなかなかタイヤに綺麗に熱が入らず、結果グレイニングができてカスがフロントや、それが中途半端に飛んでリアに付着していたと考えられます(FRになった今年もまだその傾向は残っているらしい)。

 意味合いとしては、外的要因である落ちてるタイヤカスと、内的要因である自分のタイヤ表面の問題という別の話なんですが、どちらも『ピックアップ』という同じ単語のため、話の前後を見ないとどっちの意味かよく分からない時がありますし、何なら放送でもごちゃ混ぜになってどっちの話だかよく分からない時がありますw

 なお、過去のオートスポーツ誌の特集によれば、後者のピックアップというのが話題になり出したのはここ10年ほどだったとのこと。元々2011~12年にミシュランがGT500クラスで圧倒的結果を出したころに彼らがピックアップを訴え始めたそうで、当時ブリヂストン陣営は他人事。

 ところがミシュランに勝つべく開発を進めると、なんとビックリ自分たちにも同じことが発生。「これか!」となったとのことで、ピックアップはタイヤの開発競争を進め、よりピンポイントで最大の性能を発揮できるように仕上げた結果起きやすくなった副作用ではないかな、と感じます。


・ラバー イン

 ラバーというのはゴムのことですが、多くの車の溶けたタイヤがコース上を通過することで、路面側にゴムがくっついてグリップ力が増します。これをラバーインとか、ラバーが乗る、とか呼びます。

 路面は我々の身近にあるアスファルトを見ても分かる通り細かい凹凸がありますが、ラバーが乗るとこの隙間を埋めるように路面を均してもくれるため、路面からタイヤへの攻撃性も低くなり、摩耗が抑えられます。綺麗に溶けていないタイヤ表面を路面でゴシゴシすることで起こるグレイニングは、ラバーが乗ると発生しにくくなります。

 ただ、雨が降ると逆に均されたゴム路面の上に水が乗って滑りやすくなる傾向があり注意が必要です。また、複数のメーカーのタイヤが走っているSUPER GTでは、多少『ラバーとの相性』というものもあるようで、ラバーを最も生み出すことになるのはGT500のブリヂストンのラバーですが、これに乗った時にグリップ感がイマイチだとレースでちょっと困ります。


・デグラデーション

 これはSUPER GTの中継ではまず出て来ない単語ですが、劣化という意味の英語で、タイヤの性能劣化を意味します。これはGT SPORTで遊んでいても気にする項目ですね。

 タイヤは新品状態から段々と性能が落ちて行きますが、その性能の低下を指す言葉です。そして、低下したタイムを計算して、平均的に1周あたりどのぐらい遅くなっているかを計算したものを『デグラデーション レート』と呼びます。

 10周して1.2秒遅くなるようなら、デグラデーションレートは 0.12秒/周 となります。実際は燃料が軽くなるとその分は速くなるので、例えばフューエル エフェクトで1周あたり0.05秒速くなっていると仮定すると、タイヤの実際のデグラデーションレートは 0.17秒/周 ということになります。

 また、温度が上がりすぎることが要因で性能が低下してしまっている状態を『サーマル デグラデーション』と呼びます。似たように思えますが、こちらはタイヤ本体が衰えているのではなく、熱によって一時的に衰えているので、温度管理をして適正温度に下げるとペースは戻る可能性があります。


・タイヤ ウェア

 ウェアというのは、衣服のウェアと同じwearという単語ですが、摩耗・消耗を意味します。タイヤウェアというと、タイヤのゴムの物理的な摩耗のことを指します。新品=100、もうゴムが無くなる=0、と考えれば良いと思います。一般の自動車用タイヤでもウェア インジケーターというのがあって、交換の目安になっています。

 タイヤの理想は、ウェアが限界になるギリギリまでデグラデーションが起きずに同じようなタイムで走れることですが、まあなかなかそんなことは無いですね。これもSUPER GTの中継ではまず出て来ないのでF1中継向きの単語です。

 

 というわけで、脱線しながらタイヤについての私が知っている、あるいは推察した内容をざっと書いてみました。

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